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ある日、TS金髪サキュバス系美少女になった俺はVRMMO世界を《捕食》スキルで無双する  作者: その他大勢の中で耳だけが大きくなった兎
始まりの街レアルタ編

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エターナルファンタジアオンライン

「その日、私を理性のないオークから助けてくれ、私に向ける刃を納めてくれた勇者様の慈悲を私は忘れません」


 エルーサの話を聴けば聴くほど、胸の奥が冷えていくのが分かった。彼女が語る言葉の端々から、最悪の事実が形を成していく。

 俺は、勇者という存在へ反吐が出そうになっていた。世界を救った英雄の仮面の裏にある悍ましさに、激しい嫌悪感が込み上げる。

 始めての男は、誰よりも温和で慈悲深く見えたらしい。

 その偽りの温もりが、彼女たちの警戒心を完全に溶かしたのだ。

 男は彼女たちの切実な訴えに耳を傾け、親身になって頷いてみせた。その真摯に見える態度こそが、最悪の罠の始まりだった。


 異なる種族の在り方を受け入れ、和解の道を模索するポーズを完璧に演じていた。その探求心さえも、獲物を確実に仕留めるための観察に過ぎない。

 ――だからこそ、なおさら質が悪い。悪意ではなく、全てを理解した上で踏みにじる冷酷さがそこにはあった。

 言葉を交わし、互いに歩み寄る余地があると男は身をもって確信したはずだ。その可能性を明確に認識しながら、男の刃は鈍らなかった。

 目の前の魔物が本能の奴隷ではなく、高度な知性と社会性を持っている事実を完全に把握していた。それを知った上で、男はエルーサ達相手に蹂躙を決行したのだ。


 彼女たちが誰かを愛し、傷つき、涙を流す心を持っていることを分かっていた。その心の痛みを理解していながら、冷徹に切り捨てたのだ。

 それだけの真実を網羅し、心を通わせる機会がありながら、男の行動が変わることはなかった。それどころか、その知性を最悪の形で利用する。

 彼女たちの純粋な信頼を、自分たちの陣営を有利に導くための道具として徹底的に搾取した。その善意を裏切ることに、一抹の躊躇いもなかったのだろう。守護者としての絶対的な安心感を与えながら、コミュニティの深部へと深く潜り込んでいった。無防備な牙城の内側から、破滅の種を蒔くために。

 決して裏切らないという確固たる絆を、時間をかけて彼女たちの心に植え付けた。その絆こそが、後に彼女たちを縛り付ける見えない鎖となる。

 誰よりも彼女たちの味方であるかのような、慈愛に満ちた表情を完璧に作り上げていた。その偽りの笑顔の裏で、冷徹な爪を研ぎ澄ましていたのだ。

 すべての準備が整い、彼女たちが完全に油断しきった絶好のタイミングを見計らっていた。守るべき約束をすべてゴミのように投げ捨て、最悪の惨劇の幕を開けたのだ。


 一つの慈悲をかけることもなく、信じていた者たちの命を根こそぎ刈り取っていった。裏切られた絶望に染まる彼女たちの声を、冷酷に無視しながら。

 男にとって、彼女たちの命や理想など、最初から羽毛ほどの価値もなかったのだろう。己の目的を達成するためなら、どんな犠牲も厭わない狂気がそこにあった。

 最初から、その程度にしか考えていなかったのだ。

 エルーサの話す“勇者様”は、あまりにも綺麗だった。


 だから逆にわかる。

 この子……騙されたんだ。


 徹底的にーー


「勇者様は、最後まで人間とオークが共に暮らせる未来を……」


 エルーサがぽつりと呟く、目に涙を浮かべながら、その絵空事を、真実と信じようと、真実だといいのに、と思いながら。


 その瞬間、俺の胸の奥で、どろりと黒い感情が蠢いた。


 彼女たちが夢見た輝かしい明日など、最初から存在しない幻に過ぎなかった。そんな奇麗事が、現実の残酷な結末の前に無残に霧散していく。

 異なる種族が手を取り合うという理想は、強者の都合によって容易く踏みにじられた。その言葉の虚しさが、俺の理性を激しく逆撫でする。

 彼女たちが信じ抜いた道の果てに待っていたのは、あまりにも凄惨な処刑の光景だった。その理不尽な現実の対価が、これだというのか。

 網膜の裏側に焼き付いた、あの血臭漂う最悪の映像が脳内で何度も再生される。あれほどの地獄を経験させられてなお、彼女はまだ希望を捨てきれない。


 無数に突き出された鋭利な穂先が、容赦なく彼女たちの肉体と誇りを貫いていった。対話を求める声を遮るように、冷徹な凶器が迫る。

 容赦なく投げつけられた無数の礫が、彼女たちの尊厳を物理的に削り落としていった。逃げ場のない檻の中で、ただ理不尽な悪意に晒され続ける。

 その一言ですべての罪が正当化され、彼女たちの存在そのものが悪と断じられた。思考を放棄した正義の免罪符が、彼女たちから声を奪ったのだ。


 話も聞かずに処刑。

 エルーサは最後の最後まで、対話を諦めていなかった。

 ベルナデッタを失っても。

 自分が傷ついても、理性で、言葉で。

 話そうとしていた。


 ――その結果。彼女の崇高な理想が導き出した結末は、あまりにも残酷で、救いのないものだった。待っていたのは、尊厳を徹底的に破壊される地獄の始まりだ。


 人間としての扱いを完全に奪われ、不衛生な檻の中に閉じ込められた。

 その清らかな存在を、泥と糞尿で汚すための卑劣な仕打ちだ。

 

 檻の外から投げつけられる好奇の視線と、容赦のない罵詈雑言を一身に浴び続けた。彼女の絶望を娯楽として消費する人間たちの姿が、そこにはあった。

 最期はゴミのように無造作に扱われ、その短い生涯に無理やり幕を下ろされた。一族の未来を願った聖女の命は、誰に看取られることもなく消えたのだ。


「……っ」


 俺は耐えきれなくなって、エルーサを抱きしめた。


「わ、わ……? リエラ、様?」


 俺の腕の中にすっぽりと収まってしまうその身体は、あまりにも頼りなく、脆かった。少し力を入れれば、そのまま壊れてしまいそうなほどの危うさを孕んでいる。

 彼女が背負ってきた運命の過酷さに反して、その物理的な質量は驚くほどに希薄だった。これほどの軽さの身体で、どれだけの絶望を耐え忍んできたのだろうか。

 過去の恐怖が蘇ったのか、彼女の肢体は小刻みな波打ちを止めることができずにいた。その震えが、抱きしめる俺の胸にまで直接伝わってくる。

 本来ならば、これはモニターの向こう側に用意された都合の良い虚構に過ぎないはずだ。あらかじめ決められたシナリオ通りに動く、無機質な世界の出来事だ。

 決められた台詞を吐くだけの、感情を持たないプログラムの集合体。そう割り切ってしまえれば、どれほど心が楽だっただろうか。

 それなのに、俺の掌に伝わるこの生々しい質量を、ただのバグとして片付けることはできない。胸を締め付けるこの感情が、これが現実の痛みであることを告げている。

 彼女の流す涙も、その怯えも、すべてが本物の命としての輝きを放っていた。その不条理なまでのリアルさが、俺の理性をじわじわと侵食していく。


「……ばかっ」


 思わず漏れる、本当は怒ってやりたかった。

 なんでそんなに信じるんだって、なんで最後まで諦めないんだって。


 もっと疑えよって。

 もっと憎めよって。


 けれども、そんな身勝手な怒りを彼女にぶつけることなど、今の俺には到底できそうにない。彼女の抱える純粋さを前に、俺の言葉は虚しく霧散していく。

 彼女の瞳に宿る透明な光を見た瞬間、俺の胸の中の言葉はすべて喉の奥へと押し戻された。彼女を責める資格など、この世界には誰一人として存在しないのだ。


 この子は、そういう子じゃない。


 濁った世界の不条理に染まることなく、彼女の魂はどこまでも透き通ったままであった。その無垢な在り方こそが、この地獄において最大の悲劇を際立たせる。

 自らを傷つける存在に対してさえも、最後まで理解の道を模索しようとする慈愛に満ちていた。その底なしの優しさが、結果として彼女の身を滅ぼしたのだ。

 その気高さゆえに、悪意を持つ者たちにとってこれ以上ない格好の標的となってしまった。彼女の美しさが、捕食者たちの強欲を刺激したに違いない。

 彼女の善意を都合よく解釈し、自分たちの正義を証明するための踏み台として冷酷に消費した。その尊い祈りは、彼らの野心を肥やすための糧にされたのだ。


 その事実が、許せなかった。

 尻尾がぶんぶん、と空を揺らす。

 ミーナも、ネネも何も言わない。

 ただただ、空気が重い。


 その沈黙の最中、俺の脳裏に一つの新たな違和感が首をもたげ始めた。これまで見過ごしてきた、この世界の根本的な歪みが形を成していく。

 前提を揺るがすような恐るべき仮説が、思考の隙間に滑り込んでくるのを感じた。一度浮かんだその疑念は、もはや無視できないほど大きく膨れ上がっていく。

 俺の中へ、別の疑問が浮かぶ。


「……エタファンって」


 ぽつりと漏れる。


「一体、どっちの視点の物語なの……?」


 ミーナが少し顔を上げる。

 ネネの耳もぴくりと動く。

 俺は、ぼんやり暖炉を見る。


 エターナルファンタジアオンライン。


 システムは素晴らしい。

 プレイヤーの個性を反映させるための膨大な選択肢は、自由な育成の楽しさを極限まで高めてくれている。自分の理想の戦士を作り上げる快感が、そこには確かにあった。


 無数のスキルの組み合わせによって生まれる独自の戦闘スタイルは、無限の戦略性を現時点ではレベルの低い俺にでさえ提示している。

 その奥深さに、俺たちは時間を忘れて没頭している。

 基礎能力からさらに細分化される特化ルートの存在が、育成の楽しさをどこまでも拡張させていく。誰も見たことのない最強の構成を追い求める楽しさがそこにある。

 プレイヤーの意志をどこまでも尊重する世界の設計は、まさに第二の現実と呼ぶにふさわしい。どんな生き方を選ぶことも、この大地の上では許されている。

 リアルな肉体の躍動と魔力の奔流が交錯する瞬間は、本能的な快感を脳に直接叩き込んでくる。その一瞬の死線にこそ、俺たちは最高の刺激を見出していた。


 VRとしての没入感。

 全部、異常くらい完成度が高い。

 “ゲーム”として見れば、間違いなく神ゲーだ。


 けれども、その非の打ち所がない完璧な世界の裏側に、誰もが盲信している決定的な盲点が存在していた。その歪みに気づいた瞬間、背筋に冷たいものが走る。

 俺たちが当たり前のように追い求めてきた、冒険の真のゴールとは一体どこにあるのだろうか。その指標は、本当に俺たちが目指すべき正しい光なのか。


 掲げられた大義名分の裏に隠された、この世界の真の意図を見極める必要がある。俺たちが無邪気に楽しんでいる行為の、本質的な意味を問わねばならない。

 正義の名の元に、異形の命を無慈悲に刈り取っていく行為。そこに何の疑問も抱かず、ただのスコアとして処理してきた。

 敵の拠点を蹂躙し、その財宝を強欲に貪り尽くす略奪の旅。それを輝かしい冒険譚として、俺たちは賞賛してきたのだ。


 冒険者として高みを目指す。

 それだけだ、そこへに何の疑問も抱かなかった。

 俺も、ネネのような高レベルのみんなも。

 当たり前みたいに。


 “魔物を倒してレベルを上げるゲーム”として受け入れていた。


 魔物、そう、泥濘の聖女エルーサも、真紅の騎士ベルナデッタもエタファンでは“魔物“だ。


 しかしながら、泥濘の聖女が遺したあまりにも生々しい記憶に触れた時、その前提は脆くも崩れ去った。俺たちの正義は、一瞬にしてその色を失っていく。

 掌に残る彼女の体温と、脳裏に焼き付いた悲劇の光景が、俺のこれまでの常識を真っ向から否定している。ここから先は、もう以前と同じ目線で世界を見ることはできない。


 エルーサの記憶を見てしまった。

 ベルナデッタの誓いを聞いてしまった。


 その上で、なお。

“人間が正義、魔物が悪”。


 その単純構造で割り切れるのか?


「……っ」


 胃の奥が気持ち悪い。

 どろりとした不快な熱が胸を駆け上がり、口内を嫌な不快感が満たしていく。自らの無知に対する嫌悪感が、物理的な苦痛となって肉体を苛んでいた。


 まるで胃液が逆流するみたいな感覚が、喉元まで込み上げてくる。


 用意された設定をただ鵜呑みにし、正義のヒーローを気取っていた自分が滑稽でならなかった。その無邪気な残酷さに、激しい自己嫌悪が押し寄せる。

 思考の放棄こそが、この世界の本当の恐怖の正体なのかもしれない。俺たちはただ、精巧に作られた欺瞞の檻の中で踊らされていただけなのだ。

 この世界そのものが、最初からある特定の悪意によって歪められていたと考えた方が自然だった。美化されたファンタジーの裏側に、悍ましい本質が隠されている。


 “あまりにも単純すぎる”。


 プレイヤー、スキルの加護を受け、この世界の正義として君臨する英雄達。

 その輝かしい歴史の裏に、どれほどの血と涙が隠されているのだろうか。


 常に勝者の都合によって書き換えられる、最も都合の良い免罪符。その言葉が、弱者を蹂躙するための絶対的な暴力を正当化してきた。

 生まれながらの悪として定義され、声を聞くことさえ拒絶された悲しき存在たち。彼らの流した血の上に、俺たちの冒険は成り立っている。

 対話を拒絶するための最も簡単なレッテルであり、排除を正当化するための便利な道具。その単純な線引きが、すべての悲劇の元凶だったのだ。


 そんな、絵本みたいな世界観を。

 このゲームが、本気で描いているとは思えない。


 じゃあ、何なんだ……?

 エルーサの記憶は。

 ベルナデッタの感情は。

 この胸の苦しさは。


「……リエラさん」


 ミーナが、小さく名前を呼ぶ、その声は少し不安そうだった。

 俺は、ゆっくり顔を上げる……暖炉の火が揺れている。


 ネネが静かに尻尾を揺らしていた。

 エルーサは、俺の腕の中で小さく震えている。

 そして、そのすべての不条理が一本の線で繋がった瞬間、俺の目の前の霧が晴れていくのを感じた。覚悟を決めるべき時が、ついに訪れたのだ。


 俺は、ようやく気づく。


 “ゲームだから”で済ませていた。


 けれども、この世界。


 提示されたデータの羅列などではなく、本物の命の重みがここに息づいているのではないか。


 その恐るべき仮説が、可能性へと変わっていく。


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― 新着の感想 ―
そんな罠張らなければ敵の選別にかかる時間でより多く駆除するで済んだのにねぇ 侵略国の無辜の民より自国のって感じの
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