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吹奏万華鏡♪ 特別ページ♪  作者: 幻創奏創造団
各奏者の解説
29/30

【限定①】 茂華町クリスマス点火祭 [前編]

このストーリーは定期演奏会後のアフターストーリーです。

12月22日。 

優月はとあるスーパーマーケットにて、誰かと電話をしていた。

「…次は何買えば良いの?」

その声は僅かに高ぶっている。電話先は妹の美優だ。

『あとはモールモール』

「モール?」

『1回で通じないの?』

煽るようなその響き。優月は思わず顔をしかめた。

「通じないんじゃなくて、モールって何?」

『え?フサフサした壁に掛けるやつ』

「少し待ってて」

『30秒だけ待っててあげる。感謝しなさい』

人に頼んでおいて何だこの人は?と思いながらも、優月は不遜な顔で調べ始めた。

「…ああ。クリスマスのモールね」

『壁に掛けるから4つ買ってきて』

「2つでいいよ。折り紙の輪っかを使うから」

そう言って優月は肩をすくめた。

『え?折り紙ー?誰が作るの?』

「…美優、僕が元美術部だったの忘れてるでしょ?」

『忘れたー』

はぁ、呆れたように深呼吸を吐き出した。

電話を切って、優月は百円ショップへと歩き出した。

「あ、」 

その時誰かを見つける。


それはポスターを熱心に見つめては溜息を吐く瑠璃だった。

「…瑠璃ちゃん?」

瑠璃はここの近くに住んでいる。しかも今は受験期なので、こんな所にいるということは特段珍しいことでもない。

「…ひとり?」

それにしても彼女の動きには焦りがない。誰かを待っているというわけでもなさそうだ。


「瑠璃ちゃん?」

優月は勇気を出して声を掛けた。あまり人通りの多い所で、極力話しかけたくはなかった。

だが1人を放っておくなど優月にはできなかった。

「…あっ」

すると瑠璃はすぐに気付いた。こちらを見ては小さく無邪気に手を振り返した。



「優月先輩?」 

優月が歩み寄ると瑠璃は驚いたように目を丸めていた。

「美優にクリスマスパーティーの買い出し頼まれちゃって」

彼はそのまま言って笑った。

「…そうなんだぁ。あ、定期演奏会お疲れ様でした」

「ありがとう」

優月は優しく笑い返した。

「で、何見てるの?」

次に彼が訊ねた。すると瑠璃は熱心に見ていたポスターを指さす。

「点火祭だよ」

「点火祭?」

ほら、と瑠璃は小さい指を伸ばす。

「イルミネーションの点火祭!」

「へぇ、ここの近くなんだ」

紙面には、キラキラと光るイルミネーションのイラストが貼り付けられていた。12月24日〜26日まで!と可愛げなフォントの横には赤いサンタが突っ立っていた。


「…でもね、」

しかし瑠璃は顔を少しだけ埋める。

「みんな行かないんだって」

「あらあら、受験勉強だから?」

「うん。東藤行くの私だけだから」

それを聞いて優月は徐にスマホを取り出す。

「…優愛ちゃんに頼もうか?」

そしてこう尋ねた。

「…」

しかし瑠璃の顔色が真っ青に塗りたくられた。

「…優愛お姉ちゃん、香坂先輩たちと行くんだって」

「そ、そうなんだ」

香坂白夜。茂華中学校元部長だった女の子だ。

「どうしょう」

瑠璃は心底困っているようだった。そもそも瑠璃は1人が大嫌いなのだ。

(…想大くんはどうだろう?)

「…ねぇ、想大くんはどう?」

優月は一部の望みをかけて訊ねる。

「想大くん…いいの?」

「うん。本人に聞いてみたら?」

「うん!」

「じゃあ、頑張ってね」

優月は最後、そう言って彼女と別れた。

その心は心配に満ちていた。

(優愛…お姉ちゃんみたい…)

だが瑠璃は、優月の姿を優愛と重ねていた。



スーパーを出て電話する優月は顔をしかめた。

「えっ?美玖音ちゃんと?」

『ああ!オッケーもらってな』

「…ふーん」

朱雀美玖音。どうやら彼女の顔が想大のタイプだったらしく、今は猛アタック中なのだ。

『どうかした?』

「…いや、何でもない」

想大の声には喜色が含まれている。これを邪魔するのは何だか気が引ける。ならばと黙った方が良いと思ったのだ。

「それにしても…美玖音ちゃんと行くんだ」

『ああ。後輩も彼氏と行くらしくて暇なんだって』 「そう」

仕方ないな、と優月は諦めた。瑠璃には申し訳ないが、これなら諦めたほうが早いだろう。

「…瑠璃ちゃん、放っておけないんだよなぁ」

今まで瑠璃のことは想大が何とかしてくれる、と思っていただけに悩み深い。



「…どうしょうか」

その悩みは結局、家に帰っても続いた。赤と緑の折り紙を切っては、糊で貼り付け、繰り返すうちに蛇のような長さに達していた。

「これくらいで良いのかな?」

何も置かれていない机上に、赤と緑の輪っかを並べる。乱雑に並べてしまっては絡まってしまう。丁寧に置いた彼はベッドに寝転がった。まだ定期演奏会の疲れが抜け切っていないのだ。


(点火祭…かぁ)

瑠璃が行く24日は明後日だ。25日は家族とクリスマスパーティーをするという。

「24は丁度、終業式だよなぁ。帰り早いし、どこかで時間でも潰してから行こうかな?」

茂華のレジャー施設は家から少し遠い。ならば学校がある日に駅から直接行く方が早いのだ。

「…そうしよ」

取り敢えず、瑠璃と同じ日日に行くことにした。




――当日

夕方5時。そんな時間なのに充分暗い。茂華町は自然あふれる田舎だ。山々のせいで日照時間も短い。

「…暗いなぁ」

にしても、優月は溜息を吐く。

「人が多いな」

その声にはちょっぴり呆れが混じっていた。子供が多過ぎて、旧友に会わないか心配になる。

点火は5時30分だという。それまで優月は屋台に並んで時間を潰していた。



ぴんぽろーん♪

「?」

突如、メールの通知音が鳴り響いた。優月はスマホを取り出した。

「…鳳月さん?」

その相手は珍しくゆなだ。ゆなは滅多に連絡を寄越さない。だがこうなった理由に優月は顔をしかめた。

(…またイジりか)

ゆなは非常に性格が悪い。


《ぼっちでイルミ楽しんでる〜?》

「そらきた」

予想通りの文面で逆に安心した。定期演奏会前もずっと煽られてきたので、既に優月は慣れていた。

「…ぼっちで悪かったな、っと」

優月は不遜な顔をしながらも返信した。


今日1人な理由。それは点火祭に行こうとする友達がいなかったからだ。優月は押しが本当に苦手である。故に『行く?』とだけしか言わなかった。

「…はぁ。みんな休みたいよな」

本当は25日に来る友達が多いことを、優月はまだ知らない。


フライドポテトとチキンナゲット詰めを買った優月は、闇に佇む木々たちを見つめる。よく見ると至る所に小さな電球が取り付けられている。

「んー、こっくらつくんら…」

優月は感心したように頷く。しかし言葉を返してくれる相手はいない。咀嚼しながら孤独は寂しいな、と思った。

その時だった。

「…!?」

電球に眩い光が灯る。赤と緑、桃と黄。様々な光が真冬の闇夜を灯した。寂しげな木々たちは一瞬で光り輝くイルミネーションと変貌した。


「…やば、綺麗すぎ」

しかも公園には人工的なイルミネーションも灯っている。電気代いくら掛かるんだろう?ドラム何台分かな?と思いながら歩き出した。


ここら辺は人がいない。

優月は少しばかり悲しかったが、それはそれで人生の思い出だな、と上向き思考で光を見つめた。

「…んあ?」


その時だった。

「あ、いた」

可愛らしい服に身を包んだ少女。髪をひとつに結び上げた彼女はこちらを一点に見る。

「優月先輩?」

その声で優月は確信した。

(本当に1人だったんだ…) 


古叢井瑠璃。彼女はただ1人孤独そうだった。

しかし何故か…それは可愛らしく見えた――。


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