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吹奏万華鏡♪ 特別ページ♪  作者: 幻創奏創造団
総集編
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22/33

【夏の総集編】茂華町夏祭り編

時は夏休み。

…ということで、夏休みにまつわる総集編やスピンオフを沢山投稿しようかと思います!

『夏祭り』です。

感想に『夏祭りの思い出』を募集しています!

書いてくれたら幸いです!

土曜日。今日は茂華町祇園祭だ。

とは言え、吹奏楽部はコンクールに向けて、部活があるのだが。


茂華駅で、電車を待ちながら、想大が言った。

「うぁぁ…!今日も部活かぁ」

「そだねー」

優月もそう言って、スマホを見る。

7月28日。今日は花火大会だ。朝からお囃子の準備を始めている所もある。

「でも、午前練だし、いいじゃん。帰ったら、着替えて集合しよう」

優月は、そう言って、青ジャージのズボンのポケットから、イヤホンを取り出した。


茂華中学校の音楽室も、今日ばかりは、夏祭りの話題で持ち切っていた。

「久奈先輩、木管で行きましょうよ!」

「いいね」

「トランペットパートで行きたかったなぁ」

瑠璃も、先輩の優愛と話していた。

「えっ?ユーフォの子?」

瑠璃がきょとんとすると「そう」と優愛が頷いた。

「希良凛ちゃんのお友達も、一緒に行きたいんだって」

「大丈夫だよ」

「良かった」

すると、指原希良凛がこちらへ、駆け寄ってきた。

「優愛先輩、瑠璃さん、おはようございます」

「おはよう」

2人も返す。

(…さっちゃん)

瑠璃はずっと引っ掛かっていた。希良凛とは、人並み話しているはずなのに、未だ『さん』付けだ。

「はぁ…」

特に深い意味は無いのだろうが、あったら、どうしょう?時々そう考えてしまうのだ。



『はい!そこのランペ、しっかり音を合わせてくださいね!』

「はい」

雨久と氷空が返事をする。

「あとは、初芽さん、市営のときのように、指回し、してください。本番だけできて、練習では、できないっていうのは、無いと思うので」

「は、はい」

初芽は、不満そうに返事した。

(あれ?どうして指回りできたんだっけ?)

あれは、一時的な覚醒だったのか、と初芽はひとり落胆した。

「コバのホルンも、あんまり無理しないで大丈夫ですよ!」

「は、はーい」

市営の時、少し間違ってしまったからな、と想大は思った。

「ゆゆも、ティンパニの打ち方が、強いです。壊れちゃうかもしれないから、もう少し弱めてください」

それを聴いてプッと想大は、笑ってしまった。

何故か、脳裏には、優月と瑠璃の不遜な顔が、浮かんだ。


12時には、練習が終わった。

「先生、ハイハットのオープン・クローズって、どうやってやるんですか?」

井土に、優月が訊ねた。

最近、できるようになりたいな、と思っていた。

それに、優愛はハイハットのオープン・クローズを知らない。

「ああ、それは、こう」

井土は、ハイハットを叩く。次に、足を少し浮かした。そこにもう一発。

ツッツゥー…

「で、バスドラを常に踏むっていう感じ」

「なるほどです」

「まぁ、ハイハットを打つ回数を減らすっていう感じかな…」

「ありがとうございます」

優月は、そう言って、ドラムを打つ。その時、

「優々(ゆゆ)、スティックの腹で打つんじゃなくて、先端で打つんだよ」

井土が踵を返して、そう言った。

「これじゃ、ダメー!」

そう言って、井土は、おもむろにスティックを棚から取り出し、ハイハットへスティックを叩きつけた。

ザンザン!!

「は、はい」

井土は、多少大袈裟にやってくれるので、分かりやすい。


井土が、休憩室を出ると同時に、想大が入ってきた。

「さて、セッションしますか!」

「う、うん」

優月も慌てて、スティックを構えた。

そして、暫く、自由に演奏を始めた…。


午後4時。瑠璃と希良凛が先に、待ち合わせ場所に集合する。

「あれ?さっちゃん、皆は来たの?」

「いえ、まだですね」

希良凛は、円らな瞳を、細める。

「そっか…」

「瑠璃さん、可愛いですね」

希良凛の放った言葉に、瑠璃は頬を赤らめる。

「あ、ありがとうね」

瑠璃は、檸檬の浴衣を着て、二つ縛りのゴムも、キャンディーがくっついていた。普段見ない可愛らしい姿だ。

「去年は、私服だったけど、今年こそは、って浴衣着てみたの」

頬を赤らめた姿がまた可愛らしい、と思った。

「あっ!」

その時、優愛たちがこちらへ手を振ってきた。

「優愛お姉ちゃん、香坂部長」

瑠璃の目が、大きく見開かれた。

優愛も、桃色の浴衣を身に纏っていた。

「こんにちは」

希良凛が会釈すると、優愛が手を振って返した。

「じゃあ、優愛、私は凪咲のとこ行ってくるから」

「あーい。ユーフォの子、来るまで待ってればいいんでしょ?」

「ああ、それなら大丈夫って、グループで」

香坂のメールの文面を見た優愛が「ええぇ…」と苦い顔をした。

どうやら、クラスメートと行くことになったらしい。

「分かった。じゃあ、2人共、行こっか…」

そう言った優愛の桃色の振袖が、はたりと翻った…。


その頃、優月は、待ち合わせ場所である、茂華公園に来た。茂華公園は、茂華中学校のすぐ真横にある。

ブランコに乗って待つこと数分、誰かが、こちらへ来た。

「優月君!」

「あ…」

それを見た優月の眉が、少しひそめられる。

「堀田君」

そこにいたのは、茂華中学校吹奏楽部元部長の堀田俊樹だった。彼とは少し因縁がある。

「想大君に、誘われちゃって」

「そうですか、そうですか」

「まだ優愛ちゃんのことで怒ってるの?」

「皆にバラしたこと?全然怒ってませんよーだ!」

優月が皮肉のように言うと、堀田は「そうか」と頭髪をくしゃくしゃと掻き回す。

「東藤高校はどうだ?」

「普通。友達はあんまできないけど」

「吹部は?」

「すごく楽しい!」

優月は、そう言って笑った。

その時だった。

「おーい」

今度は想大が、こちらへ来た。

「うおお…」

「ふっ」

想大は、紺色の浴衣を着ていた。それを見た優月は想太の耳元へ、

『まさか、古叢井さんとデートだった!?』

と心配の声をかける。

しかし、想大は「別に」と何ともなさそうに言った。

だろうな、と優月も、これは本当だな、と無意識に思った。

「あれ?優愛ちゃんは?」

すると、堀田がそう訊いてきた。

「優愛は、多分、後輩と…」

優月は察したようにそう言った。その声は、普段の可愛らしい声とは違った低い声だった。


茂華駅の小さなホームに、列車が滑り込む。

降りた初芽が、思い切り腕を伸ばす。

「いやぁ、電車なんて、久し振りだった」

そんな彼女に、

「いや、電線ないから、鐵道だね」

と茉莉沙が突っ込んだ。

「あっ!」

すると初芽の目が、見開かれる。

夕日の斜陽に負けぬ光が、待ち構えていた。辺りからは、囃子の賑やかな音が響いていた。

「すごぉ」

すると、茉莉沙が初芽の手を引く。

「はいはい、早く屋台行きますよ」

「りょ!」

茉莉沙はどこか嬉しそうだった。

『そういえば、市営の時、私のお陰って言ってましたよね?あれどういう意味なんですか?』

かき氷の屋台に並びながら、茉莉沙は初芽に問う。

「あっ、いや、実は河又がクイズを出してきて…」

「クイズ?」

「そ!移動しない乗り物ってなんだ?っていうもん…」

「ブランコ」

初芽が言い切る前に、茉莉沙は、あっさり答えてしまった。

「最後まで聞いてよぉ」

苦笑混じりに初芽が言うと、茉莉沙は「すみません」と微笑した。 

「それで、ブランコって言えば、で思い出したのが茉莉沙なの」

「よく分かんないです」

初芽の弁解むなしく、彼女にはそう言われてしまった。

「だよね。私も茉莉沙のことを思い出したら、なんか迷いと緊張が吹っ切れて、呼吸が楽になったの」

「すご」

茉莉沙は思わず、そう口にしてしまった。

多分嘘ではないな、それは初芽の、真摯な瞳を見て感じた。


「優愛先輩、浴衣可愛いですね」

指原希良凛が、そう優愛を褒める。

「えへへ。そうでしょ?」

「はい!」

先輩と後輩のベタなやり取り。それを見ていた瑠璃には憧れでもあった。

(はぁ)

特別練習の日から、話しは、しているものの、未だ距離が縮まった感じがしない。

その上、全然、優愛と話せないのだ。

最初は、こうなるなんて思ってすらいなかった。新しい後輩に優愛を、取られるなんて…。

「瑠璃ちゃんも、かき氷食べる?」

「あ、うん!」

突然の優愛の問い。勿論、OKだ。

そうして、並ぶことになった。

すると、目の前にいた人物に、優愛が声を上げた。

「あっ!!」

何事かと、2人は、その先の人物を見る。

「はい?」

「あ、あの…この前、フルート吹いていた方ですよね!」

優愛が迷わずそう言った。その通り、目の前にいたのは、初芽結羽香本人だった。

実は、東藤高校と茂華中学校は、繋がりがある。春のイベントに、コラボ出演したことがあるのだ。

だから、多少は顔を知る者がいる。

「あぁ、市営の時か。そうですよ」

すると、茉莉沙が初芽の背後へ回り込んだ。

「そう言うあなたは、打楽器やってた子?」

「はい!!」

「でも、よく分かったね…」

「いやー、部長の白夜が、超褒めてたので!あれは全国いけるって!」

すると、茉莉沙が小顔を、初芽に向け「だって」と言った。

「あ…!」

すると、今度は瑠璃が、叫ぶように言う。

「ドラムやってた…!!」

その声に茉莉沙は「はい」とだけ言った。

え?人見知り?と瑠璃は眉をひそめる。

「いや、私、トロンボーン専門なので」

茉莉沙は控えめに言う。

「あー、大丈夫だよ」

心配する瑠璃に、初芽がにこりと笑う。

「この子、元パーカッションなんだけど、太鼓をやり始めると、覚醒しちゃうだけだから」

「えっ?覚醒?」

この人は何言ってんだ?瑠璃は思う。

そういえば彼女、ドラムを叩きながら、薄ら笑いのような何かを浮かべていた気がする。

「ちょっと…!初芽!」

良い所で、茉莉沙が制止した。

「確かに、私は打楽器やってました」

「け、敬語?」

優愛が、思わずそう言ってしまう。しかし、次の言葉で、それは吹っ飛んだ。

「御浦ジュニアブラスバンドっていう所で」

「えっ!あ、あの?」

「はい、あの」

「すごーい!です」

「どうも」

茉莉沙は、またも控えめに返事をした。

それにしても可愛いな、と瑠璃は思う。

「茉莉沙は、そこでトップだったんだよ!」

「えっ?こわ」

優愛が思わず言う。

こんな小さくて大人しめな女の子に、全国レベルの実力が隠されているのか、と。

すると、話している間に、初芽や茉莉沙たちの番になった。

「すみません、かき氷、ふたつ」

「あい!」

「何にする?」

「レモンで良いんじゃないですか?」

2人は本当に仲が良いな、と瑠璃は羨ましくなった。それと同時に、ずっと言いたかったことが、喉から飛び出す。

「ね、ねぇ、優愛ちゃん」

「うん?なぁに?」

「この前、何でも話、聞いてくれるっていったよね?」

「言ったねぇ。何かあったの?」

「あの…私、今度の本番こそ、ドラ…」

「えっ?」

しかし、瑠璃が言い終わる前に、優愛の声に、掻き消された。そんな彼女の声は、いつもの可愛らしい声では無く、焦燥にかられた声だった。

「希良凛ちゃん!!」

優愛が、名前で呼ぶことは珍しい。相当なことがあった時くらいだ。

「えっ?さっちゃん!?」

遅れて、瑠璃も気付いた。

指原希良凛が、いない。どこにも。

「さっちゃんが、いない!!」

「うん!!」

希良凛は、この町の祭りは、初めてだ。迷子になっても何ら不思議では無い。

(そんな…!さっちゃん!)

瑠璃は、悔しい気持ちを必死に呑み込み、優愛の手を引いた。

(早く…見つけないと…!)


「…だってさ、初芽」

「分かってる」

初芽は、2人の会話を聞いて、スマホを取り出す。

「迷子は放っておけない」

かけた先は、彼女たちを知っているであろう想大だった。


「うまぁ」

唐揚げを咀嚼しながら、想大が言う。

「よかったね」

優月は、そう言って、ポテトを口にした。照り焼きバーガー味。香ばしいなと思う。

「堀田君は、何か食べたいのある?」

「焼きそばかなぁ」

「じゃあ、並ぼう」

その時だった。

「ん?あのヒヨコ顔」

想大が足を止める。優月もその顔に、覚えがあった。

「あれ?指原って子?」

そこにいたのは、何かを探す、指原希良凛だった。

「あれ!」

想大は呼びかける。だが、祭囃子が少しうるさい、気がした。

「あっ…!この前の」

希良凛は、顔を上げる。

「あの…優愛先輩と瑠璃さん、見ませんでしたか?」

迷子か、優月が直感する。

「見なかったよ。あの、一緒に探しませんか?」

「お、お願いします」

この時、優月を見ていた想大は、初芽の着信に、気づけなかった。


そうして、屋台を歩きながら、優月が希良凛に訊ねる。

「さっちゃんは、2人に連絡したの?」

「うん。でもスマホの充電は切れちゃって…」

希良凛のスマホは、電源を起こしても、真っ暗な闇を宿すばかりだ。

「そうですか」

優月は、優愛へ連絡しょうと迷った。その時、

「あっ!瑠璃ちゃん!!」

想大が声を上げた。

「えっ?」

2人が振り返る。

「うん…うん…、分かった分かった!茂華駅の前で」

想大が通話を切ると、ニコッと笑う。

「茂華駅で合流するってさ」

「よ、良かった。ありがとうございます」

希良凛が頭を下げる。

その様子に、3人も安堵の息を、漏らした。


6時30分。

希良凛は、やっと瑠璃たちと再会した。

「良かった。さっちゃん」

優愛がそう言うと「ごめんなさい」と希良凛が、謝った。

「ううん、いいの。ごめんね、目を逸らしちゃって…、もう少し私がちゃんと見てれば…」

「…先輩」

そのやり取りを見て、瑠璃は何故か泣きそうになった。

違う、私がもっと見ていれば、と。

その時だった。

「お姉さん、奪われちゃった?」

ふと軽い声が響く。

「あっ、想大先輩」

その声の正体は、大好きな想大だった。

「あの、一緒に、花火見ない?」

「えっ?」

突然のお誘いに、ビックリする。

「い、いいの?」

「元々、その為の浴衣だし」

そう言って、彼は紺色の振袖をはためかせる。

断る理由は、無かった。

「うん!!」

すると、優愛へ想大が、声をかける。

「優愛ちゃん、瑠璃ちゃん、借りるねー!」

「わっ!」

2人は、そう言って、元いた大通りへ走っていった。


「瑠璃ちゃん…」

「優愛ちゃん、そっとしてあげて」

優月がそう言った。

「えっ?」

「で、コンクールの結果は?」

「銀」

すると、優月は「でも大丈夫」と笑った。

両想いな2人は付き合う、そう分かった。


しばらくすると、花火が上がる。

赤、青、黄昏色の花火が、ドーンと爆音を上げ、闇を綺麗に彩った。

「わぁぁ…」

「瑠璃ちゃん、これ」

花火へ釘付けになっている瑠璃に、想大が手渡したものは、かき氷だった。

白い氷粒に桃色のシロップ、ほんのりと甘い香りがした。

「えっ?いいの?」

「ああ」

「いただきます」

瑠璃はそう言って、ふたつあるスプーンのひとつを手に取る。

そして、一口、口に運んだ。

「甘ぁい〜」

瑠璃は、頬を押さえ、猫のように目を細めた。

目に入れても痛くないくらいの可愛さに、想大は少し頬を赤らめる。

「じゃあ、俺も」

想大も氷粒を、口に入れる。

「ほんと…だ」

「でしょう?」

しばらくすると、瑠璃の顔から赤が消える。

「想大先輩、あの私ね、コンクールの結果ね、銀賞だったんだ」

「銀賞、すごいじゃん」

「でも、金賞獲らなきゃ、付き合わないって…」

「そんな事、言ってたっけ?」

気まずそうに言う瑠璃に、彼は白を切る。

「正直言って、どっちでもいいや。銀でも金でも」

「えっ?」

一度、決めた約束だ。

「だって、俺が瑠璃ちゃんのこと好きっていう気持ちは、変わらないもん」

「えっ…?」

「その代わりさ、ひとつお願いがあるの」

「な、なに?」

「文化祭で、瑠璃ちゃんの演奏を聴きたい」

「いいよ」

だが、意味が分からなかった。

「瑠璃ちゃんの、本気の演奏がー」

「!!」

「なんか、さっきの後輩ちゃんに遠慮気味じゃなかった?瑠璃ちゃん、あの子に負けちゃうよ」

「負ける…」

それだけは、嫌だ。絶対に。


「想大くん!ちょっと待っててね…」

すると、瑠璃の目が、変わる。

『叢雲から月、風無き花』

その言葉は月に叢雲花に風を、逆に言い表したものだった。

だが、この言葉の意味が、想大には分からなかった。

「私、今度こそ、想大くんと付き合えるように頑張る」

「えっ?」

「それまで、待っててね」

別にいいけど、とは言えなかった。

瑠璃の目には紅い狂気。どこか茉莉沙にも似ていた。

そして、この後『文化祭編』で、瑠璃と希良凛が火花を散らすことになるのだ…。


優月が高校1年生の夏祭り。

来年は悲劇になる事など誰も知らない…。

ありがとうございました!

この話しは

38話 『祇園祭の章』

39話 『月に叢雲花に風の章』

の総集編です。

まだ見ていない方、続きが気になる方は、ぜひ本編を読んでくれると嬉しいです!

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