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吹奏万華鏡♪ 特別ページ♪  作者: 幻創奏創造団
総集編
21/32

【総集編】 茂華町合同演奏会編

吹奏万華鏡総集編です!

最後まで読んでいただけたら嬉しいです!

茂華中学校は、9月の東関東大会では、銀賞を獲った。

9月の中旬。

「楽譜を配りまーす!!」

顧問の笠松明菜がそう言って、楽譜を配る。トランペット、トロンボーン、フルート、サックスと次々と、楽譜の束が薄くなっていく。

それを見た古叢井瑠璃は、興味のなさそうに見ていた。いつものように、優愛がドラム、希良凛が小物楽器に決まっていると。

ドラムができるのは恐らく、早くても文化祭だろう。


そして、打楽器パートに回ってきた。

笠松が珍しく瑠璃を呼び出す。そして、

「古叢井さん、ドラムやってね」

そう言った。

「えっ?」

それを聞いた瑠璃は、耳を疑う。

「は、はい!」

しかし、彼女は、大きく頷いた。

やっとドラムができるのか、と。

「良かったね、瑠璃ちゃん」

それを、見た優愛がそう言った。どうやら今回は、優愛が鍵盤楽器らしい。

「で、もう一曲は、榊澤さんに」

笠松は、当たり前のように、優愛へドラムの楽譜を、手渡した。

その優愛が、突然、こちらを見てくる。

「あ、これフォービートじゃん」

「フォービート?」

「そう、ツ、パン、ツ、パン!っていうやつ」

「へぇぇ」

「取り敢えず、やってみよっか!」

「うん!」

瑠璃は大きく頷いた。

取り敢えず、早く叩きたくて仕方がない。


楽器庫に、ドラムの音が響き渡る。

「そうそう。いいじゃないこ」

優愛が、そう褒めて、瑠璃の頭を撫でる。

「えへへへぇ」

瑠璃は、素直に喜んだ。

「私ね、いっこだけ嘘ついてたんだ…」

「んっ?」

「自由曲で、『メトセラ』やったじゃん?」

「うん」

「私、ソロで和太鼓やったじゃん」

「うん」

そう言って、ふたりは、毛布の掛かった和太鼓の群を見る。


「私ね、ここへ引っ越す前に、和太鼓習ってたの」

「えっ?初めて聞いた!」

「優愛ちゃんに、太鼓やったことあるって言っちゃったら、甘えられないと思って、最初からずっと黙ってたの」

「そうだったんだ」

優愛は大きく目を丸めた。

瑠璃は、当初、隠す気は無かったのだが、優愛に甘える為に、隠していたのだ。

「それでね、すごくでっかい和太鼓やってた」

「すごいね」

優愛は、そう言って、にこりと笑った。それに呼応するように、瑠璃も目を細めて、笑った。


それから…

「あれ?古叢井さん」

6時近くまで、練習してた瑠璃に、副顧問の中北が声を掛ける。チャリン、と金属がドアの淵に当たる音がした。

「あ、帰らなきゃですね」

瑠璃は、スティックを両手で押さえ、中北を見る。

「ごめんなさいね」

中北がそう言うも、瑠璃は「いえ」と笑った。

「大会終わって、練習疲れないの?」

「いえ、全然、全く疲れないです」

瑠璃は律儀に、そう答えた。

「先生」

「ん?」

瑠璃は、荷物を持って、彼女を見る。

「さようなら」

「さようならー」

音楽室を出た瑠璃は、こう思う。

これで良いのかと。


ー数日後ー

『最近、古叢井さん、部活頑張ってますよね』

職員室で、そう中北が言った。

『確かに。遅くまでいますもんね』

笠松も頷いた。

『文化祭に向けて、と張り切っているらしいです』

『そっか』

笠松はそう言って、コーヒーカップを手に取った。

新入部員の希良凛が、刺激となったのだろう。近頃は休憩ひとつ入れずに、色々な楽器を叩いている。


そうして、2週間後。

茂華中学校で、合同練習会が行われた。


ーその日の朝

「ふぁぁー…」

優愛が欠伸をしながら、廊下を歩く。すると、2つの音が聴こえてくる。

クラリネットとドラムだった。


廊下まで響くメロディーに耳を傾けようとしたその時。

「先輩、おはようございます」

指原希良凛が話しかけてくる。

「あっ、おはよう」

優愛も、ニコッと笑い、挨拶を返した。

「眠いね」

「本当ですね」

2人は、他愛の無い話をしながら、音楽室へと、歩いて行った。

音楽室へあと数歩という所で、希良凛が優愛へ訊ねる。

「これ、瑠璃さんが叩いているんですか?」

「そうみたいだね」

「最近、ずっとそうですよねぇ」

「瑠璃ちゃんにとっては、嬉しいんだよ。ドラムを任されたこと」

「えっ?」

優愛は、首をかしげる希良凛に、

「ドラムは、打楽器奏者の憧れだからね」

と言う。

「先輩も憧れたんですか?」

「うーん。最初は少し。でも、やっていくうちに、憧れよりも、尊敬の方が大きくなってきたかな。難しいもん」

「へぇ…、私は、先輩ほどやったことないので、分からないんですが…」


2人は音楽室へ入り、近くの椅子に腰掛ける。

「さっちゃんも、すぐに分かるよ。先生がさっちゃんに、やらせるかもしれないって言ってたし」

「では、文化祭は私もドラムできるんですか?」

「まぁ、簡単な曲だとは思うけど」

その時、希良凛の目の色が変わった。

「せっかくやるなら、難しい曲をやりたいです」

「そ、そう?」

「って、先生には言いました」

「えっ?直談判?」

「はい」

珍しく強気に答える希良凛に、優愛が苦笑した。

「先生は、何て答えたの?」

「経験者ですしいいですよ、と」

「へぇ…」

「まぁ、何でこんなこと言ったかといいますと、私、弟がいるじゃないですか?」

「ああ、うん」

そうだ、希良凛には弟がいたな、と思い出す。

「彼も、打楽器奏者で、楽団の中で1番上手い人に教えられてるみたいなんですよ」

「えっ?すごい」

「それで、私、よく親に厳しく言われるんですよ。弟より下手だね、って」

「ああ」

この話は、以前にも聞いた気がする。

「それで、カチンてきて、文化祭で見せつけてやろうと思いまして」

「そ、そうなんだ」

災難だな、と彼女は思うしか無かった。


その頃、曲を終えた瑠璃は、スティックを構え、凪咲に言う。

「私、上手くなってる?」

「うん、すごく」

凪咲は瑠璃の頭を、撫でて褒める。しかし、次の言葉は、疑問に変わる。

「てかさ、なんで瑠璃は、ドラムしかやらないの?」

「え?」

「いや、別に深い意味は無いよ。ただずっと遅くまで叩いてるじゃん」

すると瑠璃は少し黙り込んだ。


しばらくすると、口を小さく開く。

「それはね、皆に見せつけてやる為だよ」

「どういうこと?」

「だって、私、鍵盤楽器キャラになってるよね」

「まぁ、実際上手いし」

「私、別に鍵盤やりたくて、入ったわけじゃないからさ。なのに、鍵盤ばっかり上手くなってるから」

それを聞いた凪咲は、なるほど、と言う。

要するに、瑠璃は皮楽器が上手くなりたい、ということだ。

「もちろん、私のワガママだけどね」

「そんなことないよ。気持ちは分からなくもないし」

そう言って、凪咲は笑った。

自分に自信と誇りを持てる演奏をしたい。

それは確かに瑠璃のワガママなのかもしれない。だが、それ以上に意欲があるなら、それでいいのだろう。


そうしてリハーサルが始まった。

「私、ここわからないです」

「ああ、ここはねぇ」

図書室前の広間で、木管パートは練習をしていた。

木管は、クラリネットやオーボエなどだ。


そんな中でも、伊崎凪咲はクラリネットパートの中学2年生だ。そんな凪咲は、小学生の女の子に、クラリネットを教えていた。

「あ、できた」

その女の子は、思うように音が吹けなかったようで、凪咲が教えると、すぐに吹けるようになった。

「分からないことが、あったら聞いてくださいね」

「うん!」

凪咲は、そう言ってクラリネットを構えた。

(合同練習なんて、春にやった演奏会以来だな)

そうつぶやいた。


その頃、音楽室。

音楽室は、打楽器パートの練習場になっていた。

「あの、すみません」

ドラムを任せられた古叢井瑠璃が、練習していると、小学生の女の子が、話しかけてくる。

「はい」

瑠璃は、少し声のトーンを上げる。

「えっと…えーっと…」

その少女は、瑠璃の胸元を見ていた。

もしかして…、と思う。

「名前、分かる?」

「あっ…!」

図星だった。少女は彼女の名前が分からない。

古叢井。先祖がどんな人間だったかは、知らないが、現在になってはいい迷惑だ。この苗字で何度、笑われたことか。


「私は、古叢井瑠璃(こむらいるり)だよ」

そう言って、柔和な笑みを浮かべた。

「あっ!ありがとう…」

「瑠璃ちゃん、で大丈夫だよ」

「うん!」


その様子を見ていた希良凛が、苦笑する。

「苗字、何度見ても難しいですよね」

「だよね。でも、カッコいいよね。文字が」

「そうですね」

「でも、本当、瑠璃ちゃんが、ちゃんとした先輩になれてよかった…」

すると、優愛が、ホッと息をつくように言った。

「えっ?」

その言葉に気になった希良凛が、こちらを見てくる。その目は疑問に、満ちていた。

「瑠璃ちゃん、元々人見知りだったんだよね」

「へぇ。初めてあった時は、そんな感じしなかったですけれどね」

「なんか…私のお陰らしいよ」

希良凛は、その言葉に目を細めた。

「影響力が強いんですかね。先輩」

「どうだろうね?後輩」

2人は、ふふっと笑った。

最近、この2人の仲は、更に良くなってきている。


その時、高校生の女の子が、瑠璃へ言ってきた。

「あの、古叢井さん、ここ、もう一回いいかな?」

彼女は、少し驚いた表状をするも、

「分かりました」

と笑った。

『可愛いー…』

『うちの吹部に入ってくれないかなぁ』

その時、数人の女の子も、瑠璃へ視線を向けてきた。しかし、男子は、こちらには興味が無いようで、淡々と練習を続けていた。


10時には、全体合奏が始まった。

「はい、そこ!トランペットの動きがズレてますよー」

笠松が、小学生のトランペットの子を、じっと見つめる。

「もう少し、クレッシェンドしてください」

『はい!』

「では、トランペットだけで、やってみましょう!」

すると、トランペットの高らかな音が響いた。

瑠璃は、ドラムの椅子に腰掛け、足を小さく振りながら、その演奏を見ていた。

(なんでだろう?)

しかし、瑠璃は気になった。全然緊張しない。

本来なら、外したらどうしよう?と緊張が体を支配するはずだ。自分が本番に弱いことは、誰よりも分かっていた。それでも全く緊張しない。


その時、トランペットを吹く皆々を、笠松が手で制止する。

「はい!オッケーです!」

「では、もう一度、全員で通してみましょう!」

『はい!』

小学生、中学生、高校生が、自分の楽器を、構えた。辺りに緊張感が、張り巡らされる。

そうして、フルートの音が響いた…。


合奏が終わると、笠松が拍手をする。

「完璧です!あとは、本番まで練習あるのみですね!」

すると彼女が、香坂へ目配せをする。

その合図を受けた香坂が、突然立ち上がる。

『演奏会、頑張るぞー!』

香坂が声を張り上げる。彼女の声は、ビリビリと音楽室へ反響する。

突然のことだったが、部員も「おー!」と繰り返した。

それを見て、笠松は、彼女へ親指を立てた。それを香坂は、にこりと笑って返した。美少女の目が柔らかく歪んだ。


10月3日。本番の日だ。

茂華町民会館に、部員たちが集まった。

高校生の1人が、瑠璃へ訊ねる。

「よく寝た?」

「はい!」

「頑張ろうねー」

すると、瑠璃は「おー!」と右の拳を上に、突き上げた。

その反応に『可愛い…』や『ねー』などと、黄色い声が上がってきた。

「瑠璃さん、モテるんですねぇ」

それを見た指原希良凛が言った。希良凛はまだ1年生だが。

「そうだね」

優愛も、小学生の女の子と、楽器を運びながら、同意した。


「朱雀先輩、譜面台持ち、手伝ってくださーい」

瑠璃が、女の子へ呼びかける。すると朱雀と呼ばれた高校1年生の女の子が、駆け寄ってきた。

「はい!」

彼女が、譜面台の入ったカゴを持つと、一気に姿勢が楽になる。

「じゃあ、行くよ」

「はーい」

このような形で、準備を終えた。

ついに、本番が始まる。


小学校、中学校の演奏が終わり、今は高校生の演奏だ。やはり、経験者が多いのか、今の自分たちより遥かに洗練されていると、痛感させられる。


「あのオーボエ、綺麗ですね」

「私も、あれくらいできればなぁ」

凪咲と、オーボエの久奈が、ヒソヒソと話していた。

「いや、新村先輩も、十分うまいですよ」

「ありがとう」

瑠璃も、スティックを振って、模擬の練習をしていた。練習では緊張しなかったのに、今では緊張する。

「緊張してる?」

その時、優愛が耳元で囁いてきた。

「うっ!優愛ちゃん」

「動きが硬いもん。分かるよ」

優愛は、そう言って笑った。彼女の柔らかい眼差しが、ピンと細まった。

「優愛ちゃは、最初緊張したの?」

「したした」

そうはいえども、瑠璃は過去に一度、ドラムをやっている。だが、あの時は大して観客はいなかった気がする。だが、今回は違う。親や知人が見ているかもしれない場所で、演奏するのだ。

緊張するはずだ。

「頑張ろうね」

優愛は、そう言って、瑠璃と手を合わせた。

ぱちん!と乾いた音が響いた。瑠璃は「うん」と力強く頷き、舞台の方を見つめた。

それと入れ違いに、今度は希良凛が、話しかけてきた。

「瑠璃さん、緊張してますね」

「うん、やっぱり、緊張するよ」

「頑張ってください」

そう言って、希良凛は瑠璃に、笑いかけた。

先輩と後輩に挟み打ちされた瑠璃は、思わず苦笑が溢れた。


程なくして、合同演奏が始まった。

フルートの音が、幾重にも重なって響く。洗練された音が、ホールを包む。

瑠璃は、深呼吸をする。そして、その刹那、スティックを手首から振り下ろす。

パシィン!!と金属が鳴り響く。

と同時に、ハイハットとスネアの往復を、始めた。そして、浮きだった右足を、すとんと落とし、バスドラムを打つ。

音が入る度、タムを打ったり、ハイハットとスネアを同時に打ったり、様々な技術を発揮する。

そして、香坂も必死に、フルートを吹き続ける。息が苦しいが、やめるわけにはいかない、その責任感を演奏にぶつけた。


そして、演奏が終盤(ラスト)へ差し掛かった。

最後、引き伸ばしの音がホールいっぱいに伸び渡る。

希良凛は、必死にシェーカーを振り、優愛もマレットで連打する。

瑠璃は、その様子をちらりと見る。ふたりはどこか楽しそうだ。

瑠璃は、隣のドラムを見る。高校生の男の子は、タム回しをしていた。


太鼓の音が絶え間なく繰り返される。

それを見た瑠璃の中で、何かがぷつりと切れる。

(私も!)

気付けば、瑠璃は全力でスティックを振っていた。

タカタカドコドコドコドコタカタカドコドコドゴッ!

相当な力にタムが音を立て、小刻みに震える。

数秒間叩きまくると、徐々に音が小さくなっていく。瑠璃は、それと同時にシンバルを両手で叩いた。

すると指揮者の笠松が、大きく両手を振りかぶる。

それと同時に、瑠璃は、左右にあるスネアとフロアタムの太鼓へ、スティックを振り下ろした。

バン!と鋭い音。久し振りに本気で奏でた瑠璃は、満足そうに笑った。

ずっと我慢していたドラムソロができたことに、嬉しかったのだろう。目を猫のように細め、満足そうに頬を赤くし、白歯を横へ伸ばした彼女の表情は、誰よりも嬉しそうだった。



舞台を終えた瑠璃は、

「あー、楽しかった!!」

と両手を伸ばした。

「瑠璃、最後カッコよかったよ!」

凪咲が、本気で褒めると、彼女は、

「えへへ、実は、ちょっとだけ練習してたんだぁ」

続いて、ドラム担当の男の子が、

「凄かったよ!」

と瑠璃に言う。

「ありがとうございます!」

瑠璃は、ニコニコと笑って返した。

タムの打面に傷が付いたかもしれないが、別に大丈夫だろう、と考えながら。

「瑠璃ちゃんも、片付けしょう!」

優愛がそう言うと「はーい!」と瑠璃は、トコトコと歩いて行った。


その時、希良凛が瑠璃をじっと見ていた。

明らかに技術が進化している。

「瑠璃さん」

普段は子供っぽい彼女も、本気を出せば、優愛を超えゆる破壊力と技術力を持つのかと。

希良凛は、険しい表情でひとり考える。


このあとのオーディションをどう乗り越えようかと…。

読んでいただきありがとうございました!

良ければぜひ、本編へ!

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