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吹奏万華鏡♪ 特別ページ♪  作者: 幻創奏創造団
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19/33

【ハロウィンSP】 茂華の杜ハロウィン演奏会

『トリックオアトリート!』

そう言いながら、赤と黒いドレスに身を包んだ吸血鬼に、仮装した少女はお菓子の入ったバスケットへ飛びついた…。

10月31日。古叢井瑠璃たち茂華中学校吹奏楽部は、町の老人ホーム『茂華の杜(もり)』にいる。

「うん!すっごく似合ってるよ!!」

「え、そうですか?」

今日はハロウィンの演奏会に、お招きされたのだ。

ハロウィンに因んでか、瑠璃たちは仮装をしている。白シャツの上に赤と黒の絹で作られたドレス。これは手作りなのか、買ったのかよく覚えていない。ツインテールの天辺には、オレンジ色のカチューシャを付けている。モデルは吸血鬼だ。

これが、入所者には大人気だった。

「先輩、すっごく可愛いですよ!!」

乗り気で言ったのは、指原希良凜だ。

「え、えへへへ…。ありがとう!」

今回、3年生だけのはずが付いてきたようだ。


「…音織ちゃん?フルート吹いてたわねえ。上手いわぁ」

「そう言われること、奏者として誉事で御座います」

音織は相変わらず、自分のスタンスを崩さない。

「…それと、黒い楽器持ってた真面目そうな君」

「あ、クラリネットで、伊崎(いさき)凪咲(なぎさ)です」

「魔法使い?可愛いわねえ」

伊崎凪咲は、緑のドレスに黒い羽織り、黒い三角帽を被っていた。

「ありがとうございます。お褒めいただき恐縮です」

目の前の人生の大先輩に、凪咲は小さく腰を折った。その傍らで他の3年生たちも歓迎されていた。

「…音織先輩」

「あ、みるくちゃんよ」

中畑みるく。2年生のフルートパートだ。

「…あらあら、可愛らしい」

「ありがとうございます!」

みるくも仮装したいと参加したのだ。音織とみるくは揃って、真っ白なお化けの仮装だ。


1度目の対面が終わった所で、再び後半へと入った。

「それでは、第2部に移りたいと思います」

そう言ったのは、部長の矢野雄成だ。彼は金色に光るトランペットを構える。その音が鳴る。

と同時、瑠璃がドラムスティックを、踊るように振る。

つったん!つったん!つったん!つったん!

安定したフォービートのリズム。

その音に乗っかるように、どこか懐かしい音楽が響き渡った。

『上を向いて歩こう』だ。この曲は40年ほど前の曲だ。誰もが一度は聴いたことがあるだろう。

軽いリズムを瑠璃は、ひたすらと刻んでいく。赤いドレスがふわりと上下へ踊る。

重すぎず、軽快でもないメロディーは、その時代さながらの懐かしさを思わせる。


そして、演奏の最中…。

『…うえをむーいて、あーるこーう』

中には歌っている方もいた。

瑠璃は仮装が外れないくらいのノリで、体を揺らした。そうすれば、楽しさがより伝わってくるからだ。

雄成と澪子も、トランペットを吹きながら左右に揺れる。ふたりは本当に器用だ。

黒猫へ仮装した美心乃の優しいメロディーから、音織のソロへと変わる。

ゆったりとした針を撫でるような音。その音は完璧に室内へ響き渡った。その刹那、乾いた拍手が鳴り響いた。

その後は金管の主旋律が、辺りの空気を心地よく震わせる。皆は希良凜のタンバリンに合わせるように手拍子を打った。

たたたたん!!たったたん!!

瑠璃が軽やかにスティックを振ると、スネアの乾いた音が、辺りへ響き渡ると同時、室内に大きな拍手が満ち溢れた。


数分後。

「ありがとうございました!」

『ありがとうございました!』

曲を終えた彼女たち。すると施設の職員が瑠璃たちの前に立つ。

「…吹奏楽部の皆さん、お菓子食べますか〜?」

その言葉に、1番先に反応したのは瑠璃だった。

「食べたい…」

本音が口を衝いて出る。

「瑠璃ぃ」

凪咲が笑うと、大テーブルにバスケットが置かれる。中には美味しそうな菓子や、見慣れた菓子が、包装で詰め込まれていた。

「…」

普段は真面目な音織も、お菓子をずっと見ている。 

「…音織ぉ」

小さく肩をたたくも、音織は全くこちらを見向きもしない。そこまでお菓子が欲しいのか。




演奏会が終わり、学校帰り。

「…ふぁあー、あっつーい」  

学校の駐車場を歩きながら、雄成と澪子は手で自身を仰いでいた。

「澪子と雄成、フランケンシュタインだったもんね。似合ってたよ」

瑠璃がそう言うと、雄成は「ありがとう」と笑った。雄成は瑠璃に対してだけは格段に甘い。

「瑠璃も吸血鬼似合ってた」

「ね、フランドールみたいだった」

「へへ、」

雄成と澪子に褒められ、瑠璃は嬉しそうに片手を開いて閉じた。


「瑠璃ちゃぁーん!」

「あ、美心乃ちゃん」

すると、校門で待っていた久城美心乃に話しかけられる。お菓子の交換をしようとしていたのだ。

「じゃあね。2人とも」

「うん、またね」

「ばいばい!」

瑠璃はハロウィンの服装が入った紙袋を揺らし、美心乃と凪咲の所へ向かった。

「そういえば、河野は?」

「えっ?芽吹?先帰んなかった?」

「あ、そっか。矢野といないから心配してた」

「それより、お菓子だよ〜」

「あ、うん」

3人は帰路を歩きながら、お菓子交換を始めた。やはり高級そうなお菓子も紛れていた。

「ほらー、シャメルのお菓子だよー!」

(※シャメルは架空の高級お菓子メーカーです)

「うわーぁ!演奏会行ってよかった!」

「あはははは」

瑠璃と美心乃が高級菓子に盛り上がる中、凪咲だけが苦笑していた…。

「シャメルのクッキー、今食べよ」

美心乃が誘うと、瑠璃は大きく頷いた。

「食べるの2年ぶりかも。楽しみだなぁー」

そう言って、食べようとした瞬間…。



強い日差しに目が焼かれるようだ。瑠璃は世界から目を覚ます。

『え…っ…?』

………夢だった。

「…あ、夢か?」

時計には無情にも……金曜日だった。

「そっか。私、もう引退したんだよね」

その声は残念そうだった。

ハロウィンのお菓子もらいたいなあ、と呟きながら、瑠璃は制服へと着替え始めた。

『…あなたに吹奏楽なんて、やらせなければよかった』

『…えっ?』

母から放たれた言葉は瑠璃を傷つけた。


『…いいのかな?私』

迷う瑠璃へ優愛は、

『いいんだよ。やりたいんでしょ?』

『…』

強い期待に混じった迷いが、渦巻く世界の中で…


         長編版

        吹奏万華鏡0

     打楽器ソロコンテストの賞

       11月21日【金曜日】

      

      『お姉ちゃん、ありがとう…』

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