【第2話:届け、わたしの言葉】
「……この文章、本当に投稿していいのかな……」
パソコン画面を見つめたまま、カノンは少しだけ唇を噛んだ。
目の前には、新しく始まる「百鬼グループのFC募集」を告げるSNS投稿の下書き。
言葉は整っている。デザインも可愛い。
でも、"本当にこの内容で、誰かの心を動かせる?"
これまでカノンは「キャストの可愛さ」や「イベント告知」の発信には自信があった。
けど今回は違う。「会社の未来」を作る投稿だ。
レナやミユ、ナナ、リリ、ヒナ、その他の仲間たちの未来を背負うような言葉。
「重たいなぁ……」
思わずため息が漏れる。
でも、手は止まらない。
──“いま、この瞬間、わたしたちは歩き出しました。
まだ不安もあります。でも、信じているんです。私たちなら、もっと大きな未来を作れる。一緒にやってみませんか?”
打ち込んだその言葉に、自分でじんわり涙が浮かんだ。
(なんだろ……うまく言えないけど……これが、今のわたし)
その瞬間、スマホが鳴った。メッセージは、ヒナからだった。
> 「さっきの投稿、見たよ! めちゃくちゃ良かった。後輩たちも“なんか泣けた”って言ってた(笑)」
カノンはその画面を見て、クスッと笑った。
そして──ふっと肩の力が抜けた。
(わたしの言葉、ちゃんと届いてるんだ)
ほんの少し、怖さが薄れた気がした。
広報って、数字だけじゃない。伝えるって、こんな風に、誰かの背中を押すことなんだ。
カノンはディスプレイを閉じ、コーヒーを飲んだ。
冷めかけていたけれど、いつもより少しだけ甘かった。




