表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/42

【第10話:限られた席で、できること

「レナさん、少し時間もらえますか?」


ナナが声をかけてきたのは、月曜の昼下がりだった。

まだ眠そうな顔。でも、そこにはいつもと違う気配があった。



---


堅香子は特殊な店舗だ。

営業時間は朝5時まで。

席数は10席、キャストは常に1〜2人。

いわゆる“深夜帯”が最も強く、密度の濃い接客が求められる。


現在は幹部キャストの応援で回している状態。

なでしこからスカウトしたキャストもいるが、体制は不安定だ。


平日は来店10名、週末は18名が目標。

特に週末は、朝5時の営業終了までに5名のお客様が残っている状態を維持したい。

それがこの店の“売上の柱”であり、“空気”でもある。



---


「正直、ずっと回すだけで精一杯で……。

 でも、今のままだといつまでも応援頼りで、根っこが育たないと思って。」


ナナが広げたノートには、スカウトキャストの名前と、過去の稼働履歴が丁寧にまとめられていた。

勤務帯、来店傾向、リピート数、SNSの動き──小さな情報の積み重ねだった。



---


「金・土の深夜に、“固定メンバー”をつくろうと思ってます。

 なでしこ組の中でも朝方まで残れる子に声をかけて、

 週末限定でも“堅香子の顔”って立ち位置を作りたいんです。」


「最初は人じゃなくて、“流れ”を定着させたくて。」



---


レナはしばらく黙ってから、ゆっくりと口を開いた。


「ナナ……いつの間に、そんなに考えるようになったの?」


「……任されたからには、ちゃんとやりたいって思ったんです。」


その言葉に、レナは目を細めた。



---


「週末18名って、簡単じゃない。

 でも、10席のうち5席が朝まで埋まる状態を作れたら、それってすごいこと。

 “狭さ”は、“満席の強さ”にもなるからね。」


「平日は?」


「接客密度で勝負します。常連さんの滞在率を上げたいので、週ごとの分析もしてます。」



---


“相談”という名の“報告”。

レナはそれを静かに受け止めながら、確かに感じていた。


──この子はもう、自分の店として動いている。


「次は、報告いらないくらいに、ナナが全部動かしていいよ。」


ナナは、はにかんだようにうなずいた。



---


限られた10席で、どれだけの空気を作れるか。

堅香子の“リズム”が、ようやく回り始めようとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ