13-1 明かされる闇
夕方になると、再びショウが入ってきた。
「大分食欲が出てきたな」
「……ええ」
「この調子でいけば、早く動けるようになりそうだな」
「……そうね」
救急箱を持ってきて傷の手当てをする彼に「さっき、任務完了のメールをグループへ送ったわ」と言うと「そうか」
「ありがとう。今回も、ショウのお陰で、うまくいったわ」
「……礼を言う必要ない」
「どうして?」
「……俺は、お前を、死に追いやろうとした。だから、礼なんか言われる資格はない」
「……」
「心配するな。俺は何もしない」
「……」
「何もしないから、心配するな」
救急箱をしまい、部屋から出ていこうとするので「動けるようにならないと価値が下がるから、それまでは手を出さないということ?」すると足を止め「どういう意味だ?」
「私を売れば、一生贅沢できるだけのお金が手に入るのよ。一番高い値で取引されてるから」
「俺が、そんな事すると思ってるのか?」
「どういう人でも、状況が変われば豹変するわ。特に、お金が絡むと」
「俺が、そんな卑しい人間に見えるのか?」
「……」
「お前を売ってまで贅沢したいとは思わない」
「大金が欲しくないの? 贅沢したいと思わないの?」
「大金なんて今の俺には必要ないし、贅沢したいとも思わない」
「それはおかしいわ。お金があれば何でもできるし、何でも買うことができるのよ。欲しがってたあの腕時計も、私たちでも。普通なら飛びつく話よ。楽して大金が手に入る金儲けの話なんだから。それを、いらないと言うのはおかしいわ」
「人身売買することが普通なのか? そんな事して、大金を手にする話に飛びつかないのはおかしいか?」
「おかしいわ」
「おかしいのはお前のほうだ!」向き直り「人身売買することが普通だと言うお前のほうがおかしい!」
「おかしくなんかない。だって、人間は私たちを人と見てないじゃない。まるで家畜を扱うように一列に並べて、見回しながら値踏みしてるじゃない。家畜同然だったら、普通じゃない……」
「俺は家畜だなんて思ってない!」
「じゃあ、遊び道具かしら?」
「いい加減にしろ! そこまで言うんだったらメチャクチャにしてやろうか! メチャクチャにして売り飛ばせば気が済むのか!」
「……」
「まったく、俺を何だと思ってんだ! 獣みたいに見やがって!」吐き捨てるように言うが「そう思われても仕方ないのか。言われて当然のことだな。だが、俺はそんな事する気はないし、するつもりもない」




