12 かみ合わない感情
翌朝、朝食を持ってショウが入ってきた。
「タオル、ありがとう」
「……ああ」相変わらずキラを見ない。
トランクを元の位置に戻すと、昨夜持ってきたトレーを持って出ていく。
午後十二時、昼食を持ってきたショウに「お願いがあるんだけど」
「何だ?」
「髪を洗いたいんだけど、まだ歩けそうにないの。一階の洗面所まで連れてってくれる?」
「わかった」
食後、バスタオルを持つキラを抱えて一階へ降りていく。
洗面所には椅子が用意されていて、そこに彼女を座らせると「キッチンにいるから、洗い終わったら声を掛けろ」そう言い残すと出ていく。
そして二十分が過ぎたころ「ショウ、ショウ!」
「もう洗い終わった……どうした!」
「腕がだるくて、髪をゆすげない」
洗面所の縁に両手を付き、前屈みの状態で苦しそうにしている。
「一人でやろうとするからだぞ。ちょっと待ってろ」洗面所から出るとすぐに戻ってきて「ほら、抱えてろ」リビングから持ってきたクッションを体の前に押し込むと「苦しくなったら言えよ」
キラの髪を洗い、ゆすぐと棚から新しいバスタオルを持ってくる。
頭を拭いているとフラつくので「おい!」慌てて支えると「目眩がする」
「前屈みの姿勢から急に頭を上げたからだろう。少ししたら落ち着く」
しばらく時間を置いてからドライヤーで髪を乾かす。
「きれいな髪だな。光に反射していろんな色に光る」
鏡に映るキラの顔を見ると手が止まる。
「お前の瞳、宝石みたいだな」すると目を伏せるので「きれいな瞳をしてるんだな」
髪が乾くと抱きあげて部屋へ連れていく。
「首が痛い」と言うので救急箱から痛み止めの塗り薬をだし、首筋に塗っていく。
「何か飲むか?」
「温かいものがいい」
「わかった。今持ってくる」
部屋から出ると、ティーポットを持って戻ってくる。
「美味しい」表情が和らぐのを見て「じゃあ、何かあったら呼べよ」部屋から出ていこうとすると「本当に私が元気になったら、一緒に行動するのをやめるの?」と聞かれ、足を止めると「そのつもりだ」
「その後はどうするの?」
「……まだ決めてない」
「どうして、すぐに部屋から出ていくの?」
「……俺がいると、落ち着けないだろう?」
「どうして、そう思うの?」
「幽閉されて動けなくなったシルバーフェニックスの女性が、恐がるのを知ってるからだ」
「……」
「早く元気になれよ」そう言うと出ていく。




