32-2 ファルークの現状を探る
『悪いな、オルト。ジュリアスはちょっと神経質なところがあるから、話し言葉がきつくなるんだ』
「ああ、気にしてないよ。裏表のない性格だってすぐにわかったからさ」
『さすが時期領主候補。人を分析する才能は長けてるな』
『ファルーク。時期領主候補ではなく、現領主です』ジュリアスが訂正すると『エッ? ウソだろう? だって、オルトがここに閉じ込められたのって、オルトの父親が現職のときだぞ』
「ちょっと待った。俺の話はいいから、はい、夕飯。腹減ったろう?」いつも使っている正方形の布のバッグを、土の格子の間から入れてファルークに持たせる。
『ありがとう。いつも悪いな』受け取ると、ゆっくり左横の土の格子前に置いてある椅子に腰かけ、テーブルに置くと、オルトから何が入っているのか説明を聞く。
そのオルトは右奥の壁際に置いてある台の上からいつも使っているランプと椅子を持ってきて、椅子をジュリアスに渡すと土の格子を挟んだ外側に置いてある椅子に座り、ランプを土の格子から中に入れてタッパーの横に置くと、説明を始める。
「上のタッパーには、畑で取れたジャガイモで作ったニョッキのトマトシチューが入ってる。パンが入ってる袋の中にスプーンが入ってるから、気を付けて食べろよ。下のタッパーには、葉野菜の炒め物と卵焼き、マカロニときのこのサラダ、自家製のピクルスが入ってる」
オルトの向かいに椅子を置いて座るジュリアスが、彩きれいなタッパーの中身を見て『全部作ったんですか?』
「もちろん。これでも料理にはけっこう自信があるんだぞ。さっき食べたシチューもうまかっただろう?」
『俺が食べるとき、ちょうどいい具合になるように調理するのは感心するよ』ファルークがおいしそうにトマトシチューを食べはじめる。
『それでは、ここから出るための体力は大丈夫そうですね』
『ン? ああ、オルトのお陰で、なんとか体力は保ててるよ』
『そうですか』ジュリアスが向かいのオルトに『ありがとうございます』と軽く頭を下げるので「な、ちょっと、なんだよ。どうした?」
『いえ。ファルークのために、毎日こうやって食事を運んでくれて、お礼を言うのは当然です』
「さっき奴が言っただろう? 俺たちは古くからの友達なんだよ。だから、このくらい当たり前だよ」
『オルト、ありがとうな』
「なんだよ。ファルークらしくねえな」
『親しき中にも礼儀あり、だろう?』
「お礼はいくらでもいいぞ」
『なんだよ。金を取るのか?』
談笑しつつファルークが食事を終えると『少し話をしたいんですが、どのくらい時間に猶予がありますか?』ジュリアスがオルトに聞くと、彼は腕時計を見て「そうだな。二十分ってところかな?」
『そうですか。ではファルーク。話をする前にいくつか質問に答えてもらえますか?』
『ああ、わかった』
『一番の疑問ですが、彼は本当にファルークの正体を知ってるんですか?』
『ああ、知ってる』
『なぜですか?』
『オルトの家族とは、俺の曽爺さんの代からの付き合いだからだ』




