10 共同任務 その十 脱出前の余興
そして、お披露目パーティの当日。
「みんなきれいよ」老師側が用意したドレスを女性三名に着せ終わると「そっちはどう?」
「準備万端、整ってますよ」ダルそうなショウの声がカーテン越しに返ってくる。
「女性は支度に時間が掛かることは心得てますから、気遣いは無用ですよ」
「ヘェ、アルバートは慣れてるんだな」
「女性は誉めれば誉めるほどきれいになりますからね。出てきたとき、誉め言葉を掛けることも心得てますよ」ニッコリ笑う彼は少年のように見える。
「確かにそうだけど、俺は今回パスするよ」
「なぜですか?」
「相棒に女たらしと決め付けられてるんだ。ここで何か言ったら、やっぱり上手よね、なんて、嫌味を言われるのは目に見えてるからさ」
「違うんですか?」
「……あのねえ!」
「冗談です。本気に取らないでください」
「冗談が言えるくらい元気になったのはいいことだけど、他のことを言ってくれよ」
その時ドアがノックされたので「いい、俺が出る」立ち上がってドアを開けると「もうそろそろお時間でございます。ご用意はいかがでしょうか?」例の側近が呼びにきた。
「もうすぐ終わります」
「さようでございますか。老師が首を長くして待っておられますので」
「すぐ行くと伝えてください」
「かしこまりました」
ドアを閉めて戻ってくると「お待たせしました」キラたちが奥から出てくる。
「とても素敵だよ。君たちをエスコートできるなんて光栄だな」アルバートが女性二人に歩み寄ると「ケティ、きれいだよ」十歳のトニーも負けていない。
「ありがとう」ニッコリ微笑む彼女は、瞳と同じ緑色のリボンがよく似合う。
「歯が浮きそうで、とてもじゃないけど真似できないな」ショウがボソッと呟くと「さあ、最後の挨拶に行きましょう」そんな彼には目もくれず、キラが声を掛ける。
部屋から出ると、隣にいるショウをアルバートが突つき「いいんですか?」小声で言うと「いいんだよ」面倒くさそうに答える。
そして、パーティが催される大広間に近付くにつれて、賑やかな声が聞こえてくる。
「さあ、ラストステージよ」
ドアの前で声を掛けると、みんな気を引きしめて頷く。
ショウがドアを開けると、中が一瞬にして静まり返った。
側近が彼らの両脇に立つとアルバートが二名の女性をエスコートして中へ入り、部屋の奥に座っている老師へ向かって歩いていくと、招待客が女性たちを見てざわつきはじめる。
数が減少して、滅多に見ることができないと言われている二十代のシルバーフェニックスの女性が二人もいることに、驚きを露わにしていた。
当然、その後ろからトニーにエスコートされて歩くケティにも視線が注がれる。
「希少と言われてる女性を二名もお持ちとは、さすが老師だ」
「私は初めて見るよ。噂以上だね」
ショウはそんな言葉を聞いて殴りたくなる衝動に駆られていたが、隣のキラは聞こえていないのか、表情一つ変えずに彼らの後ろ姿を見ている。
そして大勢の注目を浴びる中、彼らが老師のところまで行くと側近たちに囲まれて横に立ち、招待客のほうを向く。
それを合図にパーティが始まった。
老師は招待客からの質問に笑顔で答え、キラたちは招待客に混じって遠くから彼らの様子を見ていた。
パーティが終盤に差し掛かるとキラたちはリビングルームへ戻り、着替えて再度変装する。
「ヘェ。さっきのドレスも似合ってたけど、今回のもいいな」
「あら、誉めてくれるの?」意外な顔をすると「誉めたつもりだけど」
「それじゃあ、ありがとう。ショウもその服、似合ってるわよ」
「そう?」
「ええ。さあ、そろそろ彼らが戻ってくるわ」
「準備万端。これからが本番だ」




