6-1 共同任務 その五 標的に追い打ちを掛ける
「また助けられなかった……」ショウが頭を抱えるので「また?」聞き返すと「彼らの中で、一番狙われてるのが若い女性だってこと、お前も知ってるだろう?」
「……ええ」
「PFSでも、彼女たちを助けることが最優先になってる」
「……そうだったわね」
「お前のところのグループは、そこのところ、どう考えてるんだ?」
「同じよ。私たちのところでも、調べからその事はわかってるわ。辛い思いをする前に自死する者がいることも。だから、ここにいる彼女たちは、なんとしても助け出さないといけない」
「そうだな」
「さすが、金融界のドンと呼ばれてるだけのことはあるわね。彼女たちを幽閉してるんですもの」
「俺も、久しぶりに彼女たちくらいの女性に会ったよ」
「地下の部屋で彼女たちを見たとき、ビックリしたわ」
「俺もだ」
「老師はまだ他の場所にもたくさんの彼らを幽閉してるわ。ここは一端にしか過ぎない」
少しの間、沈黙があったあと「アレンの所にもいたんだろう?」
「……ええ、一名いたわ」
「それにしても、そのイヤリングの効果はすごいな。こっちが名乗らなくても味方だとわかってもらえるんだから」
「そうね。とても助かってるわ」右耳のイヤリングを触る。
「彼らは、お前を仲間だと思ってるのか?」
「それは無いと思うわ」
「じゃあ、どう思ってるんだ?」
「推測だけど、仲間が何らかの形で関わって、この人は信用できると証拠を残した。その証を持ってる人、みたいな見方をしてるんじゃないかしら?」
「なるほど。助けた彼女は、本当にお前のことを信用してたんだな」
「……そうね」
「さて、彼らは寝たかな?」
部屋とサンルームの仕切りとして置いてある植物の陰からソッと覗くと、みんな寝息を立ててグッスリ眠っていた。
「大丈夫、みんな寝てる」
「じゃあ、私たちは一旦ホテルへ戻りましょう」
「そうだな」
二人はリビングルームから出るとドアに鍵を掛け、老師のところへ向かった。
「彼らの様子はどうじゃな?」
報告を待っていた老師が、二人の顔を見るとすぐに聞いてくる。
「眠ってますわ」
「本当ですか! 信じられない。全員がいっぺんに寝るなんてこと、今までなかったのに」
思わず出た側近の言葉を聞いて「管理体制がまったくできていませんのね」
「稀少なコレクションをあんなふうに扱ってるんですから、話になりませんよ」
「お前ら! 一体どういう調査をしたんだ!」側近を怒鳴るとキラを見て「まさか、手を引くと言うんじゃないだろうね?」
「隠しカメラや盗聴器を仕掛けて私たちを監視しようとされるなんて、考え直す理由に十分ではありませんの?」
冷たく言い返すと、老師は、しまった、という顔をする。
「これで、老師の名声も地に落ちますわね」
「……いくら欲しいのかね?」
「お金で信用は取り戻せませんわ」
老師がヘマをした側近を睨むと、冷や汗をかいて俯く。




