28-1 合流
海は入り江のせいか波は穏やかで、遠浅の海とさざ波が別世界に来たかのように思わせる。
辺りは人影も疎らで、白い砂浜は歩くたびにキュッキュッと音をたて、入り江の真ん中には、南国らしいオープンテラスの店が数件並んで建っていた。
一番手前にあるテラスでは、この店の主人だろうか、端に置いてある椅子に腰掛け、なにやらギターに似た楽器を弾いている。
二人はその店に向かい、木陰になっている椅子に向かい合って腰掛けると、店の奥から初老の女性が出てきて注文を聞きにきた。
「いらっしゃい。何にしますか?」
「そうだな……ここならではの飲み物がいいな」
「ハイよ。ちょうどいいものがあるよ。お連れさんもそれでいいかい?」
「あ、はい」
おばさんは返事を聞くと戻り、カウンターの上に置いてある大きな籠から幾つかの果物を取りだすと、店の奥に入っていく。
「どうした? 何か気になることでもあるのか?」考え込んでいるキラに声を掛け「ドジ踏んだことが気になるのか?」と聞くが、答えない。
「落ち込むなんて、お前らしくないぞ」
やっぱりキラは何も言わない。
「長くやってたら、失敗の一つや二つあるものさ」
「……ねえ、どこに発信機を付けたの?」
「エッ?」意外なことを聞かれて戸惑う。
「どこに発信機を付けたの?」
「それは言いたくないな」
「私のあとをずっと付けてたんでしょう?」
「……まあね」
その時、床のきしむ音がしたので話は中断した。
「ハイよ。お待ちどうさま」
先程のおばさんが、丸い大きなグラスを二人の前に置く。
「ダイナミックだな」
グラスの縁にいろんな果物が刺さっていて、その大きさに驚く。
「うちのオリジナルのジュースだよ」
「そうなんだ。では、いただきます」
太くて首の曲がったストローで一口飲むと「経験したことのない味」複雑な表情をする。
「一口目はちょっと抵抗あると思うけど、二口目から美味しくなるんだよ」と言われてもう一口飲むと「オッ、味が違うぞ」
「お嬢さんも飲んでみな。美味しいよ」口を付けないキラに声を掛けると「アッ、ハイ」飲みはじめると「あら? この味、昨日、果物屋さんで買った、食べ方がわからなかった果物の味だわ」
「おや、そうかい。それで、その果物はどうしたんだい?」
「ここに住んでる人に教えてもらって、ホテルに戻ってジュースにして飲みました」
「どこの果物屋だい? 不親切だね」
「食べ方は教えてもらったんです。わざわざ紙にまで書いてくれたんですけど、意味が理解できなくて」
「それじゃあ教えないのと同じだよ。この果物は皮が硬くて、ジュースにして飲むしかないんだ」
「そうなんですか。でも、美味しいからって勧めてくれたんですよ」
「勧めたことだけは誉めなきゃね。ここでしか取れない果物だから。じゃ、ごゆっくり」
おばさんは入ってきた客のところへ向かった。
「食べ方がわからなくて困った顔をしてたから、奴は声を掛けやすかったんだ。だから、果物屋のオヤジに感謝しないといけないよな」
「見てたの!」
「一部始終」
「そんな早くから私を見付けてたの?」
「まあな」
「変装してたのに」
「最初は機械が故障してるんじゃないかと疑ったよ」




