27 亜熱帯植物園
温室の入り口はガジュマロの木をはさんだ入り口の反対側にあり、ドアの前でかわいい制服を着た女性がパンフレットを渡している。
そのパンフレットをもらって中に入ると「まるでジャングルだな。聞いたことのない鳥の鳴き声がたくさん聞こえる。鳥も放し飼いにしてるのか?」
注意して周りを見ると、カラフルな色をした大小様々な鳥が、亜熱帯特有の変わった木の枝にとまっている。
その中の数羽が飛んできて、キラの肩にとまる。
「人に慣れてるんだな」
先へ進むといろいろな鳥が近寄ってくる。
「熱帯地方に住む鳥はどれも色鮮やかなんだな」ショウの肩や頭にもとまりはじめるので「コラッ! 頭はダメだ!」
「気に入られてるわね」
「お前ら重いぞ!」文句を言いながら先へ進むと「これだけの鳥を放してたら、何もかも食い尽くされてしまうんじゃないか?」
「そんな事になったら植物園じゃなくなってしまうわ。調節してるのよ」
「だろうな。それにしてもお前ら本当に重いぞ。太り過ぎだ。ダイエットしろ」
両腕にもとまっているので相当堪えるだろう。
「あら、この温室はここまでなのね」
通路の正面に扉が見える。
「じゃあ、ここでお別れね」近くの枝に行くと、肩にとまっていた鳥が素直に移動する。
「ほら、お前らも降りろ」鳥たちが移動すると「アーッ、重かった」だるくなった腕をグルグルと回す。
温室は全部で五つあり、開花時期というだけあって、どの温室も様々な花で溢れている。
外へ出ても、服に付いた香りが鼻をくすぐった。
「俺自身が花になった気分」
「近付きたくないわね」
「どういう意味だよ」
「甘い香りで誘って、食べてしまう食虫植物」
「ほう。そんなこと言うなら食べてやろうか?」
「いいえ、遠慮するわ」車に乗り込むと「これからどうするの?」
「何の予定も組んでないけど」
「さっき言ってたコテージには何時から入れるの?」
「午後一時」
「今十時半だから、まだ時間あるのね。行ってもらいたい所があるんだけど」
「どこ?」
「郵便局」
「手紙でも出すのか?」
「小包を出したいのよ」
「わかった。場所を聞いてくるよ」車から降りるとチケット売り場へ引き返す。
キラが郵便局から出てきて車に乗り込むと「まだ時間あるけど、どこか行くか?」
「……そうね。砂浜を歩きたいわ」
「OK」エンジンを掛けて車をだす。
海岸線を走っていると、キラの携帯が鳴った。
『ハイ……ええ、大丈夫です。彼が助けてくれました……ええ、例の彼です。ところで、彼らは……そうですか。よかった。すみません、ドジ踏んでしまって……でも……ハイ、わかりました……今送りました……はい……じゃあ』
電話を切ると「彼らは上手く脱出できたようだな」
「ええ。迎えに行ったメンバーから連絡がきたそうよ」
「アレンの行動を知ってたようだけど」
「一緒に報告がきたと言ってたわ」
「これで、少しは俺の株が上がったかな?」
「グループに取り入るために、私にくっ付いてるの?」
「……半分は」
「あとの半分は?」
「休暇は貰えたのか?」
「……ええ」
「何日?」
「二日」
「一日少ないじゃないか」
「私からは何も言えないわ」
「仕方ないな。とにかく、その二日間は仕事のことを忘れてノンビリするんだな」
「そうはいかないわ。まだ今回の任務が終わってないもの」
「何が残ってるんだよ」
「アレンへの罰よ」
しばらくの間、海岸線を走っていたが、入り江のところに数件のレストランが並んでいるのを見付けると、そこで車を停めた。
降りるとビーチに下りていく。




