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だいろくじゅうさんしゅ いづこより かぜにはこばれ とどきける たよりひとひら いかにかへすや
第六十三首
何処より 風に運ばれ 届きける 便り一片 如何に返すや
桜のしっとりと甘い香りをはらんだ風が、花びらひとつ、わたしの手元へ届けてきた。
いったい、どこのだれからの文だと言うのかしら。
言葉を理解しない風は、届けるだけ届けて、自分の役目は終わりだと言わんばかりに、颯爽と吹き去ってしまうし。
送り主も。
その意図も。
そもそも、宛先がわたしなのかも、わからないのでは。
さて、困ったもの。
わたしはどのような歌を詠み、どんな渡し手に託せばいいのやら。
そっと、一片の便りを唇に当てて。
息を吹きかけて、飛ばしてみる。
そうしたら。
また風がその薄紅をさらって、運んで行った。
まぁ、名前も記さない礼儀知らずの文だったので。
そのまま返してやってくださいな。
わたしは、そんな花びら一枚でなびくほど、安くはないの。
歌がほしいなら、自分で届けにいらっしゃいな。
いづこより かぜにはこばれ とどきける たよりひとひら いかにかへすや




