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一人百首  作者: 奈月遥
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だいろくじっしゅ みちしるべ われのひとふみ ひとふみを きみにおくらむ そのときがため

第六十首

道標 我の一文(一踏み) 一文(一踏み)を 君に贈らむ その時がため


 若輩ながら、大学を卒業するだけの年月を重ねれば、多少は経験を積むわけで。

 部活に関しては、役職を持って、責任と志向からかなりの勉強と学習をしたわ。

 まして、偉大な先輩方から伝えられたこと、また残して頂いた資料を引っ繰り返すことで、創作についての哲学と実践、知識と技量については、自分の言葉で語れる程度にはなるもので。というか、それくらいにならなければ、四十年近く続いた伝統、託された様々なものに申し訳も立たず。

 そして、それを後輩たちに伝え、託すのも、また先輩となった者の役目で。

 高校を出たばかりの、幼い考えから、哲学を芽吹かせることの難しさ。

 知識ばかりでは、言葉と情報に踊らされる。

言ってみれば、重い刀を振って、振り回されるよう。

 しかと、振り切るには、体を作らなければならない。

 それと同じく、心を作ってもらうことは、苦心する。

 言葉の上辺だけをさらわれても、困るもの。

 やはり所作を見て、人の考えを読み取ることほど、心を伝え鍛えるのに適したことはない。

 けれど、卒業したのなら、そんなこともできず。

 せめて、わたしが経験した人生の一踏み、一踏みを。

 この一文、一文、言葉に変えて、贈りましょう。

 君が困った時に手にとって読めるように。

 真に願うのは、その言葉の文底に託した祈りを、君が胸に灯すことを。


みちしるべ われのひとふみ ひとふみを きみにおくらむ そのときがため


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