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一人百首  作者: 奈月遥
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だいごじっしゅ いとしこの むねひびきたる おもひをば ことばかさねて たとふるべきや

第五十首

愛し此の(愛し子の) 胸響きたる 想ひをば 言葉重ねて 例ふるべきや


 愛する人と、愛し合ってできた、愛おしい我が子を想うと。

 これまでの幸せと。

 これからの幸せと。

 いっぺんに押し寄せてきて、胸がいっぱいになる。

 愛しさを訴えてくるこの胸に詰まった鼓動を。

 愛おしいこの子がわたしの胎内から伝えてくれる胸に仕舞われた鼓動を。

 その響きの限りなさを。

 いったいどんな言葉で例えるというの。

 いったいどんな言葉なら例えられるというの。

 ねぇ、わかるかしら。

 わたしは今、とっても幸せよ。

 あなたたちがいてくれて。

 生まれようとしてくれて。

 ゆっくりと、もうわたしを母と慕ってくれて。

 愛を受け止めてくれて。

 光が生命に奏でられる。

 なんて美しい調べ。

 終わることのないもの。

 例え、この内の誰かが死を迎えても。

 わたしの詩はまた記憶を伴って蘇る。

 死を悼み、詩を愛しむ。

 いつか、あなたたちが眠りに就いたから。

 こうしてこの世で巡り逢えた。

 いつか別れる日が来ても。

 死の底で、生命が織り成される時にまた出逢えるでしょう。

 言葉に尽くしても、それは空虚な言い訳だと思うかしら。

 なら、あなたに伝わるように、抱きしめましょう。

 空虚に思える言葉という鞘に、想いという中身を納めるのは、他ならないわたしとあなたの、一人なのだから。

 出逢いを喜びましょう。

 別れの先に約束された出逢いを。

 その時にまた、昔話ができるように。

 たくさん生きて。

 たくさんいっしょにいて。

 たくさん愛し合いましょう。

 もうすぐ、もうすぐ。

 

いとしこの むねひびきたるおもひをば ことばかさねて たとふるべきや


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