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一人百首  作者: 奈月遥
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だいしじゅうごしゅ としごとに はなのへりめる さくらにて いつかしりえず ふゆのをわりを

第四十五首

年毎に 花の減りめる 桜にて 何時か知り得ず 冬の終わりを


 我が家の庭先にある桜も、もう随分と昔に植えられたもので。

 わたしと同じく、年老いてしまってる。

 そもそも、染井吉野は病に弱く。

 年嵩になって抵抗力が弱まれば、さらに病に侵されていく。

 桜の病は、花に響く。

 はらり、はらりと散る花も、一年に一片、二年に二輪、三輪、さらには幾房と。失われては、枝は細くなり、頼りない姿に変貌していく。

 誰にも知られないこの家で、ひっそりと暮らすわたしには、人づてに世の巡りを聞くことも出来ず。

 桜よ。

 あなたに花がつかなくなってしまったら。

 わたしは、独り寂しく、寒さに耐える冬が終わり。

 庭に来る小鳥たちのさえずりを余生の楽しみとする春の訪れを知ることもなくなってしまって。

 それでは、わたしは独り身の寒さを耐えられるだろうか。


としごとに はなのへりめる さくらにて いつかしりえず ふゆのをわりを


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