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だいさんじゅういっしゅ あけなずむ ひかりにほふを みつつとも ねすごしぬとは あらざらましを
第三十一首
明けなずむ 光匂ふを 見つつとも 寝過ごしぬとは あらざわましを
毎週土曜日の朝五時半。
新聞配達のために、眠い目をこすりながら、早起き。
空が明るく。
オーロラみたいに、橙明がにじんでる。
おかしいな。
ねぼうしてないはずだよ。いつもと同じ時間。
こんなに明るくはなかったと思うのに。
はたと、首をかしげて、かしげるついでにゆすって記憶をこぼしてみる。
先週は、雨。
その前は、雪で道がないから、いつもより遅く出たんだ。
そのまた前も雪の降る中で、傘に身を縮こませながら、配ってた。
その前は暗かった。
三週間、わたしは朝の空を見てなかったんだ。
三週間あれば、確かに、明るくなるのも早くなるはずだ。
気分は少し、タイムトラベラー。
そうか、そうか。
わたしがねぼうしたわけじゃなかったんだ。
……よかった、かんちがいとかじゃなくて。
あけなずむ ひかりにほふを みつつとも ねすごしぬとは あらざらましを




