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だいさんじゅうにしゅ しゅをさして かほりたちたる うめのはな いつにかこひせし われがみぬまに
第三十二首
朱を差して 香り立ちたる 梅の花 何時にか恋せし 吾が見ぬ間に
てってこ、てってこ。
いつもの通学路。駅までの道。
歩きながら、梅の香りが鼻をくすぐって。
昨日までは、ちっとも感じなかったのに。
辺りを見回してみる。
よくわからなくて。
今度は、香りを頼りにして、探してみたら。
道の横、誰かのお宅、その庭先に梅の木が。
ひとつ、ふたつと、紅梅が色香を匂わせてた。
小さな乙女が花開き、女らしさを醸し出すということは。
その理由なんて、ひとつしかないよね。
恋をしたのね。
頬を染めて、想い人を誘う香りを立てて。
なんて健気なこと。
それにしても、いつもわたしはこの道を通っているのに。
いつの間に、どこの殿方に恋をしたのかしら。
黙っていてもわかるのに、それでも話さないなんて、水くさいこと。
しゅをさして かほりたちたる うめのはな いつにかこひせし われがみぬまに




