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だいにじゅうはっしゅ しらつきの かがみうつるは きみのかげ みあげてみれば おつるしづくか
第二十八首
白月の 鏡映るは 君の影 見上げて見れば 落つる滴か
真円を描き、真白の光を満たす望月。
まるでその光で全てを見透かす鏡のよう。
あの頃は、よくあなたと眺めたものね。
雲一つない漆黒の夜空に浮かぶ、曇りなく輝くこんな月を。
月のように、曇ることなんてないと思っていたのだけれど。
終わってみれば、そう思っていたのは、わたしだけだったみたい。
こんなふうに、人の心の奥底まで照らす月の前だと。
どうにか気丈に振る舞っているフリも、簡単に明かされてしまう。
あぁ、やめてほしいのだけど。
雨は嫌いだけど、今日ばかりは、あの月を雨音の向こうに消してほしい。
しらつきの かがみうつるは きみのかげ みあげてみれば おつるしづくか
そう思って、月を見上げれば。
思いが届いたのか。
想いが溢れたのか。
目尻から、滴がひとつ伝って落ちた。




