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一人百首  作者: 奈月遥
28/103

だいにじゅうしちしゅ めうぜうよ ひごとつきより わかれゆく みちたるかれを さにもきらふか

第二十七首

明星よ 日ごと月より 別れゆく 満ちたる彼を さにも嫌ふか


 あのね、あのね。ある日の夕方のことなんだけど。

 金星がきれいだったの。宵の明星ってやつね。ぴかぴかしてて。

 そのすぐそばにね、まだ細いお月様がいたの。ほっそりとしたペーパームーンは、わたしの生まれた日と同じ姿なんだって。新月を一日目にしたら、二日目の月。しゅっとして、スタイルいいんだよ。羨ましいでしょ。

 つまりね。金星とお月様が仲よく寄り添って、お空にいたの。いい感じの夫婦だね。

 それがすごく印象に残っちゃって。

 次の日も、お月様と金星を探したんだ。やっぱり、仲睦まじく寄り添ってたよ。

 三日月に星なんて、国旗みたいで風流ね。

 でも、なんだか二人が少し距離を置いてるように見えるのは、気のせいかしら。

 このときに気付くべきでした。いえいえ、気付くというより、気に留めるべきだったと言うべきでしょうか。

 この現象を、金星と月の大接近と報じていた新聞の記事を。

 ええ、ええ。これは接近していたのです。

 わたしは、次の日も、その次の日も、夕方になると金星とお月様を探したの。

 月齢を重ねて光が満ちていくお月様はすぐに見つかり。

 その後に、きょろきょろと金星を見つけ出さないといけなくなって。

 だんだんと、お月様を見付けてから、金星を視界に入れるまでの時間が長くなっていき。

 ついには、金星が見えるのは、月が昇るのにだいぶ遅れるようになったのです。

 そのとき、ふと感じたのは。

 夫は身を立て地位を得ていき、家にいる時間が減っていく。

 妻は家事に子育てに忙しく、夫から心が離れていく。

 そんな……そんな、かなしい現実でした。


めうぜうよ ひごとつきより わかれゆく みちたるかれを さにもきらふか


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