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一人百首  作者: 奈月遥
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だいにじゅうごしゅ よるなみは つきにひかれて うちかへり そらへゆくとも あめとふりくる

第二十五首

夜波は(寄る波は) 月に惹かれて(引かれて) 内返り(打ち返り) 空へ行くとも 雨と降り来る


 夜の海が寄せる漣は、ざわめく昼間よりも静かに。

 けれど、むしろ心に残る律動。

 なにかに似てる。いつかに似てる。だれかに似てる。

 耳に残したいと思う。穏やかな鼓動。安心をくれる。

 だいすきなあなたの鼓動。

 あなたとひっついてる時の、わたしの鼓動。

 だいすきの律動。

 愛してる旋律。

 海はきっと、遠く離れた月に恋をした。

 月に引かれて、恋焦がれて、波を寄せようとしてる。

 それとも、月をその身に映すだけで満足して、抱きしめてるの。

 海はきっと、遠く離れた月に恋をした。

 けれど、海の波は、その鼓動は、想いは、月に触れられない。

 届かなくて、悲しくて、また波を引き寄せる。深く深く、自分の心の底までしまいこんでしまう。

 そして自分を責めるように押し寄せるのかも。

 せめて、せめて。

 月の浮かぶ空に、想いを散らそう。

 海は自分の命を空に託した。

 海は、自分自身を、つまりは自分を象る水を、空に打ち上げた。

 でも、でも、月には届かない。

 海から解き放たれた想いは、結局は、雲になって。

 雨となって地面に落ちる。

 涙みたいに。

 滴みたいに。


よるなみは つきにひかれて うちかへり そらへゆくとも あめとふりくる


 悲しくて、こぼれたのか。

 嬉しくて、こぼれたのか。

 届いたのか、届かなかったのか。

 受け入れられたのか、拒まれたのか。

 海は波打つ。

 月に惹かれて。

 いつまでも、いつまでも。

 恋が止むことはない。

 愛が途切れることはない。

 その愛が、涸れた大地を潤すの。


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