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4,部活動見学その二 ――a years ago――

 


「部長、副部長、及び三年生の先輩方に変わって文芸部の説明を務めることになった二年二組の高崎俊介だ」



 彼の先輩は、どこぞの猛獣の如く生き生きとして笑っていた。その笑い方が大胆不敵で、何故か身震いしてしまう。

「新入生諸君! 入学おめでとう。まずは、栗高の上級生として君達の入学を歓迎する。」

 高崎はお決まりの文句を幾つか並べ、話を続ける。活動方針やら活動日程やら、わりかし退屈な話だ。

「ところで、この中で文芸部入部希望の奴はいるか? 正直に頼む」

 ポツリ、ポツリと手が上がり、視認した高崎が顔を綻ばせた。

「初日に四人とは嬉しい誤算だな。じゃあ、入部希望のそこの君に聞こうか」

 高崎は眼鏡をかけた少年Aを指差した。

「今までのは文芸部の表面だ。本来我が文芸部の目標とはなんだと思う?」

「え……っと、よい作品をつくることでしょうか」

 高崎は不敵に笑みを溢すだけでなにも答えない。そして、もう一人指名して尋ねた。

「コンクールに受賞することだと思います」

 ほほぉ。ニタリと肉食獣じみた笑みで高崎は呟いた。

「分かってないな、諸君。よい作品をつくることは当たり前、コンクールは通過点。もっと根本的で将来的な話だ」

「じゃあ、先輩が思う目標とはなんですか?」

 考えを否定された新入生がムッとして言い返すと、不機嫌になるどころかむしろ嬉々として語り出した。

「よくぞ聞いてくれた! 我々の目標は新しいエンターテイメントをつくることにある!」

「「「「…………は?」」」」

 びっくりするほど綺麗に揃った新入生の溢した呟き。高崎がそれを気に止めたようすはない。

「最近の小説業界は腐ってる! 形式ばった、格式ばった作品ばかりだ」

「我々新しい世代が、新しい時代をつくらないといけない」

「独自性が足りないんだ! 今のご時世。いまだかつてない誰も思い付かないような作品が必要なんだ

 みたいな演説をしていたのだと思う、多分。何せ、この演説とおぼしき説明会は一時間も続き、雅は意識を飛ばしていたから、記憶が確かでないのだ。

 そして、ふと気が付くと一方通行な演説は終了し、周囲にいたはずの入部希望者はひとりたりともいなかった。そして、自分はどうやら逃げ損なったのだとも理解した。

「あれ? 誰もいなくなってやがる。……っと、一人いたか」

 抜き足差し足で部室から退散しようとしたところを、熱のこもった演説から我に戻った高崎に捕まった。

「他の連中は時代の流れについていけなかったようだが、一人でも理解者がいて、よかったよ」

 ずりずりと引き摺られて机の前。眼前には入部届。そして、ボールペンを握らされた。

「勿論、入部してくれるよな?」

 今すぐYahoo知恵袋で検索したい。眼前に笑顔でプレッシャーをかけている先輩に抗う術を。結局雅は、断りきることができずに署名してしまったのである。

 受け取った高崎は入部届を見て、目を丸くさせた。

「松山雅って、松山貴文先輩の妹さん?」

「あ、はぁ」

 まぁ、バレないはずがないとは思っていた。珍しい名字とは思わないが、ありふれたというほどでもない。貴文も妹が入学することくらい話していたのかもしれない。だから、それに関しては別段気にしないのだが……、輝かんばかりの表情の高崎に、どう反応を返そうか困った。

「俺松山先輩に憧れててさー。いやー、先輩は元気そうか? あの人の作品はすごいと思う、本当に。いやー、またお会いしたいなぁ」

 そして、何故か自らの兄の武勇伝を延々と聞かされるはめになった。口数少ない兄なので、学園生活でのことをあまり口にしなかった。よって、色々凄まじい秘話を聞いてしまったが、心の奥底に仕舞っておくことにした。中々にカオスな青春時代であったらしい。




 そして、貴文を憧れと明言しておきながら作風が兄と全然違うのを知ったのはもう少しあとの話だ。

前後半に分けようとおもいましたが、あと一話続きます。

短くてすみません……

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