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2,部活動発表打ち合わせ

 新歓はつつがなく終わったらしい。らしい、というのは文芸部は三年生のみでとりおこなったからである。普段文芸誌は300円程度で販売を行っているが、一年生だけ特別に4月号を無料で配布している。それを配布し、適当に活動報告をし、終わらせたそうだ。文芸誌は渡さない方がよかった気がするが、後の祭である。



「さて、部活動発表だ」

 高崎が唐突に切り出した。着席しているのは、部長を除いた五人。安藤は基本終令のときしか顔を出さない。それまで何をしているかは、謎だ。それで部長がちゃんと、勤まっているのかも、謎だ。ぶっちゃけ、部長決めのときは消去法だったし、やる気があるかといわれるとそうでもないだろう。消去法で半幽霊部員が部長に選ばれるとはなんとも悲しい部活である。

「部活動発表……ですか?」

「まさか、参加するんですか!?」

 新入生対象部活動発表会。オリエンテーションとは違う名目で、新入部員の獲得のための企画である。オリエンテーションは各部活持ち時間3分厳守のため、 大抵部活の説明だけで終わってしまう。部活動の魅力を伝えるためにと、二日間にわけて行われるオリエンテーションの拡大版だ。持ち時間10分~15分、参加は自由。文芸部で10分とかもたない、ということで、今まで不参加を貫いていた代物である。

「本来文芸部が参加するには不向きな企画であるが、そう悠長なことを言ってられない事情が我々にはある」

 高崎は二年生の面々を順々に指差していく。

「お前ら、部活必要最低人数って知ってるか」

「「「五人」」」

「ざっつらいと。で、俺らが卒業したら、お前ら何人だ?」

「三人です」

 橘一人がめんどくさそうに頬杖をついて言うと、高崎は机を叩いた。

「そう! 三人だ! だから、今年度二人以上の部員を獲得しなければこの文芸部は来年廃部と相成るのだ。

お前ら危機感感じてるのか!? 俺という優秀な先輩をもってしても、三人しか集まらなかったというのに」

 妙に熱の入った高崎に四人揃って白けた視線を送った。

 高崎のひとつ上の代、つまり去年の卒業生は8人いた。また、高崎の代も当初は6人であった。しかし、トラブルメーカーが入部したことにより、六人のうち半分が退部した。当時の二、三年生は抜けることはなかったが(そもそもブレーキ係がいなくて、アクセル要員ばかりいたことも原因だ)、結構高崎の代も新入生獲得は切羽つまってたはずだ。それにもかかわらず、三人しか集まらなかったのは、色々原因(例えば高崎とか例えば高崎とか例えば高崎とか) あるが、主な原因はやはり高崎だ。

 ろくな部活動紹介ではなかった。アピールポイントはあんたのモットーではないと、今なら突っ込みたい。

 要するに、優秀な先輩さえしゃしゃりでなければ、新入部員の必要最低人数くらい軽く獲得できるはずだ。

「だから、今年は新しい試みである部活動発表をする」

 そう、優秀な先輩もとい高崎がしゃしゃりでなければ。そして。それは十中八九叶わない。

「部活動発表なんて我々文芸部が何をするんですか?吹部や合唱部じゃないんですから」

 雅が、あきれたように溜め息をつくと、高崎はニヒルな笑みを浮かべた。よくぞきいてくれた、と言わんばかりである。

「ははははははは。今年栗高文芸部は演劇を発表する!」

「「「「…………は?」」」」

 多分高崎以外の全員がフリーズしたと思う。大口を開けて間抜け面で。はっと我に戻って、高崎を見ると、一番先に冷静さを取り戻した千里がこめかみに手を当てながら、問うた。

「ねぇ、高崎君。部活動発表には、演劇部も参加するはずよね? それで、私達のなまか演劇なんか披露したら笑い者じゃないの。それに、時間は限られてるし、機材も人手も足りないし。無茶苦茶よ」

「篠原、俺を侮るなよ?」

 得意気な顔をした高崎が胸ポケットから一枚の折り畳んだ紙を取り出した。高崎が机の上に広げると、皆で一心にその紙を見つめた。

 上から見ると、『部活動発表当日スケジュール』と記してある。そして、最終日の最後の番に、我らが文芸部の名がしっかり載っていた。

「もう参加届けは提出済みということですね……」

「ただ提出しただけだと思うなよ。順番からこだわって、実行委員会を影で操ってきたんだからな」

「……は!?」

 それから高崎は自分の手柄を延々と語り始めた。ミュージカルをやる演劇部を文芸部の前におくことで、ライトやマイクなどの準備時間を短縮。また、役者以外の照明や音響などの役職の人材を演劇部から確保。

 遺憾なく先輩としての頼もしさを発揮してくれたようだが、発揮する場所は確実に間違っていたとしか言いようがない。

「……大体文芸部らしさなんて欠片もないじゃない」

 千里は言ったはいいが、半ば諦め状態である。

「安心しろ。脚本は我らが文芸部が担当する。入学をテーマにした10分程度の短編だ。3日以内に用意するぞ」

 ほらきたー! 悪い方向にしか物事が進まない。というか、高崎が乗り気だと大抵悪い方向に進む。文芸部が用意する脚本なんてろくでもないものばかりだ。とりあえず、今年のまともな新入部員獲得は諦めないといけないことは確定した。この企画で集まる人材なんて物好きでしかないだろうから。





 



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