051
『あなた方では、私に傷一つつけられません』
無数の魔法をぶつけられた敵の一人は、ほぼ無傷の状態で出てきた。
「おいおい…」
「マジかよ…」
「勝てんのか、こんな奴に…?」
魔術士組に動揺がはしる。
が
「……『無慈悲な女神の氷息』『無慈悲の白十字』『灼熱の太陽』『跳ね遊ぶ雷狼』『貪欲の餓虎』『吹き荒れる吹雪』『覇喰らいの獅子』『支配:搾取』」
氷花の大魔法の八連撃に別の意味で動揺がはしる。
『わ、私が死のうとも彼等が必ずや悲願を―――』
「……あっそ」
その時の様子を見ていたプレイヤーは、後に
『あれが魔術士だとするなら俺は魔術士をやめる』
とまで言ったとか言わないとかww。
『ほらほらぁ、どうしたんですかぁ?守ってばっかりでは勝てませんよぉ?』
片手斧と――どこからとりだしたのか――十字架で交互に攻撃してくる。
「勝たなくてもいいんすよ」
それを壁盾と片手剣で防ぎ続ける。
後ろでは何か大魔法が次々と炸裂している音がする。
気にしたら負けっす、自分!!
見たら自分の今までの常識が崩れそうな予感がひしひしとする。
その前に後ろを向く余裕があるはずもないが。
『勝たなきゃ負けですよぉ?』
「勝たなくても負けないっすよ。俺は」
それを自分は少し前に知った。
「勝手に皆が勝っちゃうっすから」
「言い方に気を付けろよ、ガキ」
ふと耳元でいきなり龍の咆哮のような銃声が響いた。
「うがっ!!」
思わず耳を塞ぐ。
『何ですかぁ、あなたは?』
そう疑問を口にした敵が真横に吹っ飛んだ。
「そう思われていたなら、心外です」
「言葉のあやっすよ、ハハ…」
『ふざけてますねぇ、ホント…』
「うっさい、邪魔」
立ち上がろうとしていた敵に、もう一人の敵が飛んでいく。
「相変わらず大雑把だな、お前は」
「黙らっしゃい」
そこには、間違いなくサーバ最強の女がいた。




