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第2話『儀式の誕生』

夜。


 ベッドの上で、あかりは膝を抱えていた。


 隣には、小学生の頃からの相棒——ぬいぐるみの「ぽんぽこ」がいる。丸い目と垂れた耳を持つ、くたびれた茶色のたぬきのぬいぐるみ。


 何度も洗濯されて毛並みはすっかりへたっているが、あかりにとっては世界で一番安心できる存在だった。


「ぽんぽこ、聞いて」


 あかりはぬいぐるみを抱き上げ、額を押しつけた。


「今日ね、すごく恥ずかしかった。みんなに見られて、逃げたくて……でもね、不思議なの。


恥ずかしさの真ん中に立ったら、その向こう側に


——なんだろう、自由みたいなものがあったの」


 ぽんぽこは黙っていた。当然だ。でも、その沈黙が心地よかった。


 あかりは目を閉じて、今日の感覚を思い出した。


 風が肌を撫でた瞬間の、あの奇妙な解放感。


恥ずかしさが頂点に達した後に訪れた、澄んだ集中力。


視線の中で自分を晒すことで、むしろ自分自身の輪郭がはっきりと見えた感覚。


 ——これを、もっと自分のものにしたい。


 あかりはベッドから立ち上がった。


 部屋の真ん中で、目を閉じる。


 体を左右にゆっくり揺らしてみた。リズムは自然と生まれた——心臓の鼓動に合わせるような、ゆったりとした波。


両手でお腹を軽く叩く。ぽん、ぽん、と。ぽんぽこの名前みたいな音。


 そして深くしゃがみ込む。膝を抱え、顔を伏せる。


 恥ずかしさを全部、体の中心に集める。


 顔を上げた時——自然と、照れ笑いが浮かんでいた。


 恥ずかしい。でも、怖くない。


「これだ」


 あかりはぽんぽこを見た。


「これが私の——恥ずかしさを溶かすダンス。特別な儀式」


 何度か繰り返した。体を揺らし、お腹を叩き、しゃがんで、照れ笑い。


 やるたびに、胸の奥の棘が少しずつ丸くなっていく気がした。


 孤独だった教室の記憶、輪に入れなかった放課後、「女のくせに」と笑われた声——それらが、ゆっくりと、温かい水の中に溶けていく。


 あかりはぽんぽこを抱きしめた。


「明日、こうちゃんに見せるね」


---------


翌朝。


 河川敷の土手に、朝靄が薄く漂っていた。


 あかりはこうすけを呼び出していた。


 彼は少し眠そうな目でスケッチブックを脇に抱え、土手の草の上に座っている。


 川面を渡る風が冷たく、空気はまだ夜の名残を含んでいた。


あかりはこうすけの正面に立った。


グラウンドで部員たちの前に立った時とは違う緊張。


 これは——自分の一番深いところを、一番大切な人に見せる怖さだ。


「こうちゃん、見てて……。昨日、思いついたの。すごく恥ずかしいけど、これで恥ずかしさを克服できる気がする」


制服の上着とブラウスを脱ぎ、ブラジャーを外した。スカートも脱いでショーツ一枚になった。


小ぶりな胸が露わになり、ピンク色の乳首が朝の空気に触れて硬くなった。


こうすけは目を見開いた。けれど視線を逸らさなかった。逸らさないことが、彼の誠実さだった。


「綺麗だよ、あかり。恥ずかしがらないで」


あかりは胸をプルプルと縦横無尽に激しく揺らし、お腹をポンポンと叩いた。


「こうちゃん、おっぱいプルプルぽんぽこダンスだよ。これ、たぬきさんみたいで恥ずかしい……」


M字開脚で深くしゃがみ込み、胸をゆっくりプルンプルンと揺らしながら、お腹を両手でポンポン叩いた。


最後に「恥ずかしすぎるー!」と照れ笑いした。


こうすけは驚き、一瞬躊躇った。


しかし、少しの間の後に微笑んで言った。


「あかり……可愛いよ。自信を持って。俺はいつもそばにいるから」


と伝えた。


その瞬間、恥ずかしさが温かな解放感に変わった。


「ありがとう、こうちゃん。次の練習、この格好でやってみる!」


部室の外では、春風が二人の未来を優しく運んでいた。


あかりの挑戦は、まだ始まったばかりだった。

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