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28,幸せな日

最終話になります。


 ハリス様の結婚式に出てすぐだが次は私とエルシーの結婚式がある。招待するのは学生時代の友人達。身内だけの小さな結婚式にしたいという私の希望通りガーデンパーティー以外はこぢんまりとした式になる。ガーデンパーティーではそれなりに付き合いのある他の貴族を呼ぶことになった。



 今日は王都にあるエイ兄さまの屋敷でアリア含む侍女達に着せ替え人形の如くウエディングドレスを着せられている。

 私は少しガタイが良く同年代の人以下の胸板なので肩周りが目立たないようなデザインにしてもらった。ドレスカラーはエルシーの髪色と同じブラウン。


 童顔に合わせても大人っぽさを演出してくれる都合の良い色であり、好きな人の色である。男性側の衣装ベースは基本的に白か黒。

 エルシーが選んだのは黒だった。曰く、白はもう飽きた、とのこと。確かに王族は白を着ることが多い。まあ19年も着たらそら飽きもくるか。


 着せて貰っている時の侍女達の視線が痛い。痛すぎる。言いたいことはわかってる。体の凹凸が少ない、と。


 成人したら胸の部分を強調するオフショルダーのドレスを着るのが普通なので私の和服向きの体には非常に似合わない。後ろから見たら大人っぽいが横から見たら残念なことになっている。子供が一生懸命背伸びした結果みたいな。



 別に胸のサイズについて気にしたことはないし同じ年の女性貴族の体を見ても何も思わない。が、こうしてみるともう少し女性らしいところがあってもよかったのではと思う。

 ある分にはサラシなんかで潰せば良い。無いものはもうどうしようもない。だって無いし。



 だけどエルシーがドレスを着た私を見て蕩けるような笑顔を見せてくれたのでそんな私の思いは早々にぶっ飛んだ。エルシーが喜んでくれるならなんでも良いやと諦める。

 体のつくりなんて努力ではどうにもならないのでね。シルス様とアンナ様が歩いたところと同じ場所をゆっくり歩く。



 初めは両側に開いた扉から父さまにエスコートしてもらって、エルシーは単身で。真ん中で父さまの手からエルシーの手に渡る。剣ダコが増えた少し硬い手で包み込まれる。

 こうやって見てみると私の手って小さいなあとしみじみ思う。並んでみると身長も違う。レイ様やパトリック様には劣るがエルシーの身長も180近くある。

 

 パトリック様とレイ様は190越え、そして私は170いくかいかないかくらい。大柄な方だがあまり目立たないほどの差ができた。王族組で背が低いのはアクア様とシルス様。この2人は私より小柄だ。




 絨毯の上を進み、誓いの言葉を述べる。あれだ、病める時も健やかなるときもというやつ。


 「では、誓いのキスを」


 言われるがままにエルシーと向き合う。国宝級に麗しい顔がゆっくり近付いてくる。緊張で少し震える私の頬に手を当てられたのを感じた。


 エルシーも少し震えている。右頬を完全に隠されて触れるだけの口付けをする。右頬を隠したのはキスをした時の私の顔を参列者に見せたくなかったからだろう。

 自惚れているとかそういうのじゃなくて、式直前までどうすれば私の顔を見せずに済むかというのを永遠に考えていたのを知っているから。正直あの気迫はちょっと怖かった。



 そして結婚誓約書にサインを書く。これで私達は正式な夫婦となる。

 「では、精霊王並びに竜王の名の元、エリーゼ・ガーナメントとエルシー・ウォルフランを正式な夫婦と認める」




 突然、頭上からパンと乾いた音が鳴った。驚いて見上げるとそこにはヒスイとキースがクラッカーモドキを持って浮いていた。クラッカーからは花びらが降ってくる。自然に口角が上がる。


 参列者の驚愕の声も聞こえる。わかる。私も驚いている。私達の前ではよく姿を見せる2人は一般の貴族市民の前には一度も現れていない。それがどうだろうか。王族でもない一貴族の結婚式にいきなり現れて満面の笑みでクラッカーを鳴らすなんて誰が想像できるか。



 「いえーい!結婚祝いだよー」

 「加護の重ねがけだ」


 一軍男子感があるテンションのキースに堅物感があるヒスイ。しかもキースはいつもの格好だがヒスイはスーツに眼鏡。堅物感があるどころか顔立ちも相まって堅物にしか見えない。



 頭の上をキラキラ光る何かが舞っている。加護が可視化されてる。誰かが拍手を上げた。音のする方を見ると、シルス様とアンナ様だ。そんな国のトップに感化されるように、拍手がチャペルを包み込んだ。



 「まさかのスタオベ…?」

 結婚式でスタオベなんて聞いたことない。が、悪い気はしないし寧ろ嬉しい。




 私とエルシーは顔を見合わせて笑い合った。

























 5年後。


 私とエルシーは並んで辺境伯邸の庭に置いてあるベンチに腰掛けていた。視線の先には2人の子供。長女のエアマイアと長男のエルヴィン。双子だったため時間はかかったが通常の半分以下の痛みしか感じなかった。

 通常というのは、アンナ様など出産経験のある親しい人達の体験談に基づいている。私は渋ったが、エルシーが出産予定日がわかる前から土下座せんばかりの勢いで連日頼み込んできたので結局折れた。



 その時は丁度エイ兄さまが遊びに来ていたのでエルシーについてくれた。後から聞いたことだがその時のエルシーの苦しみようには恐怖を感じたそうだ。

 

 エイ兄さまは男で、子供を産んでもらう立場の人間。半分の痛みですら相当な苦痛を味わうと知った今、子供を作ること自体に抵抗を示すかと思いきや。あっさり子供を作った。


 自分は上手く痛みを肩代わりできないからせめて妊娠中は楽をさせられるようにと策を講じ、義姉はそれに対して「惚れ直した」とうっとりしていた。因みにエイ兄さまの奥さん、私の義姉はミスコンに出ていたローズハルト伯爵家の次女、ライラ様だ。今はライラ・ガーナメント伯爵夫人として2人目を妊娠中だ。



 「マイ、ヴィン」

 エルシーが愛称を呼ぶ。それだけで体術稽古をつけてもらっていた2人はトテテテテと走り寄ってくる。これから4人で領地を見に行く。

 やはり百聞は一見に如かず。口で長々と説明するよりも見た方が実感が湧きやすいので。自分はここの人達を守らないといけないのだという実感はこうやって見て話して初めてわかる。これ体験談。



 領主の顔、次期領主の顔を見たことがない領民がいないようにというのが元領主である父さまのモットー。

 事情があって王都の学園に入学できない子供向けに建てられた学校がちゃんと機能しているか、領内の治安は悪くないか、引き取られた元孤児と里親の関係は良いかなど、確認して周る。







 領民の友達に呼ばれて走る我が子を見て笑った。今日もこの国は平和だ。






今回の登場人物


・エリーゼ・ガーナメント(16→21歳)

・エルシー・ガーナメント(19→24歳)

・エリオット・ガーナメント(19→24歳)

・シルス・ウォルフラン(26→31歳)

・アンナ・ウォルフラン(26→31歳)

・エアマイア・ガーナメント(4歳)

・エルヴィン・ガーナメント(4歳)

・ヒスイ

・キース

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