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15,学園祭


 ついに、入学してから初めての学校行事、学園祭が始まった。朝早くから王都から出店達がやって来て、各々キープしておいたであろう区画にいそいそと商品を広げ出す。



 出店と言っても食品だけでなく、決して高価ではないが宝石の類なんかも売られるようだ。

 普段は貴族向けに装飾品を作っているお店も学園祭の当日のみ、平民でも手を出せるくらいの価格で販売する、と。お店側には学園側からお金が支給されるので余程のことでなければ赤字にはならないだろう。



 学園祭の最後、ミスコン、ミスターコンの後はダンスパーティーがある。毎年買った装飾具を着けて踊る人も多い。平民もここで踊れるよう、全学科でダンスは必修。

 ファーストダンスは大体授業のペアでやったりも。騎士科は女子が私しか居ないので女性パートを踊れる人もしばしば。ハリス様とかが良い例だ。男性パートのイナ様やレイ様に振り回されてヘロヘロになっているのはもう日常。




 リスト殿下にとってこのダンス形態はあまり馴染みの無いものらしかったので私が男性パートを踊り、「これが普通だ」と体に教え込んで差し上げた。目標は、ターゲットを逸らすこと。新たな扉を開いてもらうことだ。その第一歩がこれ。大分力技だけど。



 始めは不服そうな顔をしていたリスト殿下だが私が何度も教室で腰砕けにしたからか、今では遠巻きに見るだけで近付いてくることは減った。



 ただ、その代償に、シルス様にはドン引かれた。煩わしいが哀れな男として認識は改まったそう。私も少しリスト殿下には同情する。私を狙ったのが運の尽き。徹底的に躾けたくなる。自分はもう二度と普通の男には戻れない。

 そんな風に思ってくれたら私の仕返しは終了。澄ました瞳の奥が絶望に染まる瞬間を見せてくれ。


 と、放送禁止クラスの妄想をしているうちにその他の生徒も続々と登校してきた。


 学園祭まで残り2時間。騎士科の訓練場から魔法実習棟の教室に戻り、最後の仕上げをする。美形揃いではあるが、イトが化粧で更にお洒落にしてくれた。少し肌の色味や唇を整えるだけで全然印象が違って見える。やっぱりイトは凄い。



 私達女性陣も顔の印象に合う化粧をしてもらった。指先まで。私達は当然、大歓喜。男性陣は眼福だし女性陣は可愛いし。

 ホワホワしていると、不意に顔を覗き込まれた。私が萌えに悶えている間にエルシーが目の前まで来ていたようだ。



 「その髪飾り、誰から貰った?」

 化粧と同時に付けてもらった髪飾りを指差して若干眉を顰めるエルシー。

 〈ヒイロだよ。私の精霊の。エルシーの瞳の色に似てるねってくれたの〉


 少しぶっきらぼうに、お礼を言ったら照れくさそうにしていたヒイロを思い出す。

 「精霊から貰ったなら僕があげたものも受け取ってくれるよね?」



 エルシーの目が据わってる。精霊相手に嫉妬している。可愛いと嫉妬しても可愛いのか。

 〈勿論、受け取るよ〉


 私の答えは一択だ。受け取る以外の選択肢などあるわけない。何の躊躇いもなく頷いた私を見てエルシーが取り出したのはピアッサー。ファーストピアスが内蔵されていて、貴族の中でも人気のあるものだ。 



 〈着けるの?ピアス〉 

 「ファーストピアスまだ着けてないから僕が選んだのまだ着けれないけど」

 体に穴を開けることになるので少し恐怖はあるが、エルシーからのピアスを着けてみたい気持ちもある。



 深呼吸をして腹を括る。


 〈自分で着けるの怖いからエルシーが着けて〉

 耳にかかっていた髪をよけてエルシーに向ける。

 「うん」


 嬉しいを隠そうともせず、エルシーは私の耳に触れた。息が当たって少しくすぐったい。暫くすると一瞬の鋭い痛みと共に、差し出された鏡を見ると、そこに映る自分の耳には銀色のファーストピアスが光っていた。



 「平気?」

 〈ん、思ったより痛かったけど平気だよ。今度一緒に着けよ?〉

 私が言うとコクコクと縦に首を振られた。これが終われば私は緑、エルシーには金のピアスが光ることになる。




 「はい、イチャイチャタイム終了〜!こっからは学園祭の準備だよ!」


 危うく2人の世界に入りそうになっていた私達をベリッと剥がしたのはイリア様。暫く過ごして気付いた。彼はシルス様タイプだ、と。


 言動がなにかとシルス様に似ている。そして甘党。兄のイヴァン様がアッサリした甘味を好むのに対し、イリア様はシルス様同様、生クリームたっぷりの激甘なザ・スイーツを好む。苺とチョコのパフェを出したら秒で消えた。そして謎に拝まれた。この程度で拝まれるとは、普段の食生活が非常に気になるところだ。

 


 まあ今はそんなことどうでもよくて。人生初の学園祭、楽しませてもらおう。シフトが午前に入ってるため、マリー様がやるらしい魔法科の演劇は見られないけど自分ができることを全力でやろう。

 調理場、そして演奏。


 今回の学園祭にも年上王子達は来る。シルス様とアンナ様は忙しすぎて来ることができないと嘆いていたが他は皆来るみたい。パトリック様とイヴァン様も王族専用席ではないものの、学園内に設置されている劇場まで来てくれるとのこと。

 演劇を観に、そして演奏を聴きに。因みに演奏をするのは私だけではない。



 音楽を嗜んでいる生徒が集まってオーケストラを編成し、私の演奏の一つ前に発表する。今流行りのワルツを2曲。どちらも私とテイストが違うのでほっとした。ワルツは舞踏会に出る機会が多い貴族にとって一番馴染みのある曲調だ。


 だがその後に私の演奏となると…。不安でしかない。ベートーヴェンの曲は世界を掌握する程素晴らしいものだがグランドル王国で受け入れられるかはわからない。冤罪だが醜聞のある私の演奏など聴きたくないという人もいる。絶対に。

 だから私を何とも思っていない人は絶対に聴いてほしい。どちらも凄く良い曲だから。





 ついに学園祭が始まった。エイ兄さまが作成した出し物用パンフレットのお陰か、美形揃いのお陰か、全く前例のない企画でも棟からはみ出るくらい貴族平民老若男女問わず押しかけてきた。



 一瞬だけ見えたがその中には聖女、シエル・マローもいた。でも少し違和感がある。他の人達は皆楽しそうに笑っている中、彼女だけはそこに何か別なものが混ざっているような。そんな感じがする。何だろうか。日本式ホラーのような怖さがある。


 どうか気のせいであってくれと願いつつ調理場に戻った。

今回の登場人物


・エリーゼ・ガーナメント(12歳)

・エリオット・ガーナメント(15歳)

・エルシー・ウォルフラン(15歳)

・イリア・アルスフィールド(16歳)

・マリー・エバネン(15歳)

・イナ・ガイアス(12歳)

・リスト・サリバン(12歳)

・イト

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