朱雀VSお婆さん
『老婆よ、貴方は空を飛ぶ事が不可能だ。故に、我には勝てない。この場を引くと言うのなら、見逃してやらんでもないぞ?』
「良く喋る鳥だね〜」
『⋯⋯!』
お婆さんは高速で朱雀の目の前まで移動して拳を振り上げる。
朱雀はすんでのところで回避に成功するが、お婆さんがクルッと空中で回転して足を高速で動かす事によって空を蹴り、朱雀に再度接近する。
普通の老人、翔も出来ない芸当を簡単にやってのける。
『気』等は一切使わない純粋な脚力とスピードで空を蹴っているのだ。
お婆さんの拳が朱雀に当たったと同時に朱雀の体の色が1色になり羽の形になってお婆さんに襲い掛かるが、全てを蹴りで薙ぎ払われる。
「回避の前に僅かの羽を残して残像を作り出して反撃を繰り出すわけね」
『ほう、今の一瞬で我に分身の力は無いと分かったか。褒美として1つ教えよう、我の残像は数秒しか持たない』
「?それを言うって事はこの技はもう使わないって事で良い?」
『ああ』
「そう」
『──ッ!』
会話を終えた刹那に朱雀の後ろにはお婆さんの姿があった。
朱雀は羽を大量消費する事によって盾を生成し、何とか耐えた。
「反応が良いのう。私の孫を思い出す」
『なんて老婆だ』
朱雀は絶句していた。
自分よりも劣る種族であり、相手は空を飛べない人であり、それに老人なのだ。
なのに、そこら辺の若者よりも強く、速い事に驚いているのだ。
こんな人間はそう居ないと確信している。
『⋯⋯(魔王様以上の強さかもしれんな)』
朱雀は自分には勝ち目が無いかもしれないと感じていた。
『エアストスラッシュ』
朱雀は羽をバサッとお婆さんに向けて動かし、その動きに合わせて数刃の風がお婆さんに襲い掛かる。
「ショッボ」
思いの外芸当がしょぼすぎて素の声で無意識に漏らしていた。
お婆さんは『気』を操作して全てを薙ぎ払う。
『グッぬ』
朱雀はこの無意識に言われたであろう侮辱にプライドが傷付けられた。
朱雀は目をキリッとしてからお婆さんに高々に宣言する。
『ならば、本気で行くぞ?』
「安心せい。ソナタが本気を出そうと私は本気を出さない」
遠巻き⋯⋯直接お婆さんは朱雀よりも上発言、朱雀からは自分が格下認定された事にキレる。
朱雀は本気を出すと言わんばかりに咆哮をあげると、辺りの空気が振動し、朱雀から赤色のオーラが滲み出る。
『死ね!』
「ソナタの羽は無限なのかえ?羽を使っている割に羽毛が諸費されていないように見えるな」
今の状況をどうでも良いように観測と推測を重ねるお婆さんに朱雀は大量の羽を空に、朱雀自身の上に配置し、羽がお婆さんにロックオンされる。
『羽の無地路』
同時に大量の羽が一斉にお婆さんに襲い掛かる。
「おお、絶景絶景」
羽1枚1枚が綺麗な色彩であり、それに赤色のオーラが組み合わさってお婆さんの言う通りとても綺麗な景色になっていた。
しかし、威力は絶大であり、範囲もむちゃくそ広い。
「ハッ!」
拳を強く握り、羽達に向かって拳を力強く突き出す。
気迫と共に放たれた拳の振動波によって8割程がその場で止まって、落ちる。
残りの2割程の羽がそのままお婆さんに向かって進むが、お婆さんは『気』を操作して自分の周りに盾を作る。
その『気の盾』に羽は全て受け止められてその場から動かなくなり、やがてオーラが消えて落ちる。
『化け物かッ』
「⋯⋯バケモンはあんたやろ」
『ぐぬぬ』
普通の正論を言われた朱雀は内心で『マジレスキッズか!』と嘆いていた。
朱雀は次の行動と言わんばかりに雲の上に浮くように空に飛び立つ。
しかし、そんな事を許す理由も道理もないお婆さんは朱雀を落とすために足に『気』を集中させ、脚力を強化した後に跳ぶ。
それだけではなく、空中でも足を動かして加速しながら朱雀を追う。
『ナッ!』
「飛ぶのと跳ぶのどっちが速いと思う?正解は跳ぶ方よ」
考える時間を与えさせない問題をした後、拳に力を込めて振り下げる。
ただ、力を込めて自己流の技を使ったパンチだ。
パンチを諸に受けた朱雀は為す術なく地上、ビルの屋上に落とさせる。
『急いで体制を直さなければ』
しかし、それは叶わなかった。
『う、動かん。何故⋯⋯これはッ』
朱雀の羽には薙刀が数本刺さっており、それだけではなく足の両隣にも刺さっており足を固定され、首の方にも薙刀が数本あって固定されている。
それも、完全に朱雀に直接刺さっている訳では無い事から相当な技術が実用とする。
それを、朱雀が落下するのに合わせて『アイテムボックス』から取り出した数十本の薙刀を巧みに操作してきちんと朱雀を固定しているのだ。
頭の上辺りにある薙刀の上に1人の老婆の姿が見える。
薙刀の小さい足場にきちんと乗っている老婆が。
「アイテムボックスって便利やね。こんな量の薙刀を保管出来るんだから」
『いつの間にこんな、事をした!そもそもなんで出来る!お前は人間か?』
「ああ、進化?したらしくて高人間になっておるが?何か?どうしてこんな事が出来る?気を操作して薙刀の重力を普通に掛かる重力を数倍にして落として、微調整も気を操作して行った。⋯⋯出来るだろこんな基本な事?それと、高人間だから人間であってると思うぞ?」
普通は雲の上から落ちる相手に薙刀で固定する事も、そんな上空から音も無く着地する事は不可能である。
「それに、残像はあくまで残像。これを抜け出せないならソナタに勝ち目はないな。どう?なんかある?」
『⋯⋯』
「身体がでかいからやり易かったよ。最後に言い残す事は?」
『確かに、我の負けだ。そうだな、言い残す事か、⋯⋯我はまだ、負けてないぞ?』
朱雀の身体が蒸発したかと思うと、お婆さんの下に大きな鳥の形が出来る。
『陣を構築するのに時間が掛かる魔法でな。しかし、長い会話をしてくれたお陰で出来たよ!さらばだ』
「はぁ、⋯⋯気付かないと思っていたのかね?」
お婆さんはその事を予測して、既に対策済みなのだ。
伊達に暗殺をしてなかった訳では無いのだ。
『あ、あ?ああ、我に、逃げ場はなかったようだな』
「その通りさ」
お婆さんは逃げる朱雀の羽の付け根2本に向かって薙刀を振るって斬撃を飛ばしていた。
その斬撃で羽を切られた朱雀には既に、戦う力も、逃げる力も、備わってなかった。
「悪足掻きは辞めな」
朱雀は口から火を放射するが、『気』を纏って効かないし、足の爪で攻撃しようとしても素手で受け止められて握り潰される。
『打つ手無し』
「言い残す事は?」
『⋯⋯次に会う時は我が勝つ』
「次は無いだろう?」
『ふ、我々は魂さえ生きていたらそれは死んでない事になる』
「私には魂を攻撃出来ない。なるほどね。分かった。次会う時はまた戦おう。⋯⋯その時は私の本気を出させてくれよ?」
『⋯⋯はは(そういやコイツ、本気出さないって言ってたっけ。はは、無理やん勝てんやんバケモンやん)』
「さらば」
『また会う日まで』
お婆さんは拳に『気』を溜め、練り上げ、強化し、一撃で朱雀の頭を潰す。
朱雀は黒い霧となって消滅する。
空中ジャンプはとある海賊アニメの料理人、足で戦う人の空中移動のイメージです。




