玄武戦
「あ、あなた達は?」
奏は突然に登場した老人達に呆気を取られていた。
「なんか、危なそうなので手伝うわい!」
「あなたはその虎に集中しないさい。私達はこっちの鳥と亀蛇をやりますから」
「え、あ、⋯⋯はい?」
奏は言われた通り白虎に目を向けて意識を白虎のみに集中させる。
(まずは、地上に戻る)
地上の方がこの屋上よりも戦い易い。
そもそもこんな激闘をしているのに崩れないビルの方が凄いと思う。
奏は白虎の動きに合わせて空間転移を使用してビルの足場のないところに転移する。
重力に沿ってそのまま地上に落ちる。白虎も追いかける。
一方おじいさん達は
「んじゃ、亀さんやかかって来なさい」
婆さんは朱雀に向かって跳んで行っている。
『亀だと?我は玄武。貴様みたいな老害に生意気言われる筋合いは無い』
「老害ね〜?」
爺さんは『アイテムボックス』から刀を取り出す。
家に代々伝わる秘宝の1つ、『黒刀』だ。
特に歴史や神話に登場するような大それた剣でも凄まじい力を持っている訳でも無い。
まして、アーティファクトでもない。
ただの黒い刀だ。
しかし、とても固く、刃こぼれも1度もした事がなく、暗闇に投げると見えなくなるほどの黒さだ。
刀身もそこそこ短く、暗殺に向いている刀で昔よく愛用していた。
孫に譲ろうと考えて持って来ていたのだ。
「いくかのう?」
『そのチンチクリンの剣で我の甲羅を斬れると?』
「はて?余裕では?」
『あ!もう、我怒った!許さんぞ老害!』
玄武は極大の炎の玉を瞬時に5個吐き出す。
変則的な動きをしながら爺さんに襲いかかるが、爺さんは何処吹く風でさして緊張も怯えてもない。
ただ、淡々と事をこなすだけである。
「熱い」
黒刀を横に一閃。
ゆっくりと横一文字を綺麗に謎るように横薙ぎに刀をスライドさせる。
刹那、轟音と共に5個会った極大の炎の玉は全て真っ二つになった。
『⋯⋯なかなかやるようだな』
「?それしか手品はないのか?つまらんの」
玄武は爺さんに向かって全力で入る。
走って襲いに行っている間にも蛇が自ら動いて噛みつき、躱されたら水の光線を履く。
「つまらん」
縦に一閃すると、水の放射が真っ二つに割れながら斬撃はまだ続いており、蛇を斬ろうとするところで亀が身体を捻った事によって回避する。
『なんてやつだ』
玄武は蛇は遠距離の砲台に固定して接近は亀がやると決めたようだ。
蛇の顔の位置が亀の後ろ辺りに動いて亀は爺さんに向かって突進する。
「この程度?」
『黙れ!』
突進を黒刀で防ぎ、蛇から飛ばされる水の放射も身体を捻って躱す。
「2対1は卑怯な気がしてならんな」
『──!どこだ!』
「ここ」
爺さんは瞬時に動いて玄武は爺さんの姿を見失い焦るが、すぐに爺さんが後ろに回ったと分かった後に蛇が水の放射を放とうとしたが、時既に遅し。
蛇の頭は地面に落ちていた。
『貴様!』
「その甲羅はどこまで耐えるかの?」
爺さんは神速のスピードで動いて甲羅の横側を黒刀で斬るが、弾かれる。
『ふん!打つ手無しと見た!』
「阿呆」
玄武が爺さんに向く前に横の甲羅に200回ぐらいの連撃を入れた。
甲羅にほんの僅かのヒビが入った。
とても僅かなヒビだったので玄武は気付いた様子がない。
玄武の噛みつきを余裕で躱し、その巨体からはありえない動きで尻尾での攻撃も躱し、これまた凄い動きで上から尻尾を振り下げるように回転している。
それを黒刀で受け止める。
黒刀に力を入れて玄武を弾き返し、玄武は空中で身体のバランスを直すとビルの屋上に足を着けた瞬間に力を前身に掛けて猛スピードで突進する。
「バカ正直はやりやすい」
爺さんは黒刀を両手で構え、先端を真上に向ける。
玄武は本能的に危険と察知し、回避行動に移ろうとしたが遅い。
既に爺さんの刀は振り下ろされている。
「一桜、一閃桜」
達に一閃の光が現れる。
それはとても華やかで綺麗で、春を想わせる優しさ、暖かさが感じ取られる。
しかし、攻撃の威力を先端部分にのみ集中して一撃の重さをますおゆう高等技術を模した技であった。
先端以外にはダメージを与えられる箇所はないが、玄武は目の前に、刀の射程外にいるので先端から現れる斬撃でしか攻撃出来ない。
ただ、その斬撃の威力がこの技の全力になっているだけだ。
『ぐわああああ』
正面から受ける絶大の威力を誇る斬撃を受けてビルに足を少し埋めながらも、痛みに耐えながらも、この斬撃を受け止める。
回避なんてしたら余計にダメージを負うし、そもそもそんな行動が出来る程の余裕が玄武にはなかった。
しかし、玄武は忘れていた。
これは、あくまで攻撃から離された斬撃で会った事に。
そして、斬撃を放った主は普通に動ける事に。
「一桜、白桜」
『しまっ!』
白色の斬撃の連撃が神速のスピードでヒビの入っている部分に集中砲火される。
バリ
バリバリ
徐々にヒビの入る速度が増していき、もうずく割れるであろうところで斬撃が収まり、玄武は瞬時に後退する。
「あと少しだったのに」
『ハァ、ハァ、ハァ。グッ⋯⋯化け物め』
「バケモンに化け物言われたくないわ!」
玄武の頭部の鱗は既にボロボロで後数回で割れる程までに削れ、先程受けた横の部分に当たる甲羅に関しても同じだった。
玄武は心の底から『こいつには何があっても勝てない』と悟った。
天変地異が起こらない限り勝てないだろう。
しかし、そんなのは滅多に起きないし、ダンジョンがある時点で既に起こっているとも言えるだろう。
玄武は考える。
ここをどうやったら逃げるのか、どうやったら生きれるのか、どうやったら魔王の元に戻れるのか、どうやったら魔王の役にたつのかを。
『魔王様の役に立つには、貴様を倒す!』
「⋯⋯貴様は強いな」
力、能力が強いのでは無い、心が、ここまで弱っているのに自分の主の役に立とうしている心の強さに素直に感心する爺さん。
しかし、そこには慈悲はない。
「通り掛かっただけだが、良い心構えの奴を見れたものだな」
ビルの屋上にたまたま通り掛かったとは?
爺さんは刀の先端を玄武に向ける。
「さあ、来なさい」
『ふ、ぐがああああ』
今までには見なかったような巨大な炎の玉を顕現させる。
玄武は今この瞬間に限界に近づき、そしてほんの少しだけ限界を超えた。
ただ、その相手が悪かった。
ほんの少しだけ限界を超えても足りなかったようだ。
「見事。一桜、舞桜」
玄武が炎の玉を飛ばし爺さんを消し炭にしようとするが、その炎の玉粉々に切り裂き、玄武の後ろに現れる。
その時にはもう、玄武は斬られている。
神速の動きに神速の斬撃は玄武には見えなかった。
ただ、玄武は自分が負けたと、それだけしか認識出来なかった。




