90話 『オープン・ザ・ゲート』
ビーコン、ビーコン、ビーコン。コックピット内の各種計器が電子音と魔力パルスを発している。
陸軍から借り受けた新型飛行機械を恐る恐る、しかし巧みに操縦する聖堂騎士団工作部隊員ノエ・セルベットは、長魂族という事を差し引いてなおずいぶんと幼く見える顔を、苦々しく歪めた。
大荒原での戦いから続くストレスに責め立てられていることに加え、己の隊長こと“勇者”チームを秘密裏に輸送する重要任務の主役という重圧が主な原因だ。
さらに、逐一変化するモニタの表示情報も混沌としており、彼に判断できる限界を超えていた。
「どうだ」
「ええ、指定された座標は近いですが、その、この」
「はっきり言えノエ隊員」
「た、隊長……のですね、え、ロズモンドさん?」
後部エリアからかけられたエリクの声に、一杯一杯の頭をどうにか整理し、うまく説明すべく苦戦苦闘するノエ。
だが、挙動不審じみた声は、妙に呑気な嗄れた響きに遮られた。
騎士団制服ではなくルクスコリ軍服を着込む、ライトブラウンの癖毛が特徴的な痩せた女。
陸軍所属の彼女、ロズモンドは本来部外者だが、紆余曲折あって任務中のエリクとジョゼが同じく陸軍のラザルと合流して、前線基地へと補給に戻る際、ついでに回収されたのだ。
戦闘員として秀でたものはないが、高い情報処理能力は、十分エリク達の役に立つ。
「該当エリアでー、数十機のシュバルド空軍機と不明な勢力が活動中でぇ、これ以上の当機による接近は危険と判断されますー。
でしてね、強力なエネルギー反応が七……や、六か? そう六、たった今、六に減ったデスね?
えー、やっぱり争っているのか、どういうこっちゃ。
こほん、とにかく一際スゴイのが大魔王アンドレアス・エルネストで間違いないでしょお。
あと悪魔っぽいのが二つ、一つは私と少将の仇敵、大悪魔デグレニャの変身体ブラックバッグと推測、もう一つは……なんじゃこりゃ、グラフが妙な数値を……んむ、悪魔ではないんですかね。
…………少将?」
首を捻るロズモンドを補助するように、ラザルが愛用の特殊クロスボウを弄りながら口を挟む。
一見リラックスしているが、よく見れば鋭敏な長魂族の耳が燃え立つ怒りで僅かに震えていた。
練達の軍人も感情と無縁ではない。単に隠せるようになるだけだ。
「ロズ、そいつはガストルトだ。間違いなく大悪魔。
反応がおかしいのは存在が圧縮されているからじゃねえかな。
魂の姿を巨大戦監グレイトピースつってな、とんでもなくデカい」
「あー、アレですかい。つーことは……お、やっぱおかしいですねぇ。
レーダーの点の動きからして、シュバルドの飛行機械と戦ってるの、アンドレアスさんの方ですよ?
そーなると、不明な三匹はなんだこりゃ」
「もういい。大体状況は理解した」
「あん?」
「は、隊長?」
……と、会話を遮ったエリクが安全ベルトを外し、座席から立ち上がる。
有無を言わせない雰囲気を纏う、特別秘密工作員“勇者”の貌。
続いて、青いローブの影がするりと音もなく動き、並ぶ。光の聖女ジョゼ。
フードから零れたシルバーブロンドが、共生している聖光粒子により淡く輝いた。
動くべき、ということだろう。
出撃準備自体は終えていたラザルも、肩をすくめて後に続く。
「すまんねエリク殿、ジョゼ様。行くか、っと!?」
「そうですわね、出撃、あら?」
「は、はい、これ以上は近づけませんので、御武運を、ではハッチを開放しま、あ゛っ!」
瞬間、全員が恐ろしい予兆を覚え、風防ガラス越しに夕闇の空へと注意を向けた。
特に目の良いエリクとラザルは、紅く沈む昼の陽ことソレイエルの瞳に起因するものではない、鳥の血めいたルビーの微かな染みを認識。
遅れて、期待に備え付けられたいくつもの計器が探査パルスをキャッチし、ノエが叫ぶ。
ほぼ同時に十マイルは先にいた“それ”は、反響してきたパルスによりノエの操縦する機体を捕捉した。
即座に発射された無数の点が不吉に輝く糸を引き、襲いくる!
「ああああ!」
機体を守るべく、ジョゼの展開する聖光触手が半開のハッチを押し開きながらうねり出でる。
エリクとラザルは光の渦にもまれながらジェットパックを起動して飛び出し、機体の上部に立った。
BOOM! BOOM! 男二人の撃つ迎撃のロケット弾と炸裂クロスボウ・ボルトが次々飛来する対空誘導弾を破壊!
しかし想定より弾丸の数が多い!
デリケートな飛行機械にとっては、近くで爆発を起こすだけでも危険だ。
エリクがノエとロズモンドに脱出命令を下しかけたその時。
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システムメッセージ:エリア・ディフェンダーを投下しますか(Y/N)
ZZZMZMZMZMZM...
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はるか高く、雲の上から投射された巨大な電磁ネットがスパークを発して双方の弾丸を遮った。
ルビー色の染みの砲撃が、ノエ機から高空の介入者へと替わる。
ラザルも反射的に炸裂ボルトを上に向け、撃つ。
何か大型のアンノウン飛行物体が降りてくる。
ゴウンゴウンゴウン……電磁波と低音の混ざり合った不快な和音。
ノエ機から一マイルも離れていない座標、空中戦ではほぼ隣接といえるポイントまで近付いてきた白銀色のそれは、長い方の一辺がかるく百フィートはある長方形のシルエットで、禍々しい暗色の電光に包まれていた。
殺到する炸裂ボルトと誘導榴弾は、迸る暗いスパークに触れて爆発せず四散してゆく。
砲撃を意に介さずホバリング旋回した白銀飛行物体は、背面からせり出した長大な砲身をノエ機へと向けた。
悲鳴じみてエリクが叫ぶ。
「まずい、ウェポン・ボックスだ! もう一機いたのか!?」
神出鬼没の不明大型飛行機械、ルクスコリ共和国軍内でのコードネーム“ウェポン・ボックス”。
本来の名をベルトラン式機動装甲“シャトレーヌ”というそれは、数少ない記録データのみからでも恐るべき戦闘能力を持つ事が確実。
エリクとジョゼならやってやれないことはないだろうが、この場面で相手をするには骨が折れるなどという次元ではない。
走る緊張……だが。
「――――――“勇者”“聖女”のエリア到達を確――――セーフゾーンの一時確――――終了――――第二ミッション――します――」
強化されたエリクの耳に、涼やかな電子音声が途切れ途切れに入る。
一瞬か、あるいはある程度の時間か、ともかくホバリング状態のまま電磁防御フィールドで双方の砲撃を遮断していた“シャトレーヌ”は、ノエ機を攻撃することなく再び上昇し、紫のクリスタル燃焼光を点滅させて機体をバンクすると、いずこかに飛び去った。
気づけば、遠くルビーの染みからの誘導榴弾も停止している。
「……どう思う、ジョゼ」
「リュミエラからの通信、誤報ではなかったようですわね」
いつの間にか機外へと動き、浮遊モードに変化していたジョゼが呟いた。
危機を回避したにもかかわらず苦虫を噛み潰したような顔をしているのは、クロスボウを構えたままのラザル。
「あいつが襲ってこねえぐらい、不味い事が起こってるんだろ。早く行ってデグ、じゃねえ魔王をなんとかしなきゃな。
それとエリク殿、ノエ隊員には無事なうちに撤収しろ、とロズを通して伝えたぜ」
「了解……ん? おかしくないか」
「なんもかんもおかしいが」
「そうじゃない、こう、何か言葉に出来ない、いや、なんだこれは、揺れてないか」
「馬鹿を言うなエリク殿、空の上だ……うぬ? 確かに、ぐ、こりゃあ」
「猶予がない、ってことですわ、たぶん。急ぎましょ」
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大悪魔ブラックバッグが、“シャトレーヌ”の消えていった空を睨みながらも、少女然とした上半身で握る巨大機関砲で飛行機械プテロン・ソリオンを次々撃ち落し、下半身となっているメカニカルドラゴン頭で接近中の“勇者”に砲撃を加える。
大悪魔ガストルトは、超粘度の青い触手と翼で縦横無尽に空を蠢く改人セーズと、最終怪人サンを同時に相手していた。
一方、アンドレアスとベルトランはいまだ睨み合いを続けている。
本来ならば、いくらベルトランが新技術による自己改造を行ったところで戦いにもならない力量差。
そもそも、彼は怪人達やカピテーヌと違って戦闘用ではない。
しかし、現在のアンドレアスは“儀式”に大量のリソースを割いているため、半神さながらの古代超魂族の力を出す事が不可能な状態にあった。
ほんの僅か前まで親密な関係にあったベルトランは“大魔王”のそういった事情を熟知しているのだ。
「打てる手は打たせていただきましたぞ、アンドレアス様」
「言っていろ、ベルトランよ。余の仕込みは貴様の矮小な罠程度で終わるものではない」
「ワシのものは、まあ、そうでしょうな?
ほれ、もう近くまで来ておる」
空中戦用の足場型プテロン・ソリオンに乗ったベルトラン博士が骸骨じみた片手で手すりを掴み、もう片手で魔王アンドレアスの背後を指差す。
敵機をまた一つ捻り潰したブラックバッグが顔、鞄、ドラゴンの三つの口でアラートを発し、唸りを上げる何かを投げつけた。
「「「主様ァー!」」」
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ギュオウィィィン!
炸裂ボルトや砲弾をものともせず跳ね飛ばし迫る、銀色の神秘的巨大チェンソー。
エリクはジェットパックで飛行しながら魂の同居人と融和し、変身する!
(行くぞツチヤ!)
(おうとも!)
着込んだ軽鎧からカーキ色の装甲板が数枚剥がれ落ち、濃密な大地の気配をもって変質。
物理法則を半ば無視した大量の金属繊維と化して纏いつき、そして。
「どりゃあああ!」
瞬きが終わるか終わらないかのうちに、十二フィートはある鈍色の昆虫を想起させるパワード・スーツに包まれたエリクが増幅された“勇者”の強靭なパワーで、重機さながらの凶悪なチェンソーを受け止める。
回転する刃を装甲タイル板が弾き返し、メキメキと音を立ててへし折った。
そして、スクラップとなったチェンソーを炸薬で加速した拳でもって投げ返す!
「うふふふふ……」
空間を喰らいながら伸びる、“聖女”ジョゼの攻撃用聖光。
白く輝く粒子のラインが渦を巻いてアンドレアスに殺到する!
BOOM! KABOOM!
ブラックバッグとガストルトの視界を遮るように連続する小爆発は、闇に紛れ身を隠したラザルの炸裂ボルトだ。
アンドレアスは濡れ羽色の見事な髪と伝統的なシュバルド王の守護マントをはためかせ、毒々しい虹が明滅する混沌の防御結界をドーム状に広げた。
弾ききれなかった聖光の破壊ラインが魔王の霊的な肉を傷付けるが、彼はそれ以上の防御を行わない。
「ぬうーっ……想定より早い。だ、が、遅い、時は満ちた!
戻れデグレニャ、ガストルト! そして見るがいい、ルクスコリ“勇者”、ベルトランもだ!」
薄い血を滴らせながら誇らしげに吼え、高く掲げた両の腕に混沌の塊を作り出すアンドレアス!
巨大なエネルギーの波を感じた怪人サンと改人セーズが、異変からベルトランを守るべく飛行足場に取って返す。
混沌は毛糸球かなにかのようにほぐれ、有史以来誰も見た事がない謎のコードを描き、三次元かつ非積層の魔方陣へと変化してゆく。
多少なりとも理解できたのは元同志であるベルトランと、その身に情報集積の怪物“聖光”を宿すジョゼ!
「うぬ、いかん、下がれセズ、いや、一旦引くぞ、都合よく勇者共も忙しそうだ」
「はい博士」
激昂する部下を抑えつつ飛行足場を操作し、撤退を計ろうとするベルトラン。
ジョゼはそちらをまったく無視し、フードローブの隙間という隙間から雪のように白く輝く粒子を迸らせる。
夜空にギラギラと輝く虹と白。
「……っ! あるじジョゼが命ずる、起源より目覚めよ」
「待てジョゼ、まだ――!!」
「クソ、なんだこりゃあ」
攻撃を中断したエリクはジェットパック急加速でターンし、外骨格パワード・スーツの腕をジョゼに伸ばそうとした。
虹の輝きに隠密をディテクトされたラザルは、怒りを隠そうともせず呪殺の黒いボルトを連射。
「「「キィーハァー!」」」
儀式を進める“魔王”を庇うように割り込んできたブラックバッグが、虫の巣じみた箱型オブジェクトを取り出す。
ZZZZZAZAZZZAA!
炎の線を描くほどの金属の嵐砲撃でボルトをまとめて撃ち落し、そのまま後退して空に立つ主の下へと寄り添う。
ガストルトは? “魔王”の背後に控え、ジェットパックをふかしながら、タイガーアイの瞳でベルトラン一味を警戒中だ。
……そして、“魔王”が締めの呪詛を呟く。
「除幕の儀第ニ、滝壺の門」
夜空に皹が入った。
少なくとも、エリクたちにはそう見えた。
だが、まだだ。
「この、魔王ォー!!!」
普段の淑女めいた様からは想像もつかないほど野太い怒りの声を発したジョゼの、両の袖が爆発するかのように爆ぜた。
ジグザグに伸びる巨大な光の鞭が、邪悪な虹を“魔王”ごと飲み込まんとする!
「ダメだジョゼ、落ち着け!」
外骨格スーツから金属じみた叫びをあげるエリクをよそに、光の鞭は虹を薙ぎ、悪魔を弾き飛ばして“魔王”の腹部を貫いた。
それでもアンドレアスは、“大魔王”のように笑った。
「ハ、ハハ、そう来るだろうと、思っていた……」
「ふん、消え去るがいいですわ、古代の亡霊」
「余は最初から、三人分の転移コードを書き込んでおる。
そして、グホッ、あれを見るがいい」
ずいぶんと離れたシュバルドとルクスコリ決戦の地、大荒原の方角を指差すアンドレアスの肉体が、悪魔二匹共々薄れてゆく。
覚醒した“聖光”は、“魔王”を食い尽くすことに失敗した。
転移は既に開始されている。
だが、まあ、それはいい。儀式の魔方陣を一旦は砕いたのだから、今はいい。
それに、少なくとも“聖光”は感染している。追跡可能だ。
その、はずだ。
「え……これ、って……グ、うっ」
彼方から不気味な地鳴りと、より奇怪な水の流れる音。
さらに恐ろしい事には、エリクも、ジョゼも、ラザルも空を飛んでいるというのに、強い揺れを感じ続けている。
いや、初期より強くなっている。
「フハ、ハハ、はハハハハ、ハァーッハッハッハ! 余は鍵をひとつ開けたのだ! 世界の鍵を! ハハハハハ…………」
アンドレアスと二人のしもべは消失した。
虚空に走ったひび割れは消えず、夜景が二重に見える。
「畜生め、頭が、まずはロズに連絡を」
悪態をつきつつ、ラザルが通信機を操作する。
先ほど送り返したノエとロズモンドを再度呼び戻すつもりなのだ。
可哀想だが、良い移動手段が他に思いつかないのだから仕方がない。
エリクは強化聖光の反動で呻くジョゼをパワードスーツ腕に抱え、カメラアイをアンドレアスが最後に指差した方向へと向けていた。
ジョゼが復帰しだい追撃を行い、アンドレアスを殺す。それは確定だ。
だが細部の考えが纏まらぬ。
「……んん通信、プライベート側に強化電波で? どこからだ?」
ジィー……ジィー……
ふと気づくと、エリクの耳元でアラートが鳴っていた。
空間振動のせいで、反応が遅れたのだ。
キンキンと煩い軍のものではなく、新型だが私用の方。
非常時ということもあり僅かに逡巡したが、少しでも情報が欲しいと思い直し、彼はヘッドセットを介して通信を開いた。
「はいエリク……この大変な、ん、なんだマリエットか」
((やっと通じたか隊長、いやエリク))
振動でぶれてはいるが、馴染み深い聖堂騎士団工作部副隊長の声。
「どうもこうもあるか、もう戦争無関係に修羅場だ、例のミッションも終わっていない」
((何を呑気な事を言っている、最後に大荒原の前線基地司令部と連絡を取ったのは何時だ))
「呑気なわけあるか馬鹿、んんん? 何時って、そりゃあ夕暮れより前だよ、ミッションのための補給と飛行機械を借りにだな、というかマリエットお前、ルクスの聖堂騎士団本部にいるんじゃ、そっちからのほうが早いだろ」
((繋がらん))
「は?」
((だから繋がらんのだ、大荒原からの正式通信ルートが断絶している、非正規なら先ほど一つだけ本部にかかってきたが、まったく要領を得ない内容で……))
「要領を得ないとかんなふんわりした言い方するなよ」
((私が知りたいよそんな事は、その通信は洪水がどうのだぞ洪水。あんな山の中で、晴れ時々曇りで、しかも戦闘中で、まあ戦闘は時間的に中断していそうだが))
「洪水……? いや、そんな、まさか」
((どうしたエリク、ぬ、どうしたそこのお前、用件があるなら早く、なぬ? おいエリク、切るぞ、余裕ができたらまた連絡する、通信機は絶対に生かしておいてほしい))
「待て、だからなにがあったかを具体的にだな」
((馬鹿、こんな局面で前線のエースに不確定な事を言えるわけなかろうに))
「んな気遣いはいらん」
((……たった今はいった情報だが、ルクス周辺で散発的に火の手が上がっているらしい、これから会議))
「あ、ああ、わかった。多分こちらの事象とは別件だ、幸運を祈る」
((それは私の台詞だよ隊長、幸運を祈る))
ツー、ツー、ツー。不安を残して切れる通信。
エリクは考えが纏まらないままパワード・スーツを解除してジョゼを背負い直し、己を超生物“勇者”たらしめている魂の同居人、異界の魂魄ツチヤへと思考を投げかけた。
(なあ、洪水、だそうだ。どう思う? アンドレアスの呪詛にあった滝壺と関係があるのか、ないのか)
(どう、と言われてもな、神秘関連の知識は俺よりエリク、お前の方がずっと、滝、滝か……滝の裏側は世界の境界が特別薄い、というのを聞いた事があるようなないような、ぐらいだ)
(ふうむ……嫌な予感しかしない。せめてベルトランの奴が逃げる前に説明してくれていれば)
(なにを今更)
「おい、迎えが来たぞ」
ベルトランもアンドレアスも消えた空でひとり、いやふたり考えに耽るエリクを、心配そうなラザルの声と飛行機械のクリスタルエンジン音が呼び戻した。
湧き上がる不安も、空間の揺れも、治まる気配は一切ない。
次話は四月十九日前後を予定しています。




