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74話「ちびっ子騎士の訓練」

「では緊急会議を始めまーす!!!」


 仕事のあるリンジーさんを見送って、訓練場の端で会議を始める。

 紙はないから、地面に指で文字を書いていく。


(よし、頑張ろう)


 今、めちゃくちゃ張り切っている。

 リンジーさんにあんなことを言われたら、張り切るしかない。


 私だけじゃなくて、ユアンとアンちゃんだって、やる気に満ち溢れている。


 (でも本当ずるい……)


 あんなやる気の出る言葉を吐くだなんて。

 昔から、よくしてくれてたけど、あんな風に思っててくれたなんて知らなかった。


 リンジーさんは嘘をつかないし、あれは本心なんだろう。


「意見がある人は挙手してねー!!はい、ユアン!」

「何か遊びになるような訓練はないかな?」

「具体的には何よ?」

「それが思いつかないんだ」


 ユアンが困ったように頬をかく。


 (遊び……いい意見だと思う)


 ユアンの意見を地面に書く。


「それより、ごっこ遊びなんていいんじゃないの?騎士になりきって、戦っている子がいたじゃない?」

「なるほど……それも子供たちが喜びそうだね」


 (ごっこ遊び……それもあり!)


 日頃、孤児院の子供たちと遊んでいるからか、いい案がすぐに出てきた。


 二人の話を聞いて、頭の中に思い浮かんだものを地面に書き出す。


 (ここはこうして……こうなったらこうして……)


「あんた何してんのよ?」


 アンちゃんに声をかけられて、書いたものを見せる。


「これって……」


 二人が息を飲んだ様子を見て、いけると確信した。

 練って練って練りまくって、完成させていく。


 次の日ー


 訓練の前に紹介してもらう。


「今日はこの人たちに訓練をしてもらう。皆、精進するように」


「だれだこいつ?」

「なんでぼうけんしゃに、くんれんしてもらうんだ?」

「つよいのかな?」


 この感じ孤児院いる感覚になる。

 話を聞かずに一気に話し出す。子供らしくていい。


 軽く自己紹介をして挨拶をする。

 終わったら早速本題に入った。


「それでは訓練しまーす!まずは体力の訓練ね!!ユアン、アンちゃんお願い」


 ユアンとアンちゃんに指示を出す。


「二手に別れてくれるかな?わかりやすいように青チームと赤チーム、好きな方でいいよ」


 ユアンが、二手に別れさせて、アンちゃんが布を配っていく。


「じゃあまずは、自分の色の布を表にして折って、それをズボンの後ろに引っ付けて尻尾みたいにしてねー!!」


 ここでわかった人もいるだろう。

 これは小さいときにやったことがある人もいるだろう、尻尾取りゲームだ。


 体力もない、集中力もない。なら鬼ごっこをすればいい。

 大人になってわかるけど、鬼ごっこは意外と体力がいる。

 前世、大人になってやった時に自分の体力の衰えに絶望した記憶がある。


 逃げて追いかけてのエンドレス。これで体力はつくだろう。


 一応は騎士団として目指している子供たちだから、より難易度をあげようと思ってルールを変えてみた。


 尻尾を取られたら相手チームに寝返るルールだ。


 布を裏表違う色にしていて、捕まったら色を変える。

 そうしているうちに段々、敵が増えるかもしれないし、減っていくかもしれない。


 これは、現実の騎士団でも起こり得ることだから、予行練習として丁度いい訓練になると思った。


 それだけじゃない。逃げる方も取る方もどっちも頭を使う。

 これも魔物と遭遇したとき、協力したり自分で考える力がつくんじゃないだろうか。


 それに狙いを定めてどうすればいいか、魔物の弱点を突くために思考を凝らす。


 それ以外にも色々と役に立ちそうだと思って、この遊びにしてみた。


 効果はまだわからないけど、多分受けはいいと思う。

 昨日帰ってから、孤児院の子供たちで試したら、凄くはしゃいでいたから。


 目の前の騎士団の卵たちにも、ルールを説明してみんなが理解したか確認する。


 とりあえず大丈夫そうなので、笛を持つ。


「はーい、じゃあまずは試しに五分間の訓練開始!」


 息を吸って笛を鳴らす。

 ぴーっと笛が鳴る合図とともに、騎士の卵が走り回る。


 すぐに取られる子、器用に走り回って回避する子。

 色々な子がいて見ているだけで面白い。


「団長から面白い子だとは聞いていましたが……すごいですね。

 訓練中、あの子たちがあんな楽しそうな顔をしているのを見たことないです」


 子供たちの教官役の騎士がそう呟く。


「騎士さんも次やってみる?意外と奥が深いよ。あれ囲まれたら、子供相手でも取らせないようにするの難しいんだよね」

「そうなんですか……では試しに俺も次やってみます!」


 騎士さんの言葉に頷く。


(日頃の恨みぶつけられるかもしれないけど……)


 昨日、私も散々もみくちゃにされた。

 特にヒルダたちから、どさくさに紛れてわざと足とか踏まれた。


(騎士団の子たちなら大丈夫かな……)


 孤児院の子供たちよりも、騎士団の子供たちの方が優しそうに見える。

 孤児院の子供たちは、私に対して本当に暴君だから。


(まぁ、その分存分にからかって遊んだけど……)

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