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第2話

遅くなって申し訳ありません。

大広間の扉をあけて、一人のメイドが入ってくる。

俺はその美少女いや、美女と称したほうがぴったりのメイドに目を奪われた。

褐色の肌に青みがかった美しい銀髪。耳は長く伸びており、所謂ダークエルフらしき美女である。


「……アレスティナか、何用だ?」


魔王はそう促しながらも、要件に察しがついているのだろう。

酷く憎憎しげな表情を浮かべながら続きを待った。


「奴らがまた現れました」

「やはりか……」


魔王は激高するわけでもなく静かにそう呟いた。

しかし、怒りを感じているのは明白で、魔王から凍てつくような冷気が俺の体を貫いた。


「もういいだろう。異界の賢者には悪いがこの手で皆殺しに……」

「父様、落ち着いてください。そんな酷いことしちゃダメです」


そう言って、父親の静かな怒りを諌めるため、メアリアは上目遣いで魔王を見つめた。

すると魔王は、もちろん殺気を消して、メアリアの頭を撫で回した。


「メアリアはほんっっっっっとに優しいな。我はそんな心優しい娘に育ってくれて魔族一の果報者だ」

「私も幸せですよ」


俺ははしゃぐ親バカを見て何も言えないでいたが、ここではこれが日常茶飯事なのであろう、アレスティナと呼ばれたメイドは慣れた様子で話しかけた。


「魔王様、折角の家族団欒に水を差すような真似をして大変申し訳ないのですが、今は東の大荒野にお急ぎください」

「む、そうであったそうであった。あの塵芥共に歓談に水を差したツケを払わせてやろう」


そういうと、魔王は俺の方に手をおいた。


「丁度良い、ついてこい異界の賢者・カイトよ」

「え?」

「ああ、心配戦でも良い。メアリア、聖痕を」

「わかりました、父様」

「その前に聖痕ってなーー」


俺がそう言い終えるよりも早く、メアリアが俺の右手を取る。


「蒼銀の巫女より魔神に申し上げます。このものに千年の祝福があらんことを」


そして、メアリアが俺の右手の甲に軽くキスをする。

その瞬間、魔王から殺気が飛んでくるが、アレスティナが必死に抑えている。

メアリアは瞳を瞑り、何か祈りを捧げている。

その姿は、凛とした雰囲気を纏っており、女神と言われても納得しそうなほど神々しい。


「はぁ、これで終わりです」


メアリアがそう言って、目を開ける。

その顔には汗が滲んでおり、相当疲弊してしまったのは誰の目にも明らかだった。


「なんか変化はあったのか?」

「右手の甲をご覧ください」


アレスティナが俺にそう告げる。

俺はそう言われて初めて気がついた。自身の右手にタトゥーの様なものが浮き出ていることに。


「どうやら、不死鳥の加護が授けられた様ですね」

「不死鳥の加護?」


俺は首を傾げて言われたことを反復する。

するとアレスティナは懇切丁寧に教えてくれた。


「いいですか、まず聖痕というのは選ばれし魔族が魔人の巫女に祝詞を捧げてもらうことで授かる加護です。聖痕には大きく二種類ありまして、神器系の聖痕と神獣系の聖痕です。神器系の聖痕は、主に身体能力の向上に加え、専用の神器を使用できるようになります。神獣系は身体能力の向上はありませんが、その加護を司る神獣の力を再現できます。カイト様であればおそらく不死鳥の不死身の能力が再現されるかと」

「そうなんですか、ご丁寧な説明ありがとうございます」


俺への説明が終わると、アレスティナは酷く不機嫌な魔王に耳打ちする。

すると魔王は立ち上がって、俺の隣に立つ。


「なぜ貴様に最上級の加護を授けたのかは理解できなんだが、我が愛娘のしたこと、きっと何かがあるのだろう。それでは戦場へ向かうぞ!!」


魔王がそのセリフを言い終わるのとほぼ同時に俺の体を不自然な浮遊感が襲う。

そして、瞬きほどの一瞬で石造りの大広間から広い荒野の戦場へと早変わりである。


「テレポートか……」


何事もなく異世界に順応していた俺ではあったが、科学では説明のできない超常現象を目の前に、テンションを爆上がりさせていた。

しかし、その余韻に浸っている余裕などもうなかった。


「地獄の業火よ、地のものを焼け火焔球(ファイヤボール)


遠くから女性の声が響いたかと思うと、巨大な爆発音が大気を揺らす。


「なんだっ!?」


紅蓮の閃光と共に、肉の焼け焦げる不快な臭いが鼻をついた。

俺は、確実にグロッキーな映像が待っているのはわかりながらも、そちらを確認してしまった。


「あれは、オークか?」


俺たちが今立っているところから、100メートルほど離れた所に立っていた豚を巨大にして二足歩行させたような化け物。

先程の爆撃をまともに食らってしまったのだろう、全身が真っ赤に焼けただれている。


「ブモオオオオオ」


雄叫びをあげながら、なんとか立ち上がろうとする豚巨人。

しかし、その首に無慈悲な刃が振り下ろされた。


「全く、しつこいものだ」


そう冷たく言い放ち、剣についた地を払い飛ばしたのは、所々金の細工が施された純白の鎧に身を包み、何故か守らなければならない頭には何も装備をつけていない金髪のイケメン騎士であった。

さらにその後ろには斧を構えた巨乳な美人戦士に、弓を構えた美少女レンジャー、メイスを構えた母性溢れる聖女に、如何にもな杖を持った美麗なエルフ魔法使い。そう、所謂ハーレムパーティーである。

俺はそれを視界に捉えて瞬間、先程の魔王よりも憎々しげに顔を歪め、ポツリと呟いた。


「イケメンな上にリア充でハーレムとか死ね!!」




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