崩落……全てはここから
「地震か!?」
オレはベンチから立ち上がろうとしたが、そのあまりに激しい揺れにまともに立ち上がることができない。
フェンスを支えにすることにより、なんとか立ち上がることができた。
視線を学外に向けると不自然な光景が目に入る。
これだけ揺れているのに校外の車は問題なく走っていた。
ありえないことだ。学校だけ地震に襲われるなんて。
突如、浮遊感が体を襲う。
まるで、地面が抜け落ちるようなそんな感覚がした。
視界が下がっている!?
学校が沈んでいるのか?
この辺りで一番高い建物である校舎が、周囲の建造物と同じぐらいの高さになっている。
下を覗くとすでに校舎の一階部分は地面に沈み、二階の半分も沈んでしまっていた。
学校を取り囲むように地割れが走り、校舎だけではなく、学校の土地全てが呑み込まれようとしている。
それ認識した時にはすでに行動に移していた。
考えるより先に体が動いた。
よく聞く言葉だが自分に訪れることだとは思わなかった。
フェンスを駆け上がり、そのまま学校の外へと力の限り跳躍をする。
校外に脱出するためだ。
届け!
宙にいたのはごくわずかな時間だったが、オレにはとんでもなく長く感じた。
それが終わった時、オレが掴んでいたのは地面にできた崖だ。
とてつもない悪寒が身を貫く。
下を見てはいけない!
本能的にそう感じたが、オレは好奇心を抑えることができなかった。
下を見てしまったのだ。
それは得体の知れないもの、とても言葉では表現できないものだった。
そこに学校の全部が飲まれていくのが見える。
落ちては駄目だ!
そう本能が語りかけてくる。
片手で必死に体を持ち上げようとした。
しかし、高校生一人の体を持ち上げれるほど、体を鍛えていない。
頭の中を後悔が走る、嫌いでも運動部に入るべきだった、鍛えておくべきだったと。
徐々に、体が下がっていく。
「死にたくない……」
無意識に言葉が出る。
今までの記憶が走馬燈として頭に走る気がした。
……生きて……イツキ……
誰かの声が聞こえた。
とても懐かしい声が。
それはオレに力を与えてくれた。
「死んでたまるか……」
「死んでたまるか!!」
咆哮が走る。
腕が引きちぎれてもいい。
右腕に全身全霊の力を込める。
まさに、火事場の馬鹿力だった。
少しずつ体が上がっていくのを感じる。
「もう……少し!」
もう少しで左腕も地面に届く。
そうすれば、生きることができる。
左腕を上に伸ばした、限界まで。
届く!! だが……
「それ以上、この状態を維持しているわけにはいきません」
その言葉が聞こえると同時にオレの体はナニカに包み込まれた。
やさしい香りがする。まるで母のぬくもりのようだった。
そして、オレは引きずり込まれた。
この日、オレ達の日常は終わりを告げた。
これがオレの長い長い旅路の始まりだった。
☆
この日、六徳学園はこの世界から姿を消した。
多くの生徒と教師たちとともに。
○???○
「大規模召喚、成功しました」
「計画を次の段階に移行します」