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森の中

前話を改稿しました。

 

 風が木々の香りを運び、虫はけたたましく鳴いていた。

夜露だろうか、水がオレの顔に当たる。

それらがオレの意識を急速に覚醒させた。


「ここは……」

 体を起こし、辺りを見回すと信じられない光景が広がっていた。

そこは先ほどまでいた、都会とはまったく違う。

一面、木に囲まれており、まさしく森といった感じだ。


「たしか、オレはあそこに引きずり込まれて……」

 あそこでの記憶はまったく思い出せなかった。

訳が分からない。

ただやさしい香りがした、それだけだった。


「もしや!」

 木に頭を強く叩き付けた。

痛い……

夢ではなかったみたいだ。

強く叩きすぎた、ズキズキする。


「そうだ!」

 携帯で外部と連絡を取ろうと思い、懐から取り出す。


 災害対応携帯電話

 オレが使う携帯はその分類に属している。

頻発する地震などの災害時でも、問題なく使え、日本ならば地下深くなどの例外を除き、圏外にならないように開発された携帯だ。

唯一の欠点は少し重いことぐらいだ。

遭難時でも活躍した実績があるそうなので、ここでも使えるだろう。

 しかし、携帯の液晶に表示されていたのは、無情にも圏外のアイコンだった。


「そんな……」

 だとしたら、ここは日本じゃないのか。

たしかに、オレは日本にいた。

携帯の時計機能も、先ほどから1時間も経過していない。

眠らされていたとしても、瞬間移動でもしなければ、こんな短時間で国外に出れないはずだ。

そんな現象、ファンタジーやSFの世界だ、ありえない。


「助けを待つべきか、それとも自力でどうにかするべきか」

 この選択を誤れば、死に直結するかもしれない。

そう思うと、うかつに行動することはできなかった。


 とりあえず、今持っているものを確認しよう。

方針を決めるのはそれからでも遅くない。

 制服の全てのポケットの中をまさぐる。

今の持ち物は、昼食の携帯栄養食、残り一袋と生徒手帳、携帯電話、財布、そして、ボールペンぐらいだ。

水がないのは致命傷だ。ここは暑くないので、すぐに熱中症になるわけではないのが、唯一の救いである。


どうするべきだろうか。


『ここはきみがいた世界じゃないよ、助けを待つのは無駄じゃないかな』


 声が響いた。

それは、声変わりをしていない少年のような声だった。


 これが、こいつとの出会いだ。

最低の状況だった、しかし、この出会いは最高の出来事だった。

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