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何気ない日常

 何気ない日常、それが何よりも幸福だった。


 朝六時、枕元に置いてある携帯が、小さくアラームを鳴らす。

オレは気合を入れて、起き上がった。

 まだ寝ていたいが、そういうわけにはいかない。

ハンガーにかけてある制服に着替え、オレの一日が始まる。


 今日も日課の朝のニュースを聞きながら、二人分の朝食を作り始めた。

いつもと変わらず登校をし、勉学に励むのが高校生であるオレの仕事だ。

まあ、最低限しかするつもりはないのだけども。


「おはよう、今日も早いのね」

 この家で二番目に起きてくるのは母だ。

いつものように挨拶を返した。


「今日の朝ごはんは何かしら?」

「トーストと目玉焼き」

 オレは二人分の朝食をテーブルに並べる。

この家は六人家族だが、オレは二人分しか作らない。

姉と弟、父の分を作るのは母の仕事だ。

なぜ、こうなったかは覚えていない。

いつの間にかこうなっていた。


「たまには、姉弟で登校したら?」

「オレは好かれてないので」

「そんなことはないと思うわよ?」

 オレには三人姉弟がいる。

一つ上に姉、そして、一つ下に双子の妹と弟がいるが、関係はあまりよくない。

むしろ、悪いといってもいい。

 一日で顔を合わせるのは夕食のときのみだ。

そのときも会話はほぼないのだ。

中でも、姉と弟とはもう一年はまともに会話していない。

父と母はそれをいつも心配していたが、高校生の姉弟なんてこんなものだろう。


 朝の星座占いのコーナーを見る。これも日課のひとつで、オレはふたご座だ。

実際はあまり信じていないけど。

今日の運勢は……十二位だった。

すぐさま、チャンネルを変えた。

これは見なかったことにしよう。

よし!この番組では三位だ。


 軽い世間話をしながら、食事を終えると、二階から物音が聞こえた。

おそらく、誰かが目を覚ましたのだろう。



 鉢合わせしないよう、学校に行くことにする。

準備が完了したので、玄関で靴を履いた。

「いってきます」

返事を待たずに、オレは家を出る。

家の中から母のいってらっしゃいの声が聞こえた。



 家の前で、携帯を取り出し、歩数計の機能を起動させる。

わずかに、カウントされていた歩数をリセットさせた。

「今日の目標は1524歩にしようか」

そして、オレは学校に向かって歩き出した。



 私立六徳(りっとく)学園。

オレ達が通う学校は全国でも長い歴史を持つ学校だ。

なんでも、その歴史は江戸時代にさかのぼるらしい。

このあたりでは、そこそこの名門校で、選んだ理由は家から電車を使わなくても通えるからだ。

大体、徒歩十五分ぐらいだろうか、この近さはとても魅力的だった。

死ぬほど受験勉強を頑張ったかいがある。


 満員電車は嫌いだ。ていうか、好きなやつなどいるのだろうか。

いるとしたら鉄道マニアかな。


そんなたわいもないことを考えながら学校に向かう。


 つい、数週間前までは街路樹に紅葉が色づいていたが、すでに枯れ落ち、少し寂しい感じがした。

秋も終わりに近づき、少し肌寒くなってきたが、まだコートを着る季節ではないだろう。


 学校に到着した。

歩数計を確認したら、液晶には1488と表示されていた。

「誤差三十六歩か」

昨日は1300で1233だったから、なかなかの結果だ。


 これもオレの日課で、自分が目標にした歩数で学校に向かうというものだ。

小学生の頃から続けており、かれこれ十年はやっているだろう。

人から見るとただの奇行にしか見えないだろうな。

実際、妹にも気持ち悪いと何回も言われているし。

卒業までには、平均誤差が一桁になるようにしたいな。


 校門を抜けると、いつもそこには五十嵐先生が立っている。

初老の今年で定年を迎える先生だ。

しかし、今日は立っていない。聞くところによるとインフルエンザかなにかで、今週は学校に来れないらしい。

 教室には寄らずに、直接図書室に行く。

ホームルームが始まるまでここで時間を潰す。

 カバンの中から、最近気に入っている漫画の単行本を取り出した。

オレはどちらかというと単行本派だ。次巻の発売日は一か月後だ

とても待ち遠しい。


 これがオレのいつもと変わらない日常だ。

多分これからもこれは変わらないと思う。


 そのはずだった、今日までは……

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