旅立つ前の数日2
「こんなものでいいかな」
「いいと思うよ」
オレとイリスはこの一ヶ月にお世話になった部屋の最後の掃除をしていた。
ベッドはオールさんが寝ていたが、リチアさんがほかの部屋に彼ごと移動させている。
あれから五日は経つがオールさんはまだ目覚めていない。
脳に損傷があるわけじゃなく、心の問題だとリチアさんが言っていた。
綺麗になったといっても、床や壁に付いた傷はそのままだ。
それを見ていると、この一ヶ月のことがとても懐かしく思える。
今日はまだ時間がある。二度と戻ることがないかもしれないのだ、村の中を見て回ろう。
イリスは掃除に疲れたと言い、リビングで寝転がっているので、一人で行くことにした。
リチアさんはテーブルで本を読んでおり、集中しているみたいだ。
あの本はリチアさんも知らなかった書庫の隠し金庫にあったもので、歴代の室長、プラータが遺した様々な資料で数十冊ある。
オレも読んだのだが全て暗号化しており、読めなかった。リチアさんも解読に手間取っており、時間があればあのように解読に勤しんでいる。
外に出ると、オレは深く深呼吸をする。
この村の澄んだ空気ももう吸うことはないのかもしれないから。
村にはオレがこの村で過ごしてきた痕跡が多数残っていた。
白の闘いで付いたものもあれば、修業で付いたものもある。
特にすごいのは白との闘いで空けてしまった大穴で、オレが修理をしたのだが、穴を塞ぐだけの不格好のものだ。
他にもオレがした不格好な修理が村のあちこちにある。
本格的な修理は本職に任すため、その費用として幾つか魔石を置いていくことにしている。
リチアさんは要らないと言っていたが、それではオレの気が済まなかった。
村の入口の方に行くとそこには町から運ばれてきた荷物が積まれている。
今、村人たちがこの村に向かっているらしく、荷物だけ昨日届いたのだ。
総出の大移動のため、村人が到着するのに時間が掛かっている。
オレとイリスは村人が到着する前に村を出ることを決めた。
オレたちはよそ者だ。リチアさん以外の人たちに受け入れられてくれるかわからない。
互いに不快な思いをするかもしれないので、その前に出ることにした。
陰口などの悪意は無視できるんだが、ストレスが溜まるので避けることにしている。
川の方にも行きたいが昨日川遊びをしたのでやめておく。
白との闘いの前に約束したのだがずっと先延ばしになっていた。
その時、リチアさんも一緒だったんだが、少し刺激が強すぎた。
薄着だったので、彼女の服が透けて、もう……
詳しくは言わないが、破壊力抜群だった。
その視線に気づいて、照れた顔はさらに高威力だったけど。
村での最後の時間はとても穏やかだった。
そして、旅立ちの日が来た。




