逃走劇
戦闘なんでちょい加速
熊との追いかけっこは続いてる。
だが、やはり人間と動物では動物のほうに軍配があがるようだ。
まったく振り切れそうにない。
やばいな……このままじゃ、こっちの体力がもたない。
『おかしいよ』
突如、幼竜が疑問を投げかけてきた。
『さっきから向こうとの相対距離が変わっていない』
距離が変わっていない?
たしかにおかしい。
こちらのスピードは間違いなく落ちている。
何故だ?
ある可能性が頭をよぎる。
まずい!どうにかしないと!
賭けに出るしかない。
目まぐるしく動いている視界の中で、条件に合うを木を探す。
見つけた!
オレが探していたのは大小、二つの木だ。
あれならいける。
全力で走りながら、オレは跳び上がり、小さな方の木の枝に足を掛けた。
さらに、それを踏み台にし、大きな木に向かい跳んだ。
届いた!
巨木の枝につかまることができた。
懸垂の要領で体を持ち上げる。
枝の根本に体を寄せ、木の幹に背を預けた。
『すごいすごい!』
幼竜は興奮気味に声を上げる。
自分でもすごいと思う。
人間やればできるものだな。
本日、二度目の火事場の馬鹿力だ。
オレはどこかの星の王子様のようだ。
『でも、どうして木に登ったの?』
「あいつはこっちが疲れ果てるのを待っていたんだ。そうすれば抵抗ができず、喰えると思ったんだろう」
かなり頭のいいやつだ。気が付くのが遅かったら、詰んでいただろう。
「ありがとう、お前のおかげだ」
こいつがいなければ終わっていた。
『どういたしまして、でもほとんどが君の力だよ』
称賛に照れているようだ。頭の中の幼竜が身を捩じらして照れていた。
下を覗き込むと、熊はまだあきらめておらず、こちらを見上げている。
登れるものなら登ってみろ!
◇???
初めまして本体さんです。
彼らは知らないみたいですが熊と遭遇して木に登るのは正解ではないんです。
実は熊の中には木に登るのが得意な種類がいるからです。
どうにかこの情報を伝えてあげたいんですが、あいにく電波が悪いみたいで分体さんにうまく届きません。
頑張ってこの状況を打開してほしいものです。
◆
『まだ下にいるよ、諦めの悪い奴だな』
たしかにそうだ。
何か、手があるのか?
注意深く観察してみる。
熊は木に手をかけていた。
まさか、この木を倒すつもりなのだろうか?
不可能だ、いくら熊でもこの木は直径一メートルはある。
次の瞬間、熊は器用に木を登り始めた。
マジかよ!
やばいやばいやばい!
パニックに陥る。
あいつがここまで登って来るのに時間がもうない。
さらに上に登るか?
だが、それもいずれ追いつかれる。
飛び降りて、また走って逃げるか?
逃げ切る自信がない。
万事休すか。
フェイスフラッシュ!




