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HOPE  作者: 滝 陽水
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第六章 捕虜

第六章 捕虜



翌日はいいタイミングで休日であった。薫を除いた四人は〝クレスト〟に集合していた。

薫は大学に用事があるとかで来るのは夕方になるとのこと。来るまで綾乃はログインするなとのお達しがあったので、仕方なく輝と翔はマスターの手伝いを、綾乃と明日香はお茶を楽しんでいた。

昼を過ぎてお店も落ち着きを取り戻したころ。

「しっかし、綾乃を捕虜に奪われるとはな。輝、居眠りでもしてたのか?」

マスターが輝をからかう。輝は俯いて悔しそうに歯を食いしばっていた。

「ま、マスター。あれは私が悪いんです。輝のせいじゃありません」

綾乃が慌てて言葉を挟む。

「お。綾乃ちゃん、輝をかばうなんてコイツは幸せ者だな!」

マスターは輝の頭をポンポン叩いた。しかし輝は微動だにしない。その様子にマスターは輝の脇をくすぐり始めた。

「ちょ…マスター!!」

たまらず暴れる輝。たまらず逃げ出す輝を捕まえるとマスターは真顔になり、

「…お前、落ち込んでるヒマあるのか?」

輝はマスターの目を見据えると、

「…情けないんだよ。俺自身が。女の子一人守ってやれないなんて…」

「はぁ?バカかお前。まだ結論は出てないだろ」

「バカってなんだよ!俺だっていろいろ考えてるんだよ!」

するとマスターは輝の胸倉を掴むと、

「考えて何になるんだよ!お前の頭で結論がでんのか?ああ?」

マスターは輝を投げ捨てると、

「奪われたら奪い返せ!女の子の一人や二人、死んでも守る。それが男ってもんだろうが!!」

輝は顔を伏せるとそのまま三階へと駆け上がっていった。

するとマスターは翔に向かって、

「翔、ここはもういいから輝に付き合ってやれ」

「…わかった」

翔は三階へ向かう。マスターは客席の綾乃と明日香にも、

「キミたちも付き合ってやってくれ。ミルクティのおかわりならメルダに持たすから」

「あ、ありがとうございます…」

綾乃は真っ赤になりながら明日香と共に三階へあがって行こうとすると翔が慌てて降りてきた。

「あ、綾乃、明日香!早く!」

翔は二人の手を引いて上がっていく。三階へ入るとそこには輝はいなかった。

「あれ~輝は?」

明日香の問いに翔は、

「それが僕が来た時には既にログインしているみたいなんだ。綾乃は先生から止められてるけど、僕と明日香だけでもと思って」

「よし分かった。手伝いにいこうか!」

「助かる!よし、明日香いくよ!」

コントローラーに飛び込む翔と明日香をソファから見送った綾乃。

モニターを付けて輝たちの動きを眺めることにした。



輝はログインすると真っ直ぐにブリッジに向かった。

ブリッジの端末の前ではアイがキーボードに伏せてうたた寝…というか寝ていた。

「おい…ちょっといいか?」

軽くアイの肩を揺すって起こすとアイは『ひゃぁ?!』と変な声を上げて飛び起きた。

そして輝の方を向いて敬礼すると、

「ハッ!何も異常ありま…ってなんだ、輝さんですかぁ」

そのままアイは椅子に崩れ落ちた。しかし、そんなこともお構いなしに輝は、

「起きて早々で悪い。昨日の綾乃のログイン時の動きを表示できるか?」

「はい。大丈夫ですよ、履歴は残っているはずです…あった。そこのモニターに出します」

モニターには青い光線と赤い光線が表示された。青い線は輝たち四人で赤い線が綾乃の線らしい。赤い線は最後に青い線と逆方向に延びて消えていた。

「アイ、この赤い線の先には何か施設は無かったのか?」

「はい、私も何度か偵察機を送ってみたんですが、赤い線が消えた周辺には特に何も見当たりませんでした」

「じゃ、まだ先か…」

輝はそう呟くとブリッジを後にして武器庫へ入り、手近にあったバズーカとマシンガンを持って森に駈け出した。



翔と明日香がログインすると、既に輝が走り去った後だった。

アイに同じ図を見せてもらった二人は、輝が一人で敵陣に乗り込むと見た。赤い線の延長へ向かうと読んで後を追った。

「でも輝って純粋だねー。焚き付けたマスターもマスターだけどっ」

明日香が羨ましそうに呟いた。

「そうだよね。普段あんまり喋らないからさ、何考えてるのかよく分からないとこあるんだけど、中身はけっこう純粋なんだよね」

と、同意する翔に明日香は、

「でもさ。もし、もしだよ。私が捕まったら、翔はどうする?」

珍しく自信なさそうに明日香が呟く。

「そうだなーって、どうして欲しいの?」

「どうして…って、もう!バカ!」

明日香はスピードを上げて先行した。翔は『アハハ』と笑うと離れないように後を追いかけた。



輝は森を真っ直ぐに進んでいた。

昨日攻略した拠点を過ぎて数分走ったところで、少しだけ開けた場所があった。

どこか不自然なその場所が気になった輝は、足を止めてその場を観察してみた。

(これは…隠してあるけどキャンプした後だ。何か燃やした跡がある。ヤツらがここで休憩してたのか?)

方向が合っていることを確信した輝は、更に森の奥へと走り出した。

すると突然輝の腕のリストバンド型端末が振動した。輝は操作して画面を呼び出すと、アイの姿が表示される。

『輝さん。たった今綾乃さんがログインされたようです。場所の位置情報を送ります』

データを受信した端末の画面に地図が表示される。これによると、輝の少し先に赤い点が動いていた。

(あと少しだな。俺一人だと奇襲するしかないか…よし!やってやる!)

輝は絶妙な距離を保ちながら赤い点の先に回り込むように進んだ。

ちょうど進行方向に回り込んだところで足を止める。そして輝はその場で息をひそめた。

(もうすぐここを通るはずだ。恐らくあの指揮官と機械兵だろう)

輝は再び地図画面を見ると、赤い点が止まっていた。

(くそっ。何やってんだ、さっさと来いよ!)

数分後、やっと赤い点が輝に向かって動き出した。

輝は画面を閉じると前方に目をやる。ちょうど機械兵が視界に入ってきた。そしてその後ろには後ろ手に縛られた綾乃の姿があった。

(くそ…コイツ!!)

思わず感情が昂ぶって前に出そうになる輝だが、なんとか思いとどまってタイミングを計る。しかし、思わぬことに気が付いてしまう。

(…あの指揮官の姿がない…?そうか!赤い点は綾乃しか示していない!しまっ…)

輝が気が付く前に頭に銃口が突き付けられる。ゆっくり振り返るとあの指揮官がライフルを構えていた。

待ち伏せで綾乃を奪還するはずが、逆に捕まってしまった。

輝は観念して両手を上げると、すぐに両手を縛られて綾乃と同様に機械兵に牽引される。

「綾乃…ごめん」

輝は肩を落として詫びた。しかし綾乃は、

「ううん。気にしないで。来てくれて嬉しかった…一人ですごく不安だったの」

「でも、綾乃がインしてるってことは薫さんは?」

「…ごめん。輝がマスターに言われてインしたでしょ?なんか申し訳なくって、追いかけてきちゃった」

「じゃ、薫さんはまだ…?」

輝たちの会話を聞いて機械兵は、

「@#$%&!!」

何事か叫んで銃口を突き付けた。どうやら『黙れ!』ということらしい。輝と綾乃は口を閉じて寄り添ったまま機械兵に引かれて歩いて行った。



輝と綾乃が連れて行かれる様子を薫はアイと共に艦内のモニターで眺めていた。そこにアイによって呼び戻された翔と明日香が加わる。

「…まったく。輝のヤツ、先走りやがって…」

薫は絞り出すように呟いた。翔ともその様子を確認すると、

「あぁ…輝まで捕まったのか。くそっ!」

明日香はしばらく黙ってみていたが薫の近くに立つと、

「どうします?…って言っても三人でなんとかするしかないみたいですけど」

「…そうだな。しばらく様子見だな。事が面倒になったから、慎重にならざるを得ない」

「…そうですよね。でも、今日が休日でよかったです。あの様子じゃ二人ともログアウトできそうにないし」

明日香の言うとおりだった。輝と綾乃は両手を封じられているので、ログアウト操作はおろか、緊急脱出ボタンすら押せそうになかった。救出しなければならないのは明白ではあるが、輝の先走りのせいか、救出対象が二人となってしまったので今度成功させなければ次はないことも容易に想像できた。

「アイ、こいつらに偵察機を張り付けておいてくれ。潜伏先とその規模が分かったら教えてくれ。それまでは全員待機だ」

薫の号令で翔と明日香はその場を離れようとする。

「翔、明日香。単独行動はするなよ?」

「分かってます。ちょっと先に腹ごしらえしてきます。長い作戦になりそうでだから」

と、翔はログアウトしていった。明日香は、

「私はちょっとシャワー浴びてくるわ」

そう言ってブリッジを出て行った。

薫は気になっていたことをアイに聞いてみる。

「ところでアイ。この映像ってどうやって撮っているんだ?」

「あぁ、それはコレでっす!」

アイが自慢げに取り出したのは…現物サイズの蚊だった。

「…は?それ蚊だよな??」

「へっへー。コレ私の自信作なんです!絶対ばれない偵察機、モスキートカメラ。略してモスラちゃんです!」

そう宣言するとアイはどこかで聞いたような名前の『モスラちゃん』を宙に投げる。すると自動的に羽ばたいてその場に浮いた。

アイはモニターの画面を変更すると、薫が表示された。どうやら今放ったモスラちゃんの撮った画像を表示しているようだ。

「蚊なんてどこにでもいるでしょ?だから絶対に怪しまれません!しかも画面は鮮明で言うことなしでし!」

薫は呆気にとられながらも、

「ま、まぁ、あまり接近させるなよ?思わず叩いてしまうかもしれんからな」

それもそのはず。超精細に再現しているため、蚊のイヤな羽音まで再現しているので、普通の人間なら音を聞いただけで叩いてしまうだろう。しかし、今はそんなことを言っている場合ではない。

アイは『そうですか?』と言いながらも『モスラちゃん』をしまった。そして言いずらそうに薫に向かって、

「それで…あの…」

「なんだ?」

「まい…いやメルダは元気ですか?」

薫はおかしなことを言うと思いながらも、

「ああ、メルダは元気にやってるが…それがどうかしたか?」

「あ、いえ。それならいいんです。ごめんなさい」

そういうとアイはコンソールに向かってキーボードを叩きだした。

首を傾げながらも薫は、

「それじゃアイ。よろしく頼むぞ」

と、言い残すと薫はブリッジを後にした。



輝と綾乃は機械兵に引かれて歩いていた。もうどれくらい歩いただろう、かなり遠くまで来てしまったようである。

指揮官がブツブツ言うのを聞き流しながら、また輝たちの方を時折振り向きながら機械兵は一定のリズムで歩いて、もう数時間が経過している。

そろそろ休憩をと思い、輝が申し出ようとした瞬間。森が開けて眼前に人工的な建造物が広がる。

(目的地についた…かな?)

輝は綾乃にアイコンタクトを送る。綾乃もそれに応えて、

(みたいだね…)

緊急事態がそうさせるのか、二人は無意識に手を握り合っていた。これが偶然にも意思疎通を促進していた。しかし、そんなことはお構いなしに指揮官は機械兵と輝たちを連れて建物の中へと入っていく。

しばらく歩いたところで指揮官とは別れて輝と綾乃は牢屋のような鉄格子の中へ投げ込まれた。手錠と足には重りをつけられた状態で。

「綾乃…大丈夫か?」

「うん。平気。輝こそ大丈夫?」

目の前に綾乃の顔があって、思わず赤面する輝。しかしすぐに持ち直し、

「で、どうしよっか。この状態ならお互いのボタン押せるけど…」

輝の言葉に改めて状態を確認するように周囲を見回す綾乃。確かにこの状態ならお互いのボタンは押せるが…。

「でも、どっちかが押したらどっちかは残るんじゃない?」

綾乃の言うとおりである。どちらかのボタンを押したら押された方はログアウトする。完全に同時に押さない限り、どちらかが残ってしまう。綾乃は更に続けて、

「大丈夫。きっと薫さんたちが来てくれる。それに…」

「それに??」

「ううん。なんでもない」

実は綾乃にはいろいろと腑に落ちないところがあった。

翔が付けたという『×』印。輝の話だと機械兵なのに途中で火を焚きながら休憩していたらしいこと。そして特にこの建物。コンクリートむき出しで普段綾乃たちが見ている建物と酷似している。とても未来の機械兵が立てたとは思えなかった。

綾乃がいろいろと考えを巡らせていると白衣を着た機械兵が見張兵に何か伝達した。見張兵はそのまま牢屋の中に入り、二人に鎖をつけて出るように促した。綾乃は不安げに輝と手をつなぎ、見張兵について行く。

程なくして一つの部屋に入った。

研究施設を思わせる部屋で、よく分からない機械がそこらじゅうに配置してある。綾乃と輝はその中央へ連れて行かれ、そこで部屋の鎖に繋がれた。

そこへ先程の白衣を着た機械兵が登場し、綾乃の後ろに立った。思わず身を固くする綾乃だが、鎖に繋がれているため、なんの抵抗もできない。その様子に声を出そうとした輝は、声を出す前に自分の後ろにも誰か立っていることに気が付く。確認しようと後ろを見ようとするが、その瞬間、背中に何か入ってくるような妙な感覚に襲われる。綾乃も同様に背中に何かを繋がれているようだ。

「なにをす…」

輝がやっとのところで声を上げようとした瞬間、目の前が真っ暗になったかと思うとそのまま気を失ってしまった。



「なんだと!!なぜもっと早く報告せん!?」

〝HOPE〟ブリッジに艦長の怒声が響く。アイが輝と綾乃が捕まったことを艦長に報告したのだが、さすがに艦長も予想していなかったようだ。

「どうしたものか…さすがにマズいな…」

艦長の態度にアイも緊張を隠せない。

「…あの艦長。そろそろ打ち明けてはいかがでしょう?」

アイは艦長の様子を伺うように呟いた。

「それだけはならん!そんなことをしたら彼らはもう力を貸してはくれなくなる…」

「…しかし…」

「ならんと言ったらならん!お前は引き続き綾乃君達の反応を終え!」

そう言い放つと艦長はブリッジを出て行った。

『はぁ…』と溜息をつくとアイは再びコンソールに向かう。

綾乃と輝を示す赤い点が止まっていることに気が付いたアイは、

「あ…よし。モスラちゃんたち!お願い!」

例の蚊型偵察機を放つと、続けて薫たちに連絡する。

すぐに三人はアイのもとに駆け付けた。

「見つかったのか?!」

薫の言葉にアイは、

「はい。いま目的地に到着したようです。モスラちゃんを向かわせましたので少々お待ちくださいね」

「どのくらいで映像が来るんだ?」

「この距離ですから、モスラちゃんの足ならあと五分もあればいいと思います」

「…早っ!徒歩で一時間はかかるよね?!」

思わず明日香が突っ込む。するとアイはドヤ顔で、

「ふっふっふ。モスラちゃんは高速移動も得意なんです♪」

(どういう構造をしているんだろ…)

と、翔が考えているとモニターで光っていた赤い点が突然消えた。

「ねぇ、反応が消えたけど…」

明日香がモニターを見上げながら呟いた。するとアイは、

「…あれ?おかしいですね。ログアウトしちゃったのかな?」

「ちょっと確認してくる」

薫はそう言い残すと即座にログアウトした。それとほぼ同時にモニターにはモスラちゃんからの画像が現れた。アイは忙しそうにコンソールを叩きながら、

「来ましたよー。なんか大きな施設みたいですねぇ」

翔は少し身を乗り出してモニターを見つめながら、

「ねぇ、反応があった場所までいける?」

「もちろんそのつもりです!ここからがモスラちゃんの本領発揮です!」

モスラちゃんが施設内に入ると同時に薫が帰ってきた。

「…ログアウトはしていなかったぞ。どういうことだ?」

するとアイは更にコンソールを叩きながら、

「そうですか…やっぱり。じゃ、ますますモスラちゃんに頑張って貰わないとっ」

偵察機はどんどん奥へと進んでいく。けっこう機械兵がいるというのにアイはお構いなしに進めている。

一部屋一部屋確認するように進んでいく。入るときはいいのだが、出るときに周囲の機械兵とニアミスすることがあって全員『ドキッ』としてしまう。

(間違ってぶつからなければいいが…)

薫の危惧は現実のものと…モニターの画面が部屋から出ようとすると、先にドアが開き機械兵が真正面にいた。

「わっ!」

アイは焦って方向を修正しようとする。なんとか衝突は避けたが、顔寸前のところをかすめるように飛ぶ。すると突然モニターが真っ暗になった。

「??どうした?」

薫はアイに問いただす。

「あちゃー。やられてしまったみたいです」

「…やっぱりか。だから蚊なんてやめておけと…」

薫が言い終わる前に、モニターに映像が復活した。薫が呆気にとられていると、

「ふっふっふ。こうなることも想定内です!モスラちゃんは常に十機ワンセットで飛んでいるのです!」

アイのドヤ顔は更に大きくなった。

「へーすごいねー」

翔が棒読みの感想を告げると明日香が、

「もっと奥から探ってみない?大事な施設って大体奥の方でしょ?」

不服そうな翔を気にしながらアイは、

「分っかりました!まずはいけるとこまでいっちゃいましょう」

そういうとモスラちゃんを一気に加速させた。モスラちゃんは見る見る進んでいき、やがて行き止まりに到着した。

「ん~行き止まりですね。じゃ、通過した部屋を片っ端から調べましょう!」

そういうアイに対して翔はモニター上部のマップを見ながら、

「いや、ちょっと待って。これまだ端まで行ってないよね?」

翔の言葉にアイもマップを見上げる。確かにモスラちゃんの位置は建物の半分くらいまでしか行ってないように見える。

「これさ。どっかに隠し扉とかあるんじゃない?探してみようよ」

明日香の提案にアイは、

「分かりました!じゃモスラちゃんのカメラ全部表示しますね!」

そういうとアイは猛烈な勢いでコンソールを叩きだし、次の瞬間にはモニターは九分割されていた。

三人はモニターを凝視してあるかもしれない『何か』を探していると、突然、二つ画面が暗くなった。

「ん?なんだ?」

薫はアイに問いかける。

「どうやら破壊されたようです…危ないから全機散会…って、ああ!」

画面は次々に消えて行った。どうやら侵入に気づかれてしまっているようだ。最後に残った一機を画面いっぱいに表示し、アイは必死に操作してなんとか施設の入り口まで帰ってきた。

「ふう。なんとか抜け出せそうですぅ…って、ああ?!」

アイは明らかにヤバそうな声を上げるので思わず薫は、

「どうした?!」

「…モスラちゃん、捕まったみたいです。コントロールできません」

「なに?!」

思わず声を上げた薫たちはモニターを見上げる。確かに今までの浮遊感は見られず、何かに固定されているようだった。

しばらく画面は止まっていたが、すぐに動きだして回り出すと意外なものを映し出した。

「…な…輝?綾乃?」

薫は絞り出すような声で呟いた。アイはすぐさま音声を伝えようとコンソールを叩くがすぐにモニターは消えてしまった。


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