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死者の告発  作者: 浅見カフカ


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16/29

宛名

「で、そのメッセージって何ですか?」

「さっぱり分からない、見当もつかない」

島田の問いに即答した千早は、軽自動車の薄っぺらい背もたれに体重を預けた。

「あっ、出て来ました」

笠木警察署の正面玄関から、画面では一方的に旧知の仲となった高木が姿を見せた。

隣には無表情の音尾が立っている。

島田は音尾から引き離すように、高木の腕を掴んで車に戻って来た。

千早が苦笑いで手を挙げると、音尾も同様の表情浮かべて小さく頭を下げた。

「千早さん、行きますよ」

島田はそう言うと強めにドアを閉めて運転席に座った。

千早は後部座席に戻ると、助手席の高木に名刺を渡して「千早です」と言った。

「ああ、シィさんから聞いてます。色々とありがとうございます」

面会で島田から聞かされていたお陰か、千早はすんなりと受け入れられた。

「音尾さんはもう疑ってませんよ」

「そのようですね。期限いっぱいは引っ張られたけれど」

思い出して苦々しい表情を浮かべた。

「とりあえずレストランに入りましょうか。高木くんも好きな物食べたいでしょ」

島田はそう言うと駐車場に車を停めた。

「シィさん、ここ高いんじゃ」

高木が看板を見上げた。

ファミレスのつもりだった千早も看板を見て腰が引けた。

「出所祝いよ」

「服役してねーよ」

高木がそう言うと島田は嬉しそうに笑った。

「調子出てきたね」

そう言って先頭を歩く島田の後ろを、男二人がのこのこと続いた。


席に着いてしまうと先程の弱気は何処吹く風で、高木は「ラガー、瓶で貰えるかい?」と開口一番ウェイトレスに言った。

「生じゃないんですね」

千早がそう言うと「炭酸のキツイところが欲しくてね」と歯を見せた。

「ほらほら、空きっ腹じゃ悪酔いするよ」

島田が差し出すメニュー表を皆で覗き込んだ。

「枝豆と冷奴」

「ハンバーグセットかな」

「じゃぁ呼びますね」

島田が呼び出しのベルを押すと、ビールとグラスをトレイに載せたウェイトレスが丁度到着した。

グラスをテーブルに置き、栓を開けた。

小さな金属音と、炭酸が爆ぜる音が涼しげに響いた。

テーブルの上に置かれた瓶の口から、白く細い煙があがった。

「勝利の狼煙だ」

高木はそう満足気に言うと、手酌で注いだ。

「それにしても、注いでくれないなら栓も抜かなくていいのになぁ」

高木はそう言いながら、一杯目を流し込むように飲み干した。

「栓は抜いて提供しないとダメなんですよ」

「え、どうして?」

千早の言葉に島田がスマホから顔を上げた。

高木はご機嫌で二杯目の手酌中だ。

「栓をしたままだと酒類販売業免許が必要になるんですよ。酒を売ったことになるんですよ」

「ああ、なるほど。栓を抜くとお酒を提供したことになるんですね」

「もうね、屁理屈ですよね」

千早はそう言って笑う途中で息を飲んだ。

「センですよ、セン!」

「どうしたんですか?」

島田は千早の大声に目を見開いた。

「ハリギリの別名ですよ。センノキと言うんです」

「あの、鈴木淳也さんが吊るされていた......」

島田は周囲に配慮するように、声を抑えて話した。

「木材となった時にはセンと呼ばれるんです。漢字で書くと部首が木でつくりが全です」

「!!」

島田は警戒するように周囲を見回した。

木全きまた市長ですよ、メッセージの宛名は」

千早は静かにそう言うと、今井加奈のノート開いて見せた。

高木も二杯目には口をつけずに、ノートを覗き込んで生唾を飲んだ。

ゴクリと言う音だけが場に響いた。


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