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君と歩いた、ぼくらの怪談 第1部  作者: tempp
第3章 5本の腕と向日葵のかけら

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23/61

『キーロ』と廃墟ホテル

 放課後、僕らは『ライオ・デル・ソル』でお茶をしていた。

 ここは新谷坂高校から20分ほど歩いたところにある遊歩道沿いの北欧風カフェ。白い壁に青いドアというさわやかな色合いのお洒落なカフェで、店内もオーク材の色合いを残した雲形の机が広々と設置されてところどころに観葉植物がうわっている。落ち着く雰囲気のお店。学校からもそれなりに離れているし少しお高めのカフェだから新谷坂の学生はあんまりこない。秘密は守れそう。


 飲み物を頼んで待っているとカラカランというベルの音とともに女性が入ってきた。

 ウェーブのかかった明るい茶色の髪、白いサマーニットに萌黄色のフレアスカートの大学生くらいの女性。服は明るい色相なのに、その表情は暗かった。


「キーちゃんこっち」


 ナナオさんが大きく手を振る。飲み物を追加で注文してまずは自己紹介。ナナオさんの友達っていうからなんとなく同年代だと思ってたけど、予想に反してキーちゃんさん、キーロさんは神津の大学に通う女子大生だった。


「キーちゃん、こいつボッチー。私とちょくちょく探検行くし怖い話とか詳しいから連れてきた。ボッチー、こっちはキーロさん。たまに一緒に廃墟とかいく」


 明るいカラーリングと廃墟がちっともつながらないけど、少し緊張しながらよろしく、と挨拶した。

 聞いてみると、ナナオさんも街BBSで開催される昼の廃墟オフには昔からちょくちょく参加しているそうで、そこでキーロさんと何回か出会って仲良くなったらしい。

 夜はさすがに親バレするとやばいから行ってないんだって。そりゃ高1で見ず知らずの人と外泊はまずいでしょ。


「それで、オフ会のこと詳しく話して?」


 キーロさんも最初は初めて会う僕に緊張してたみたいだけど、ナナオさんはそんな場合じゃないだろっていって、どんどん話を聞き出していく。

 キーロさんはきもだめしオフ会、通称キモオフに2カ月に一回くらいの割合で参加している。

 今回の『でりあ』さん主催のキモオフは2回目の参加。

 今回の逆城観光ホテルは前からいってみたかった場所だけど、車を持っていないキーロさんが夜に行くのは難しい。とはいえ知らない人の車に乗るのも危険。今回はホテルのある二東山(にとうやま)ふもとの街道沿いのコンビニまで行けば『でりあ』さんが車に乗せてくれそうだったので、渡りに船と行ってみることにしたそうだ。会ったことのある『でりあ』さんなら安心。彼氏同伴だし。それに知り合いの『くまにゃん』さんもいた。


 それでキーロさんはコンビニで『でりあ』さんの車に乗せてもらってホテルに向かった。21時にはキーロさん入れて8人のメンバーが集まった。

 メンバーは、キーロさん、『でりあ』さん、『でりあさんの彼氏』さん(みんな彼氏さんと呼んでた)、『くまにゃん』さん、『神津ペッカー』さん、『サニー』さん、『よっち』さん、『みちとし』さんの8人。

 この中で『くまにゃん』さんは何回もあったことがある人で、携帯も知ってる仲。『でりあ』さんと『でりあさんの彼氏』さん、『よっち』さんは会うのが2回目。他の3人は初めて会った人らしい。意外とメンバーは被るんだな。

 なお、キーロさん、『でりあ』さん、『くまにゃん』さん、『サニー』さんと半数が女性。


 それでキーロさん達は割れたガラスに気をつけながらホテルの中に入っていった。さすがに真っ暗だったけどだいたいの人は廃虚探索に慣れていて『神津ペッカー』さん以外はみんな懐中電灯を持ってきていた。

 でも、ホテルの廊下ってそんなに広いわけじゃなくて。8人で移動するのは大変だから、3グループにわけた。『でりあ』さんと『でりあさんの彼氏』さんが1組目、グーパーで適当に分けてキーロさんと『よっち』さんと『くまにゃん』さんが2組目、『サニー』さんと『みちとし』さんと『神津ペッカー』さんが3組目のグループ。

 それで、合流のときのために『でりあさんの彼氏』さん以外の全員でLIMEグループを作って登録した。彼氏さんはでりあさんと一緒だから、ということで入っていない。LIME自体もやっていないらしい。


「キーちゃん、探検の間は変なことはなかったのか?」

「『神津ペッカー』さんが男女同数だからカップルにしようってやたら言ってたけど、みんなで拒否したくらいかな。『よっち』さんも他のオフで1回あったことがあるし『くまにゃん』さんはちょくちょく会うから、なんとなく安心なグループ?」

「いや、廃墟自体のほう」

「うん、暗いしガラスの破片とかたくさん落ちてるし。危ないとは思ったけど他の廃墟と比べても特におかしなところはなかったかな」


 からり、と目の前のアイスコーヒーから氷がとける音が響く。

 他の廃墟っていうのもわからないけど、ともかく僕は2人の会話を静かに聞いた。


「あ、でも屋上の夜景はすごく奇麗だった。頂上の展望台ほどじゃないけど」


 逆城観光ホテルは二東山の中腹から神津湾に向かって建っている。海には神津海水浴場があって夏になるとこの辺では少し有名な白砂が長く続く海水浴場が開かれる。その広くて静かな海と砂浜に月が照り返していて、少し先の神津マリーナっていうボートの係留所やその周辺の倉庫街からの明かりもきらめいていたそうだ。

 とても幻想的できれいだった、とうっとりとした表情でキーロさんは言う。


「その逆城観光ホテルは行くと呪われるとかいう話はないの?」


 僕の質問に2人はキョトンとする。あれ? なんか変なこといったかな。


「あの、呪いのホテルとかなら他にも呪われたとかお化けとかの情報が探せばでてくるかなと思って。それと、さっきから全然怖そうな感じじゃないし」


 キーロさんは透明なグラスに水滴をきらめかせたジュースをストローでかき混ぜながら、少し考えて答える。


「逆城観光ホテルはそういう噂は聞いたことないな。どちらかというと廃墟目的の廃墟なの」

「私もあんま聞いたことないぞ。ホテルで死んだ人の幽霊が出るとかいう噂自体はあるけど、調べた範囲じゃ誰か死んだっていう情報はないし幽霊を実際に見たっていう話も聞かないしな。噂が一人歩きしてるってやつだと思う」


 甘酸っぱいジャムの乗ったクッキーをつまみながら、ナナオさんが呟く。

 廃墟目的?

 よくよく聞いてみると、廃墟にいくのは大きく分けて2つの目的があるらしい。1つは肝試しというか、お化けとかを見に呪われた廃墟に怖い思いをするためにいく廃墟。もう1つが廃墟に美しさやノスタルジーを感じる人が、それを感じるために行く廃墟。

 僕やナナオさんが好きなのは最初の呪いの廃墟で、キーロさんが好きなのは後の廃墟らしい。へー、そんなのあるんだ。知らなかった。

 そんなわけで、キーロさんたちは順調に廃墟を探検して何事もなく別れたそうだ。

 その後、キーロさんは『腕だけ連続殺人事件』の情報を探しに街BBSをのぞいて『くまにゃん』さんの腕の写真を見つける。画像自体は消えてたけど、BBSを見せてもらった。

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