表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『O-286. 萩-マラトンの戦い劇(主役は小早川ミルティ)』  作者: 誘凪追々(いざなぎおいおい)
幕の二:O-284. 二年目の停滞
20/115

2-① 春の演劇祭り:その1(地図あり)

<注意書き>

※本文中に古代ギリシャの地名や人名に、日本の地名や人名を併記していますが、これは古代ギリシャに馴染みの無い方向けに、連想しやすくしてもらえるようにとくっ付けてみただけのものですので、基本的に内容には関係ありません。ただし、なるべく似通った地名や人名を選んだつもりです。



<幕前>

     主役の独白

「我が輩の名はミルティアデス! 倭-ギリシャ民族の男で、まだまだ働き盛りの六十三歳である。つい先頃まで、津軽半島-ケルソネソスの主をしていたのだが、大陸アジアの全土を攻め従えたあの強大なるペルシャ帝国軍によって追い落とされてしまい、ついにここ長州-アッティカへ帰国することとなった。・・・あぁ、とても悔しいさ。我が輩の一族が三代に渡って築き上げて来た領土も、町も、城も、田畑も、財産も、人々も、名誉も、誇りも、全てだ! 全てを捨て去ってきたのだから・・・。

 しかし、不幸中の幸いと言うべきか、我が輩は倭-ギリシャ本土の強国・山口-アテナイ市の出身だ。最低限の財産と家族とこの身だけは、ここへ避難させることが出来た。このまま終わるつもりは毛頭ないぞ! 奪われたものは、必ず取り返す。そう、領土も、町も、城も、田畑も、財産も、人々も、名誉も、誇りも、全てだ! 全てをこの手に取り戻す!

 ああ、安心してくれ。我が輩はまだ負けていない。」



挿絵(By みてみん)


<O-283年><早春><山口-アテナイ市のミルティアデス邸にて>


    長女-エルピニケ(容光院)

「キモン、キモーン! そろそろ起きなさーい!」

    次男-キモン(小早川秀包)

「何だい? ムニャムニャ、姉さん・・・」

    長女-エルピニケ(容光院)

「朝ご飯が出来てるわよ、早く食べましょう?」

    次男-キモン(小早川秀包)

「ああ、もう朝か、ムニャムニャ、うん、ありがとう・・・」

    長女-エルピニケ(容光院)

「まだ目が覚めないの? お父さんは、もうとっくに出かけてしまわれたわよ。今日は民会の日だからね。」

    次男-キモン(小早川秀包)

「ああ、そうだね、ムニャムニャ、民会か、大人は大変だ・・・」

    長女-エルピニケ(容光院)

「何言ってんの、キモンだってあと二年もすれば、投票権がもらえるんだよ?」

    次男-キモン(小早川秀包)

「は~、まだ二年も先の話しか。」

    長女-エルピニケ(容光院)

「早く顔洗ってらっしゃい。」

    キモン

「う~ん、その前に姉さん、ムニャムニャ。」

    エル

「フフフ、はい、おはようの口づけ(チュッ)。」

    次男-キモン(小早川秀包)

「は~い、ムニャムニャ。」



    後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)

「おはよう、キモン。今日も運動場へ行くのかしら?」

    次男-キモン(小早川秀包)

「うん、民会の日は、大人がほとんど居ないから、凄い空いてるんだよ。」

    ヘゲシピュレ

「そう、お昼には帰ってくるのかしら?」

    次男-キモン(小早川秀包)

「うーん、今日はそのあと、そのまま音楽の先生んとこに行くかもしれないです。」

    後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)

「じゃあ、お昼ご飯を包んであげるから、持って行きなさいね。」

    次男-キモン(小早川秀包)

「うん、ありがとう。」

    長女-エルピニケ(容光院)

「キモンは最近、音楽の先生んとこ、よく通ってるよね。可愛い子でも居るの?」

    後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)

「あら、そうなの、キモン?」

    次男-キモン(小早川秀包)

「違うよ! でもまあ、先生がけっこう筋がいいって誉めてくれるんで、まあ、悪い気はしないよね。」

    長女-エルピニケ(容光院)

「気をつけなきゃ駄目だよ、キモン? あんたみたいな年頃の少年は、周りが放っとかないんだから。」

    次男-キモン(小早川秀包)

「もう、何ですか、それは。キモンはそんな恋愛脳じゃありませんから、ご安心を。」

    長女-エルピニケ(容光院)

「あんたが興味なくても、向こうはね、そうじゃないかもしれないんだから。」


    幼なじみ-エウティッポス(白井景俊)

「キモンくーん、キモーンくーん! 迎えに来たよー!」

    次男-キモン(小早川秀包)

「お、エウティッポスだ。じゃ、母上、姉上、行って参ります!」

    長女-エルピニケ(容光院)

「行ってらっしゃい、キモン。」

    後妻-ヘゲシピュレ(問田大方)

「怪我しないようにね、キモン。」


<O-283年><早春><山口-アテナイ市の運動場にて>


    幼なじみ-エウティッポス(白井景俊)

「あっ、やっぱり凄い空いてるね! ほとんど独占だよ! キモン君、今日は何から始める? 円盤投げ? 幅跳び? それとも徒競走?」

    次男-キモン(小早川秀包)

「そうだなぁ、じゃー、まずは軽く拳闘でもするか。」

    幼なじみ-エウティッポス(白井景俊)

「拳闘!? どこが、軽くなんだよ!?」

    次男-キモン(小早川秀包)

「殴るの禁止にすれば、軽いだろう?」

    幼なじみ-エウティッポス(白井景俊)

「拳闘で殴るの禁止なら、何もできないよ!」

    次男-キモン(小早川秀包)

「ほらほら、こうやって、肩とか胸とかで押すんだよ。」

    幼なじみ-エウティッポス(白井景俊)

「ちょっ、キモン君、なんだよこれ、猫がじゃれてるみたいだよ!」

    次男-キモン(小早川秀包)

「ほら、ほら!」

    幼なじみ-エウティッポス(白井景俊)

「もう、止めてって、もうっ! あはははは」


    青年a-レオボテス(毛利秀就)

「おいおい、市民が汗水流して心と体を鍛錬するっつう神聖な運動場で、女みてぇに戯れ合ってるおかまが居るぞ?」

    幼なじみ-エウティッポス(白井景俊)

「あ、おかしな人が来た。」

    青年a-レオボテス(毛利秀就)

「なんだぁ? おかしな人だーあ? 聞き捨てならんなぁ。ここは手力男-ヘラクレス神社に付属する、伝統と格式ある運動場だ。半端な気持ちでやられると、こっちのやる気も削がれるってもんだ。なあ、ヘルモリュコスよ?」

    青年b-ヘルモリュコス(魁傑)

「うむ、鍛錬は集中して真面目にやらんと、大ケガしやすくなる。ちんたらはいかんな。」

    青年a-レオボテス(毛利秀就)

「ほら、ヘルモリュコスもこう言ってんぞ?」

    幼なじみ-エウティッポス(白井景俊)

「さすがは、総合格闘技パンクラティオンで音に聞こえたヘルモリュコス、僕たちの世代で君に敵う者は居ないよね。けれどレオボテス! 君は違うぞ。君には、どんな競技でも負ける気はしないからな! ねぇ、キモン君?」

    青年a-レオボテス(毛利秀就)

「おっ、言うねえ、腰巾着のエウティッポスちゃんよ! だがよぉ、そんな偉そうな口叩いても、お前ら、津軽半島-ケルソネソスから逃げ帰って来たじゃねぇか。この玉無し野郎どもが。」

    幼なじみ-エウティッポス(白井景俊)

「どの口が言うんだよ? こっちがペルシャ人と殺し合いするってのに、援軍の一人も寄越さなかったくせに! そっちこそ、本物の玉無しだろう!?」

    青年a-レオボテス(毛利秀就)

「おっと、そいつを言っちゃあお仕舞いよ。ていうか、ほんと何で援軍出さなかったんだろうな。いや、ほんとご免な。」

    幼なじみ-エウティッポス(白井景俊)

「謝るのかよ?」

    青年a-レオボテス(毛利秀就)

「でも、それはそれだ。俺らが決めたこっちゃーない。大人連中に言っとくれ。」

    幼なじみ-エウティッポス(白井景俊)

「でも、君ん家は毛利アルクメオン家だろう? 親はなんて言ってるんだよ?」

    青年a-レオボテス(毛利秀就)

「親か? 親は、高千穂-オリュンポスの話しばっかしているさ。実は身内が一人、今回のに出られそうなんだ。槍投げの選手でな、これがまたえれぇー飛ばすんだ。」

    幼なじみ-エウティッポス(白井景俊)

「なんだよそれ?」

    青年a-レオボテス(毛利秀就)

「な、ヘルモリュコス? あいつはすげぇよな?」

    青年b-ヘルモリュコス(魁傑)

「うむ、あの人は確かに凄いな。本戦に無事出場できたら優勝するかもしれん。」

    青年a-レオボテス(毛利秀就)

「ほらな、こいつが太鼓判を押すくれぇだから、間違いねぇだろ? だがヘルモリュコス、おめぇは惜しかったな。総合格闘技パンクラティオンの選手には、一人強いのが居るからな。」

    青年b-ヘルモリュコス(魁傑)

「うむ、次の大会には必ず選手になってやるさ。」

    青年a-レオボテス(毛利秀就)

「おお、その意気だ。四年後っていやぁ、ちょうどおめぇも一番脂ぁ乗り切ってるだろうしな。」

    幼なじみ-エウティッポス(白井景俊)

「おいおい、異民族が僕らを滅ぼそうって、すぐそこまで迫って来てるってのに、君たちはずいぶん間の抜けた話しをしてるよねぇ?」

    青年a-レオボテス(毛利秀就)

「仕方ねぇだろ、四年に一度の大祭りの年だ。こんな時に戦争なんかやってたら、それこそ神罰が下るってもんだ。」

    幼なじみ-エウティッポス(白井景俊)

「でも、その神罰とやらも、異民族には全く効かないんだよね。」

    青年b-ヘルモリュコス(魁傑)

「おい、そこの小さいの! 高千穂-オリュンポスの神罰は、民族問わずだ! 不敬だぞ! 田舎で生まれ育つと、そうなるのか?」

    青年a-レオボテス(毛利秀就)

「お、ヘルモリュコスの旦那が怒ったぜ。こいつはなぁ、神々に舐めた口きく奴が大嫌いなんだ。さあ、どうする? 津軽半島-ケルソネソスの田舎もん。俺らと勝負せずに、また逃げやがるか? ん?」

    幼なじみ-エウティッポス(白井景俊)

「別に逃げてないだろ! キモン君、ご免、彼を怒らせちゃったみたいだ。これは、穏やかじゃない、どうしよう?」

    次男-キモン(小早川秀包)

「うーん、そうだなぁ。あそこまで言われて、こっちも逃げる訳にはいかないか。よし、わかった! じゃあー、拳闘での勝負なら受けてやる!」

    幼なじみ-エウティッポス(白井景俊)

「拳闘!? ねえ、キモン君、あっちにはヘルモリュコスが居るんだよ? 勝てる訳ないよ!」

    青年a-レオボテス(毛利秀就)

「おお、おお、こいつは驚れーた! さすがはキモン! さっき臆病者だなんて言って悪かったな。訂正するよ。おめぇさんらはいっぱしの勇者だ! よっしゃ、拳闘だな、受けて立とうじゃねーか。拳に革を巻け。で、どっちがどっちと戦う?」

    次男-キモン(小早川秀包)

「二人同時だ! ただし殴るのは禁止だぞ! ほれほれっ! ほれほれっ!」

    青年a-レオボテス(毛利秀就)

「おまっ! やめろ、こっち来んな! 殴らねぇ拳闘ってなんだよ! ただの押し競饅頭じゃねぇか! おいっ!」

    次男-キモン(小早川秀包)

「ほれほれっ! ほれほれっ!」

    青年a-レオボテス(毛利秀就)

「やっぱ、訂正だっ! 取り消しだっ! おめぇらはとんだ臆病もんだっ!」

    幼なじみ-エウティッポス(白井景俊)

「ハハハ、君は訂正が早すぎだよ! さすがキモン君! ハハハ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ