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第32話 思いがけない助け

 セシリーはぼうっと彼女の顔を見つめるベリンダに対して、ふん、と鼻で笑いながら言う。


「どいてくださらない? そこに立たれていると邪魔だわ」


「ああっ、ごめんなさい」


 そうして素直に道を譲ってしまう。

 セシリーはさも当然、というふうにベリンダの前を横切り、受付へと進んだ。

 彼女に続いて、その取り巻きたちもふん、と鼻で笑いながらベリンダの横を通り過ぎていく。


「あの、カーティスさま」


「ええ、なんでしょうか?」


「私ね、セシリーさまとお友達になりたいの。なにか策はないかしら?」


「……。はあ?」


 品行方正な騎士団長とは思えないような、ちょっと奇妙な声を上げた。


「本気ですか? あの高慢ちきな娘と友達に?」


 そうしてベリンダとセシリーへと交互に視線を動かす。

 気持ちは分かる。かなり奇妙なことだ。


「意外と気が合うような予感がするのだけれど。やっぱり子爵の娘と侯爵令嬢とは友達になるなんて無理かしらね?」


「なかなかに難しいと思いますが。特にセシリー殿は身分差にはかなりうるさい方なので。しかし」


 そうしてカーティスは頼もしい微笑みをベリンダへと向ける。


「しかし、君がそう望むならなんとかしてみよう。私の叔母の娘が、確かセシリー殿と懇意にしていたはずだ。なんとかお茶の席になど君も一緒に出られるようにしてみよう」


(もうっ、本当に分からない! カーティスったら私のどこが好きなのかしら? なにか特別なエピソードがあったわけでもなにもないのに!)


 しかしそんなことを思っておりなどおくびにも出さず、そっと微笑んでおいた。

 どうしてここまでしてくれるのか。

 人の気持ちとは本当に分からない、と悩んでしまうのだった。


「ああっ、そうだ申し訳ない。私はこれから大切な打ち合わせがあったのだった。ひとりで戻れるかい?」


「ええ、全く問題ありません。ここへもひとりで来ましたし」


「できれば誰か人を……」


 そう言って見回すが、頼めるような人の姿はなかったようだ。


「やっぱり、私がせめて王宮の外まで送ろう」


「なにを言っているのですか? 大丈夫です。さ、さ。大切な会議があるんですよね? 遅れては大変です、行ってください」


「そんな、私のことを気にしてくれるとは。君は本当に優しい子だな」


「普通です」


 そう言いながら笑顔で手を振ってカーティスを見送った。

 そうしてため息を吐き出して、用事は済んだとばかりにその場から立ち去ろうとしたのだが。


「ちょっと待ちなさいよ」


 そう言われたかと思うと、手首を引っ張られ、物陰へと連れて行かれてしまった。

 そうして、壁に押しつけられ、セシリーの取り巻き五人に周りを囲まれた。かなりの至近距離だ。


「ちょっと、どういうことなのよ? カーティス様と対等に口を利いているなんて!」


 ああ、なるほど。そういうことかと合点がいった。

 カーティスに憧れている娘は多いのだ。あれだけ顔が良くて背が高くて騎士団長で、なら当然なのだが。


「ちょっとした知り合いで、親切にしていただいただけです」


「はあ? ちょっとした知り合いですって? なによ、それ」


「だいたい、あなたなんなの? この前の舞踏会で畏れ多くもアンディ王子のダンスの誘いを断った娘よね?」


「子爵の娘だって聞いたわよ? きっと躾ができていないの」


「そんな躾ができていない豚が、王宮を歩き回っているなんて許せないわ」


「そうよ。ちょっと懲らしめた方がいいわね」


「先ほどだってセシリー様の邪魔をして……!」


「もう、いるってだけで不愉快だわ」


 そう詰め寄られ、なんだかだんだん腹が立ってきてしまった。


「うるさいわね! なんなのよ、よってたかって! 自分ひとりじゃなにもできないくせに」


 元は悪役令嬢なのである。そこら辺は舐めてもらっては困る。


「懲らしめるってなにをする気? 殴り合いなら負けないわよ?」


「殴り合いなんて……なんて野蛮な」


 娘のひとりがまるで野生の獣を見るよう目つきとなる。


「じゃあ、なにをする気? 別に私、あなたたちになにも危害を加えていないじゃない。懲らしめられる覚えなんてないわ。なんならこれから危害を加えてもいいけれど」


 さすがにその言葉には怯んだ様子の娘たちだったが、自分たちには数の利があると思ったのか、引き下がる気はないようだった。


「まあ! なんていうことでしょう? 恐ろしい……!」


「その言い様だけでも罪に問えるのではない? 私たちを侮辱しているわ。警備兵を呼んで捕まえてもらえば」


「お父さまに言いつけてやるわ。いい? 私のお父さまは侯爵の位にあり、国王陛下の覚えもめでたく……」


(ああ、面倒くさい……)


 このまま隙を衝いて走って逃げようかと思っていたときだった。


「そんなところでなにをしている?」


 不意に男性の声が響いてきた。その姿は、娘たちに邪魔されて見れないが、きっとアンディかサミュエルかクリフかメルヴィンかジェイクだ。ここは王宮内だし、自由に歩いているとするとジェイクあたりだろうか。。


(さすがにヒロインね。もう、こういうときにはフラグを立てようと色んな人が……)


 さっき現れたのはカーティスだったけれど、次は誰だろうと思ってそちらを見ると。


「ここは通路だ。このように集団でいられると邪魔なのだが」


(え? まさかヒューバート様?)


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