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第20話 ハッピーエンドを迎えたいのは

すみません、先ほど間違えて21話を先に投稿してしまったので、修正しました。

21話も今日中に更新します。

「もうっ、ベリンダってばおかしいんじゃない? どうしてこうもフラグ立ちまくりなのよ」


 寝台の上のクッションを壁に投げつけると、側にいたイタチのランドルフは『そうカッカせずに』と宥めようとする。

「仕方ないだろ、だってベリンダはヒロインなんだぜ」


「ヒロインってそんなものなの? 必ず誰かと結ばれないといけないの」


「分からないけどさ」


「どうして分からないの? だって、あなたはこの世界の管理人じゃないの?」


「うぅーん、管理人っていうのはちょっと違うなあ。道先案内人ってところじゃないかな?」


「もう~、役に立たないわね」


「別に君の役に立つために存在しているわけじゃないから」


 冷たい言い様が、かえって心地よくもある。

 だって、この世界の人々はベリンダに優しすぎる。なんでそんな言動や態度を許しちゃうのよ、とむしろ苛立ちが募るくらいだ。


「あと攻略可能で、会っていないのは学者のメルヴィンと、幼馴染みのジェイクくらいね」


 ベリンダは先ほど壁に当てたクッションを拾い上げて、それを抱えたままでベッドに座った。


「ふたりとも絶対に会うような気がする」


「まあ、今までの流れからしてそうだろうなあ」


 ランドルフはベリンダと視線が合うようにするためか、その白い体をくねらせながらするりと暖炉の上に座った。


「ねぇ、一体どうしたらいいの? この世界にはバッドエンドはないの?」


「俺個人の意見として、だが。あるにはあると思う。だけどね」


 ランドルフは一旦言葉を句切ってから、もったいつけたように言う。

「これもあくまでも俺の意見だが、かなり悲惨な終わり方だと思うぜ?」


「悲惨でもなんでも、セシリーがハッピーエンドを迎えられればいいんだけど?」


 だって、セシリーのエンディングなんてそれこそ毎回悲惨だったわよ、とまくし立てる。

 花冠の女王になれなかったことを両親に罵られ、親戚にも呆れられ、取り巻きたちも今まで協力していたのは無駄だったわね、と言われて離れていってしまう。

 そうしてしばらく父親の命令によりしばらく国を離れ、外国で暮らすようにということになり、満足な従者もつけずに船に乗り込まされてしまうのである。

 それがノーマルなバットエンディングで、4回はそれだった。


 そして、もっと悲惨なエンディングが2パターンある。


 花冠の女王となるためにと、取り巻きのひとりの娘が勝手にお金をばらまき、あるいは恐喝するようなことをして票集めをしようとしたのだが、なぜかセシリーが主犯格として逮捕されるのだ。冷たい牢に入れられたままエンディングを迎えた。

 しかしそれならまだいい。

 もっとも悲惨だったのは、花冠祭りの騒ぎの中で、少し問題がある取り巻きの娘とその従者に逆恨みを受けて追いかけられ、逃げ回った挙げ句に井戸に落ちて死ぬというエンディングだった。

 あれは痛かった。もう二度とあんな目には遭いたくない、と思うと知らずに体が震えた。


「……まさか、いくらなんでもヒロインが死んで終わるってことはないでしょう?」


「ああ、それはないと思うけどな。悪役令嬢ならともかく」


 こちらがあの最悪エンディングのことを思い出していると察したのだろう。

 しかしながら悪役令嬢とはいえ井戸に落ちて死ぬなんて、あの死に方はない。ヒロイン以外には厳しい世界である。


「ベリンダのバッドエンドってどんなバッドエンドかしらね? せいぜい、誰とも結ばれなかった上に家が破産して王都に住めなくなって、一家で地方に移り住むとかじゃない?」


 それでもあの家族のことだ、どこに行ってもそこそこ幸せに暮らしそうな気がする。


「とにかく、今度こそはセシリーに花冠の女王になってもらわないと! そうでないとせっかくヒロインに転生した意味がないわ」


 ベリンダが花冠の女王にならないこともあった。

 でも、そのときには今年の該当者なしになってしまい、決してセシリーが花冠の女王になることはないのだ。


「意味がない……。普通だったら、6回も悪役令嬢だったんだからヒロインになった次こそ幸せになるわ、と思うものじゃないのか?」


「そのことにはもう議論の余地はないわ。それにもう、ヒロインがいい男と結ばれてエンドは飽きたわ」


「飽きたって。自分は経験していないじゃないか、ハッピーエンドってやつをさ」


「そうなのよね。本当ならばまたセシリーに転生して、セシリーがハッピーエンドになるっていうのを経験したかったのだけれど。でもね、六回もそれに挑んで無理だったんだからもう諦めたわ。これはね、セシリーとは別人に転生してセシリーの幸せを叶えろ、と、そういうことだと思うの」


「まったくそういうことではないと思うけどなな? もしそうだったらもっとセシリーに身近な人物に転生すると思わないか? 取り巻きのひとりだとか」


「ああ、まあ、それはそうね」


「何度も言うが、ベリンダとして誰かと結ばれてハッピーエンドを迎えればいいじゃないか。誰かいないのか? この人って人が」


「いるにはいるけれど……」


「おっ! 誰だよ!」


 ランドルフは期待に満ちた瞳で、ベリンダを見つめてきた。そんなに期待されも困るのだけれど、と少々ふて腐れたように呟く。


「……ヒューバート様」

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