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第19話 フラグを折れ!

「ここには遊びに来たようなつもりだったのにまさか手伝いをさせられるとは。本当はそんなもの断って帰りたかったのに、わざわざ手伝ったのです。どうですか? 慈愛の心に満ちていると思いませんか?」


「あぁ……それはただの親切心であって、慈愛、という言葉はそぐわないような気がするのだが」


「あら、そうでしたか。私を教養のない娘だと非難なさるんですね?」


「うーん、そんなつもりはないのだがね」


 あの心が広いサミュエル国王が苦笑いである。

 これは成功と心の中でほくそ笑んだ。やはりこれくらいやらないといけないのだ。

「どうやら君の機嫌を損ねてしまったらしい。無理に私の採寸など手伝わせて悪かったね」


「いいえ、お気になさらずに。しかしながら、わたくしは忙しいのでではこれで失礼いたします」


 そうしてつかつかと扉まで歩き、少々乱暴に扉を開けて通路に出て、強めに扉を閉めた。

 我ながら感じの悪い嫌な女だったなと思いながら通路を歩いて行った。

 途中すれ違ったリリアの父親に、もう用事は済んだようだから自分の作業に戻ると告げると、事情を知らない彼は『ああ、悪かったね』と言ってサミュエル国王が待つ部屋へと抱えきれないほどの布を持って行ってしまった。

 もしかしてサミュエル国王が機嫌を損ねて服を作らないと言い出すかもしれない、と思うと申し訳なかったが、これもフラグを折るためなのである。ごめんなさいと心の中で土下座をしておいた。

 そうして作業場に戻ると、ちょうどリリアとリリアの母親たちが戻ってきたところだった。

 そこに居たクリフと、その他サミュエル国王のお付きたちに驚いていた一行に事情を説明すると、それは大変なことだと慌ただしく動き始めた。

「リリア、私は今日はこの辺りで失礼するわね。なんだか忙しそうだし、居ても邪魔になるだけだと思うから」


「邪魔、ということはないけれど、そうね、きっと作業をしていても落ち着かないわね」


「ええ、また明日来るわ」


「でも……。騎士様に今日は迎えに来るまで店に居るように言われていたじゃない?」


「大丈夫よ。ああ、彼が来たら私は先に帰ったと知らせておいて」


「でも……」


 言い淀むリリアに、なんと言おうかと迷っていると、


「リリア、早く布を運ぶのを手伝ってちょうだい! お待たせしてはいけないわ」


 リリアの母がそう急かし、リリアはなにか言いたげながらその場から離れていった。

 そうして作業中の道具と帽子や布をさっさと片付けて、店から出て行こうとしたところで声がかかる。

「お迎えがないなら私が家までお送りしましょう」


 クリフだ。余計なフラグが立ってしまった。


「いえ、大丈夫です。歩いて三分のところなので」


 本当は二十分くらいかかるのだがそう言っておいた。

 カーティスが護衛についているものの、あの一件から身の危険を感じるようになったなんてことはひとつもない。家に変な手紙が投げ入れられたことはあるけれど。


「歩いて三分ならば余計に気にされる必要はない。お送りします」


「いえいえ、結構です」


「いえいえ、そうおっしゃらずに。それに……」


 クリフはこほん、とひとつ咳払いしてから腰をかがめてベリンダの顔を覗き込み、そして熱っぽい視線を向けてきた。


「あなたのことをもっと知りたい。少しの時間でもいい、お話できないか?」


 ベリンダより年上で、その上お金も名誉もあるような人が遠慮がちにそんなことを言ってくるなんて。思わずきゅんとなりそうになってしまったが。


(……。もう完全にフラグ立っているじゃない! もうっ、なんでベリンダばっかりモテるのよ!)


 今は自分がベリンダなんだから、自分がモテているんだとはとても思えないのであった。


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