挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
冒険者になりたいと都に出て行った娘がSランクになってた 作者:門司柿家

空回りする娘

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

34/40

三十二.――どうして冒険者になろうと思ったの?


 ――どうして冒険者になろうと思ったの?

 赤髪の少年は、その問いにはっきりとした答えを持たなかった。
 憧れた誰かがいたわけでもなかったし、一獲千金を夢見たわけでもなかった。ただ、両親が死んで一人きりになった時、自分にはこれしかないと思ってしまったのだ。

「他にやりようがなかったのさ」

 と、困ったように笑う赤髪の少年を、エルフの少女は澄んだエメラルド色の瞳でじっと見た。口元はわずかに微笑んでいた。

「そうかあ……うん、わたしも同じ。他には考えられなかった」
「けど不思議だな。君はエルフだ。冒険者なんて一番遠い仕事だと思ってたけど」

 エルフの少女はくすくす笑った。

「わたしが初めてじゃないわ。あなただって知ってるでしょ? エルフの英雄を」
「そりゃ、まあ。けど君以外のエルフなんて見た事もない。やっぱり珍しいと思うな」
「外の世界を見たかったの。色んな所に行って、色んな人と会ってみたいの。遠い所にね」
「俺からすればエルフ領は遠い国だけどな。行ってみたくもあるよ」
「そう? 行ったってきっと退屈よ?」

 そう言ってエルフの少女はうまそうにホットワインを舐めた。赤髪の少年は苦笑して頬杖を突いた。

「どうかな? 俺にとっては知らない事ばかりだ。きっと楽しいと思う」
「ん……そうかもね。知らない事はわくわくするものね。エルフにはエルフの知らない事があって、人間には人間の知らない事がある。かぶらなくて当然かあ」
「それなら、互いに教え合える、かな?」
「ふふ、それって素敵だね」

 ふと後ろの方から冷たい風が吹き込んで、周囲が騒がしくなった。
 赤髪の少年が振り返ると、Sランクの冒険者たちが入って来るところだった。
 話をせがむ若手の冒険者たちに囲まれて、軍帽をかぶりインバネスを羽織った大男が豪快に笑っている。その脇に立つ口ひげを蓄えた長身の男は、呆れたように目を伏せていた。
 エルフの少女はほうと嘆息して、銀色の髪の毛をかき上げた。

「“撃滅”に“しろがね”か……いいなあSランク。わたしもいつかなりたい。そしたら、もっと遠くに行けそう。誰にも邪魔されないで」
「はは、君ならいつかなれるさ」
「あなたは?」
「俺は……どうかな。大した腕でもないし」

 誤魔化すように笑う少年の頬を、エルフの少女は両手で左右からむぎゅうと押した。

「そうやって変に謙遜するの、悪い癖だよ? そういう時のあなたの笑顔、わたしは嫌い」
「む……ごめん」
「ふんだ。ここ奢りね!」
「ええ……まあ、いいけど……」

 赤髪の少年は困ったように頭を掻いた。エルフの少女はいたずら気に笑い、少年の肩に手を置いた。

「明日も頑張ろうね」
「ああ……けど、あいつら遅いなあ」

 少年は少しドギマギしながら周囲を見回した。
 さっきまで気にならなかったのに、まだ来ない仲間の事を考えると、急に少女と二人きりなのが照れ臭くなった。

「どうしたの? もじもじして」

 エルフの少女は赤髪の少年の顔を覗き込んだ。
 エルフの白い肌がホットワインで少し火照ったように薄桃色に染まっている。不思議と甘いように香る吐息が鼻腔をくすぐり、少年は余計に困惑した。耳たぶが熱くなるような気がした。
 少女のエメラルド色の瞳がいたずら気に光った。

「ふふ、あなたは可愛いねえ」
「……からかわないでくれよ」

 赤髪の少年は口をもぐもぐさせて、ぷいとそっぽを向いた。


  ○


 夜明け前、ベルグリフはダンカンとグラハムと連れ立って村の周囲を歩いていた。今日は朝靄が特に濃く、空は白んで明るくなっていたが、少し先も見づらい有様だった。

「今日は歩きづらいですな」
「ああ……雲がかかったのかも知れないな。まあ、ゆっくり行こう」

 朝靄で体が湿るような心持だった。前髪が重さを持って額に貼り付くようだ。
 やがて日が昇り始めると、靄の間を縫うようにして光が棒になって射し込んで来た。急激に靄が晴れて行くようで、色あせていた周辺の風景が、蘇るように鮮やかな色彩を増していく。夜露で濡れた平原の草が朝日を照り返してきらきらした。

 グラハムが嘆声を漏らした。

「美しい光景だ……エルフ領ではあまり見られないな」
「ふむ? エルフ領は自然が豊かだと聞き及んでおりますが、違うのですか?」

 ダンカンの問いに、グラハムは苦笑した。

「エルフ領はほとんどが森なのだよ。このようになだらかな平原に朝日が輝くのを見る事はそうはない」
「成る程……」
「私も森は好きだ。しかしあちこちを見て回ると、魅力的な風景というものは森の他にも多くある」
「某にもよく分かります。旅の醍醐味ですな」

 旅人二人が語るのを、ベルグリフは静かに聞いていた。
 確かに、この前のボルドーへの旅は短いながらも楽しかった。見慣れた景色の外に出る事はいつでも抗いがたい魅力をそなえている。
 今はトルネラを離れるわけにはいかないが、もしもこれが落ち着けばまた、と考えてしまう。そうなったら今度は何処に行ってみようか。

 やがてすっかり朝靄が払われ、遠い山の稜線に漂う薄雲の向こうに太陽が上った。天頂は青空が広がり、透明な月が夜の名残をとどめるばかりだ。
 三人は村へと戻って行った。

 グラハムがトルネラを訪れてから数日が経った。すっかり男所帯になったベルグリフの家は、アンジェリンたちが帰って来ていた時とはまた違った雰囲気に包まれていた。
 彼らはベルグリフの習慣に合わせて毎日朝と夕方に見回りがてら散歩をし、それから鍛錬をした。
 グラハムの剣技は決して派手ではなかったが、最小限の体の動きと、爆発的な剣との感応を利用した苛烈なものだった。
 自分の目指すところはここに近い、とベルグリフは朝夕、彼と立ち合い、その剣を何とかものにしようと奮闘していた。

 村人たちはこの老エルフに面食らったが、ベルグリフとダンカンの執り成しで、恐る恐るではあるが少しずつ交流をしていた。
 グラハムは物静かで口数は少なかったが、高圧的な態度は一切取らなかったし、噂で聞く、エルフ特有の難解な哲学に基づいた受け答えもしなかったから、村人たちは徐々にグラハムを受け入れつつあるようだった。

 エルフの姫は未だ現れない。
 グラハム曰く、エルフは森での生活が殆どの為、森から出ると方角が分からなくなる者が一定数いるらしい。エルフの姫もそうなのだろうという事だ。

 羊の毛刈りはまだ終わらず、ケリーの家は毎日大騒ぎである。
 ベルグリフは今日も子守を頼まれて、赤ん坊を抱きながら子供の相手をしていた。若者も少しずつ手際がよくなっており、羊が暴れる回数も減っているようだった。
 ダンカンとグラハムは魔獣退治に赴いている。
 今のところはまだ魔獣は森の外に出て来る事はないが、いずれ数が増えれば外に溢れて来る可能性が高い。少しずつでも数を減らしておかなくてはならない。

 ケリーが汗を拭いながらやって来て、隣に腰を下ろした。

「やれやれ、今年は特に忙しいな」
「そうだな。まあ、若い連中が仕事に慣れるまでの辛抱だよ」
「はは、違いねえ。なあ、ベルよ、グラハムさんはここを気に入ってくれてんのかね?」
「そう思うけどな。少なくとも悪い感情は持っていない筈だよ」
「そうかあ……エルフに気に入ってもらえるのは何だか嬉しいな、おい」
「その割に、お前もまだ恐縮してまともに話せてないじゃないか」
「だってよお……何話せばいいか分からんじゃないか。俺はお前と違って剣なぞ振らんのだし」
「別に世間話で構わないよ。エルフだからっていつも高尚な事ばかり考えているわけじゃない。彼らだってものは食べるし、夜になれば眠るんだから」
「……じゃあ、今度一緒に飲もうって誘うからよ。連れて来てくれよ」
「はは、分かった。きっと彼も喜ぶよ」

 トルネラは公国領の極北に位置する。山向こうはエルフ領なのだが、北の山は高く険しく、山越えを試みる者はほとんどいない。エルフ領との交易は専ら東側の街道を使って行われている。
 だからトルネラはエルフ領に最も近く、同時に遥かに遠い所といえた。
 村の子供たちは寝る前のお話で山の向こうのエルフの姿や生活を聞かされながら大人になる。
 近い所にいる筈なのに、絶対に会う事はない筈の存在が突然現れたとなれば、嬉しいけれども、どう接していいか分からないのも仕方があるまい。

 陽が高く上り、昼餉の時間が迫っている。
 森に出掛けたダンカンたちもそろそろ帰って来る筈なのだが、今日は何か手間取っているのか戻って来る気配がない。グラハムも一緒だから心配はしていないが、遅ければ気になる事は気になる。

 腹を減らして泣き出した赤ん坊を母親に返し、子供を見ながら昼餉の皿を並べるのを手伝っている所に、若い農夫が大慌てで駆けこんで来た。

「ベルさん、ベルさん!」

 ベルグリフは眉をひそめて牧童を見た。

「どうした? 魔獣が出たか?」
「違う違う! ひとまず来てくれ! またエルフだ! それも女だ!」

 ざわつく一同を背に、ベルグリフは農夫に連れられて走った。小道を横切り、村の外に出る。
 刈り入れが終わった秋まき小麦の金色の畑と、青々と揺れる春まき小麦の畑が連なっている所に、女が一人立っていた。

 成る程、エルフだ。
 不機嫌そうに細められた目の瞳は錆浅葱色で、滑らかで艶のある銀髪は不躾に頭の後ろで結わえられている。
 胸にはさらしを巻き、毛皮のカーディガンを羽織っている。短パンのベルトに細剣を下げ、編み上げのブーツを履いており、あまり肌を露出する服を好まないエルフにしては珍しい恰好である。

 エルフの少女は明らかに不機嫌だった。歩み寄ったベルグリフを一瞥し、ふんと鼻を鳴らし、鋭い目つきで睨み付けた。

「人の顔を見て逃げ出すたぁ、人間てのは随分失礼な生き物だな?」

 ベルグリフは嘆息して頭を下げた。

「申し訳ありません。皆、エルフに慣れていないのです。どうかご勘弁を」
「で、お前は何だ? ここの顔役か?」
「私はベルグリフと申します、ただの農夫に過ぎません」
「ハッ」

 エルフの少女は可笑しそうに笑った。

「何処の世界に剣をぶら下げた農夫がいるってんだよ。馬鹿にするのも大概にしな、おっさん」

 ベルグリフは腰の剣に手をやって苦笑した。

「自衛が必要な時には、鋤を剣に持ち変える事もあるのですよ」
「へえ……」

 少女の瞳がギラリと光った。

「自衛、ね。おれとやろうってのか?」
「まさかまさか」

 ベルグリフは慌てて剣を鞘ごと地面に置いて敵意のない事を示した。
 細剣の柄に手を置いていたエルフの少女は、詰まらなそうに構えを解いた。

「チッ、つまらねえ……」

 いやに好戦的な少女に苦笑しつつ、ベルグリフは口を開いた。

「貴女はエルフ領西の森の王、オベロン殿の御息女では?」

 途端、疾風の如き素早さで少女はベルグリフに近づき、胸ぐらをつかんだ。鋭い眼光がベルグリフを射抜く。
 驚くほどの威圧感だ。流石のベルグリフもやや気圧されて息を飲んだ。
 しかし毅然と少女を見返し、口を開く。

「やはりそうなのですね?」
「おい、テメエどこでそれを聞いた?」

 少女が勢い込んで凄んだ時、きゅうと間抜けな音がした。少女は驚いたように目を見開き、慌ててベルグリフから離れて腹を押さえた。

「こ、この! 鳴るんじゃねえ!」

 少女は自分の腹をぼすぼす叩くが、腹はまたきゅうと鳴った。

「……お腹が空いておられるのですか?」
「ち、違う! 別にレンバスがなくなって昨日から何も食ってないとか、そういうのじゃ……そ、それに別に食わなくたって」

 少女は赤くなって取り繕うように喚き立てた。ベルグリフは微笑んだ。

「……丁度昼食の支度をしていたところです。貴女さえよろしければエルフの姫君と同席する名誉を賜りたいのですが」
「ぐ…………そ、そこまで言うなら仕方がねえ……」

 気遣われたと察したのだろう、エルフの姫は悔しそうに口を曲げ、しかし空腹には勝てないらしい、大人しくベルグリフに促されて村へと入った。


  ○


 状況が状況なので、ベルグリフはエルフの姫を自宅へと案内した。ケリーの家に連れて行っては村人が恐縮して静かになり、葬式のような雰囲気になってしまうだろう。
 まして姫君は不機嫌である。そんな時に村人が怖がって静かにしていては余計に怒る可能性がある。

 男所帯と化している家の中は少し散らかっているので、庭先のテーブルに向き合った。
 ベルグリフがひとっ走りケリーの家に行ってもらって来た昼食は、テーブルの上でうまそうに湯気を立てている。肉と野菜の煮込みに、バターを塗った薄焼きパンだ。

 エルフの姫は始めこそ警戒したようにゆっくりと食べていたが、次第に勢いを増して、やがて夢中になってぱくついた。余程腹が減っていたと見える。
 会話らしい会話もなく、食事を終えた後はエルフの姫の表情も少し和らいでいた。空腹で殺気立っていたという事らしい。

 ベルグリフは向かいでとろんと目を閉じるエルフの姫を見た。
 グラハムの言によれば、彼女があちこちで魔王を討伐しているという。先ほど胸ぐらをつかまれた時の威圧感は確かに凄かった。しかし、中途で食料をなくして腹を減らすような有様で、よく旅ができたものだとも思う。
 豪胆なのか無鉄砲なのか、はすっぱな喋り方も相まって、どうにもエルフの姫という高貴なイメージと合わなかった。

「お口に合いましたか」

 ベルグリフの問いかけに、少し眠そうにしていたエルフの姫君は、はっとしたように目を開いた。

「ま……まあまあだな……」
「さようですか」
「……チッ」

 バツが悪そうに頬を掻く姫を見て、ベルグリフは笑った。

「差支えなければ御尊名をお伺いしても?」
「その前に。お前は何でおれの事を知ってるんだ、おっさん?」
「グラハム殿に伺ったのです。あの御仁も現在はこの村に」

 エルフの姫は驚いて立ち上がった。

「お、大叔父上が!? 冗談じゃねえ!」

 姫は慌てて着物を翻し、逃げ出すように踵を返した。
 その時、低く通る声がした。

「マルグリット」
「うっ」

 エルフの姫は固まった。そうして恐る恐る声のした方を向く。グラハムが憮然とした表情で立っていた。後ろでダンカンが怪訝な顔をしている。
 グラハムは無言で手招きした。エルフの姫はびくりと震え、先ほどの勢いなど嘘のようにおずおずとした足取りでグラハムに近づいた。真っ直ぐと射抜くようなグラハムの視線に、まともに顔を見られないようだ。

「お、大叔父上……なんでここに」
「お前があれらの魔力を辿っている事は分かっている」

 グラハムは腕を組んでため息をついた。

「私が間接的には悪いとはいえ……どういうつもりだ? オベロンも心配している。あまり勝手な真似をするな」

 エルフの姫――マルグリットはムッとしたように顔を上げて、今度は真っ直ぐにグラハムを睨み付けた。

「父上がおれを心配? あり得ないね」
「滅多な事を言うものではないぞ。子を心配せぬ親などいない」
「いる。父上がそうだ。おれの事なんか見ちゃいない。西の氏族の事しか考えていないんだ」
「王はそうあらねばならぬのだ。オベロンの気持ちも分かってやれ」
「おれの気持ちはどうでもいいのか? 我慢してずっと箱入りやってればよかったと?」

 マルグリットは忌々し気に吐き捨てた。

「冗談じゃないぜ、大叔父上。おれは絶対におれの事を認めさせてやる。もう奴らを三つ倒したんだ。南の森を枯らした奴も、廃坑に潜んでいた奴もな」
「……マルグリット、どれだけあれらを屠ろうとも意味はない。お前は表面だけしかなぞれていない。口だけの名声など無意味だ」
「知ったこっちゃないね。大叔父上はそれで名を上げた。おれはあんなちっぽけな森で一生を終えるなんて御免だ。もっと遠くの景色を見たいんだ」

 マルグリットはそう言うと、くるりと踵を返した。

「今度の奴も倒せば……大叔父上だっておれを認めざるを得ないさ」

 言うと同時に、マルグリットはとんと地面を蹴って疾風のように駆け去った。
 グラハムは俯いて目を閉じた。

「……せがまれたとて、旅の話などするのではなかったか……」

 ベルグリフは遠慮がちに近づき、口を開いた。

「グラハム殿……大丈夫ですか?」
「……見苦しい所を見せてしまったな。すまぬ」
「いえ……彼女はグラハム殿の親族なのですか?」
「姪孫だ。オベロンは私の甥だからな……」

 ベルグリフは驚いた。この英雄に流れる血はエルフの王族の血脈だったのだ。
 しかし、エルフは本来静かで精神面に重きを置いた生活を旨とする種族である。金と名誉を行動原理とする冒険者などは最も相容れない筈の職業だ。
 それを選び取ったグラハムは、エルフ領でどのような扱いを受けたのだろう。
 そして、そんな彼に憧れて剣を取り、今エルフ領を飛び出したマルグリットと相対した気持ちはどんなものであろう。
 彼の時折見せる暗い影は、そんな苦悩が積もってできたものなのかも知れない、とベルグリフは思った。

 グラハムは嘆息した。

「ともあれ、私にも責任がある。あれを追わねば」

 グラハムの言葉に、ダンカンが一歩踏み出した。

「ならば某も!」

 しかしグラハムはかぶりを振った。

「これは私の仕事だ。それに……身内の揉め事を見せるのは忍びない」

 グラハムはそう言って歩き去った。
 それを見送りながら、ベルグリフはダンカンに言った。

「嫌に遅かったが、どうしたんだい?」
「若者たちを先に帰してから、グラハム殿と森のさらに奥を目指したのです。しかしどうやら妙な魔力で空間がねじ曲がっているようでしてな、グラハム殿も最奥まで到達するには時間がかかるという事で戻って来たのです」

 つまり、森が半分はダンジョン化しているという事である。事態は次第に深刻になっているようだ。
 しかし、今しがたマルグリットが森へと向かい、グラハムがその後を追った。すでにマルグリットは魔王を三体も討伐したという。グラハムの技量は言うまでもない。
 これは自分たちが出るまでもなく幕引きになりそうだ、とベルグリフは顎鬚を撫でた。

「こんな事を言っては悪いかも知れないが……こんな時にグラハム殿やマルグリット殿が来てくれたのは天の配剤かもしれないなあ……」
「某も同じ事を思いもうした。あの二人がいればいかな魔王とてひとたまりもありますまい。それにしても、あのエルフの剣姫、かなりの腕前ですぞ。是非とも一度立ち会ってみたいものだ!」

 相変わらずのダンカンを見て、ベルグリフは苦笑した。こんな時にも自分のペースを崩さずにいられるこの男が羨ましいと思った。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ