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同窓会

「悪いな。送って貰って」

 F市内の居酒屋の駐車場でS15を降りた陸斗は、運転席のまどかに礼を言った。

「構いませんよ。ちょうど帰り道ですから・・・でも、帰りはどうするんです?」

「ああ、芳文に頼むよ。」

「そうですか。じゃあ、同窓会楽しんでくださいね。」

 まどかはニコリと笑うとS15を発進させ、帰路についた。

 この日。陸斗は高校の同窓会に参加した。

 

「臼井君、久しぶりー。」

 宴会が始まり、席でビールを飲みながら料理に夢中になっている陸斗に、元クラスメートの女がにこやかに話しかけた。

「ああ、久しぶり。」

「私のこと覚えてる?」

 茶髪の女は酒が回り、真っ赤になった顔でわざとらしく聞いた。

「井沢だろ?」

「正解!仕事はどう?出世した?」

 満面の笑みで親指を立てた井沢は話を続ける。

「いや、辞めて今は煎餅屋に勤めてる。」

「え!なんで!?大手メーカーなのに・・・」

 さらりと答え、ビールの注がれたグラスを傾ける陸斗に驚愕の表情を向ける。

「ま、いろいろあってね。」

「お給料とか安くなったんじゃない?・・・あ、注ぐよ。」

 そう言って井沢が空になった陸斗のグラスにビールを注ぐ。

「おお、わりぃ・・・多少はな。でも、趣味をやる分には問題ない。」

「趣味って・・・ゲーム?」

 当時の陸斗は学校が終わると、よくゲームセンターに入り浸っていた。

「いや、サーキット走行。」

「へー・・・それってレースとかそういうやつ?」

 井沢は珍しい物を見るような顔で聞いた。

「まあ、簡単に言うとね。」

「・・・ってことはレーサー?」

「いや、レーサーじゃなくてただ単に腕試しをしてるってところかな。」

 あまりに飛躍した結論に陸斗は苦笑いで答える。

「それって何か意味があるの?」

「んー・・・無いね。」

「じゃあ、なんで走ってるの?」

「楽しいから。まあ、単なる自己満足だな。」

「小出が来たぞー!」

 入り口付近にいた男子達が騒ぎ出す。

「お。」

 それを聞いた陸斗が入り口を見ると、穏やかな顔をした巨漢がクラスメート達に歓迎されながら会場入りしていた。

「井沢、わりぃ。ちょっと外れるわ」

「うん。臼井君、小出君と仲良かったからね。」

 そう言って席を立つ陸斗に井沢は笑顔で手を振った。


「みつき、久しぶり。」

 陸斗は嬉しそうな顔で、席についた小出みつきの隣に座った。

 みつきは高校卒業後。県外に進学し、そのまま就職してしまったため、陸斗と直接顔を合わせるのは数年ぶりである。

「おー、臼井。久しぶり。」

 みつきも穏やかな顔をほころばせて友人との久々の再会を喜んだ。

「・・・転職してその後どうだ?」

 事情を知るみつきは少し心配そうに聞く。

「問題なくやってるよ。そっちは?」

「なかなかブラックだよ。今日も上がるとき、デスクに書類が乗ってたけど、見なかったことにして帰ってきた。」

「大変だな・・・」

「ま、近い内にこっちに戻ってくるよ。」

 眉間にうっすらとしわを寄せる陸斗にみつきは笑顔で答えた。



「ここ最近、上機嫌だね。陸斗。」

 夜の社峠に集結した煎餅屋岩木(自家用)w。楽しく雑談をするメンバーの中で芳文は、煙草の煙でドーナツを作る陸斗に声を掛けた。

「ん?そうか?」

 肺の中の煙を出し終えた陸斗は、通常より微笑み成分がわずかに多い顔を芳文に向けた。

「まあ、先週の同窓会で仲が良かったやつに久々に会ったからな。」

「その喜びようだと、相当仲が良かったんですね。」

 いつもと微妙に様子の違う陸斗に違和感を覚えるまどかが、顔を出す。

「ああ。毎日のように遊んでたからな・・・お。」

 その時、陸斗達がたむろする運送会社前を一台の黒いインプレッサ WRX STI GRBが通過した。


 そして、数分後。頂上のY字路で折り返したであろうハッチバックのインプレッサは道路脇に停車した。

「あ!」

 インプレッサのドアが開き、中から降りてきた見覚えのある巨漢に陸斗は目を見開く。

「みつき!」

「やっぱり臼井だったか。」

 陸斗をはっきり認識したみつきはわずかに微笑んだ。

「随分、早い再会だな。」

「近いうちに戻るって言ったろ?」

 親友との早すぎとも言える再開に嬉しそうな陸斗と、ドヤ顔のみつき。

「・・・知り合い?」

 芳文が口を開く。

「例の友達だ。」

 陸斗はその場に居合わせたメンバーにみつきを紹介した。


「軽く一緒に走らない?」

 一通りの自己紹介と軽い雑談を終えたみつきが背後のインプレッサを親指で指さし、陸斗を誘う。

「いいけど・・・お前、スポーツ走行なんて出来るのか?」

「ああ。・・・実を言うとちょくちょくサーキットとかに行ってたんだ。」

「なるほどな・・・じゃあ、行くか。」



「どう?」

 峠を往復し、インプレッサを降りたみつきは後ろを走っていた陸斗に感想を求める。

「まあ、初めてにしてはだいぶ安定してたと思う。」

 陸斗は煙草を吸いながら先ほどの走りを思い返した。

「そうかい?」

「ああ。走り込めば割と早い段階で手ごわい相手になるかもな。」

「ホント?じゃあ、落ち着いたらまた走りに来るよ。」

 そう言ってみつきはインプレッサに乗り込もうとする。

「もう帰んのか?」

「まだ引っ越しの片づけが終わってなくて・・・」

 驚く陸斗にみつきは苦笑いで返す。

「そうか・・・じゃあ、まあ、またな。」

 特に掛ける言葉も見つからない様子の陸斗は適当に別れを告げた。

「うん、じゃあ。」

 そして、みつきは愛車に乗って峠を後にした。

「なんか掴み所のない不思議な感じの人ですね。」

 みつきを見送った陸斗の隣で、まどかが率直な感想を述べる。

「まあな。学生時代からあんな感じだった。」

 陸斗はみつきの人柄を思い返し、フフッと笑った。

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