事前準備は用意周到に
「すみません、遅くなりまし……?」
遅れてやってきたエヴァンとノエリアがドアを開けると、今にも死にそうな表情を浮かべて、床に崩れ落ちたリオが目に飛び込んできた。
「え、何ごと……??」
二人が顔を見合わせていると、遅かったな、とエディが声をかけた。
「あ、すみません。少し授業が長引いてしまって、来るのが遅くなってしまいました。……それより、その……」
エヴァンがちらりとリオを見たので、エディはにっこりと微笑んで答える。
「あぁ、リオ先生には今、討伐訓練の引率をお願いしたところだから」
エディの言葉に、二人はまた、顔を見合わせる。
(どういうこと?引率をお願いされただけでここまで落ち込む?)
(なんで突然リオ先生?引率をお願いする予定だった先生の候補には入ってなかったはずじゃ)
それぞれそんなことを思いながら、もう一度エディの方を見るが、彼は相変わらず、にっこりと笑みを浮かべたままだった。
「「わかりました」」
((……これ以上は突っ込んで聞いたら絶対ダメなやつだ))
二人は何かを悟り、それ以上何も言わずに、小さく頷いた。
新に登場した二人に一縷の望みをかけていたにも関わらず、結果、どうにもならないことを悟ったリオはしくしくと壁際で泣いていた。
そんなリオを不憫に思いつつも、シエラは時間は有限、と打ち合わせを始めた。
最終的に学園側から討伐訓練に参加する生徒の人数や引率・手伝いの教師や生徒の人数、必要になりそうな食料品や、念のために持って行く、薬や食料・その他携帯品に関して、テキパキとエディと確認していく。
「万が一に備えたポーションや薬については、私の方でマジックバックごと管理するようにします。基本的にはよほどのことがなければこちらからは支給・使用はしないということでよろしいですね?」
「構わない。そのあたりの対処方法についても、きちんと授業で教わっているし、そのために必要なものは各自で用意をするよう、周知もしてある。今回参加する生徒の中で、金銭的に自分たちで用意することが難しい者には、学園側で用意したものを渡すことになっている」
「わかりました。まぁ、効果は劣りますが、そのまま使用できるタイプの薬草も自生しているのが確認できていますし、ポーションなどの調合に必要な器具類についても、念のため向こうへ持っていきますので、場合によってはそちらを貸し出して、自分で調合するのもいいかと思います。リオ先生もいますしね」
シエラがリオを見ると、彼女は小さく、ふえ?と首を傾げていた。
「最初、契約の際にお伺いした『生徒自身で対処する術を身につけられているかどうか、有事の際にどういった行動をとるのかを確認することが目的である』という基本方針は今も変更はない、ということでよろしいですね?」
リオの様子に少し苦笑しつつ、シエラがエディの方に向き直って確認すると、彼は問題ない、と頷いた。
「まぁ、毎年色々と文句は出てくるが、これまでもこの基本方針できているし、今年は特に、国王からもこの方針でよい、了承を得ている」
「そうですか、それでは安心ですね」
さらりとシエラが流したことに、トーカスが驚く。
「え、国王の了承取ってきてるとか、もっと驚くところじゃねーの!?」
エディの後ろで話を聞いていた、エヴァンとノエリアが、大きくこくこくと頷いていたが、シエラはきょとん、とした顔で、なんで?と首を傾げていた。
「だって、今年はさっきのバk……んっん!殿下が参加されるわけですし、一応、身内ともいえるエディ様の方で最悪の事態を想定してしたうえで、きちんと了承が得られてからじゃないと話を進められないじゃない。少なくとも、エディ様がこの件をとりまとめされている時点で、そこの了承は取っていることが大前提としてギルド側は動かせてもらってるし」
「今、バカって言おうとした?」
トーカスがジト目でシエラを見てくるが、彼女はトーカスの言葉を無視し、そうですよね?と同意を求めるようにエディを見た。
「まぁ、国王陛下もこの学園の卒業生だしな。自分も同じように経験してるから、特に問題はなかったが、一応、事前にどこでいつ、どういう日程でやるのか、については共有はしてあるし、確認もしてもらって、了承は得ている」
「……ちなみに、王家の方から護衛をもしかして秘密裏に出されたりは」
「しない。一応、自分の力だけで切り抜けられるかどうか、も、王としての資質があるかどうかを判断する材料として見られることになっているからな」
エディの言葉に、下手に知らない人間が混ざって判別が出来なくなる事態は避けられるか、とほっと安心していると、トーカスは少し驚いたように、ちゃんとしてるんだな、と呟いた。
「……言っておくが、マーカスが特殊なだけで、今の王も王妃も、ちゃんとした人だぞ」
エディがトーカスに言うと、トーカスは小さく笑いながら、ほんとかなぁ、と呟いた。
その後もシエラとエディはお互いに書類をチェックしながらすべての項目に目を通し、問題がないことを確認し終えると、シエラは最後に、とエディに書類の入った封筒を手渡した。
「これ、ギルドマスターから預かってきた書類です。中に入っているのは、ギルド側で用意した、離れた場所で護衛にあたる、冒険者のリストになっているとのことでしたので、念のため、目を通しておいてください」
「わかった。後で確認しておく」
封筒の中身をちらりとみると、エディは小さく頷いた。
「そう言えば、昼食はまだ食べてないよな?」
エディが聞くと同時に、シエラのお腹がぐぅ!と大きな音を立てて鳴った。
「…………ハイ」
顔を赤くしながら、小さな声でシエラが言うと、彼はククっと笑う。
「せっかくだ、食堂にでも食べに行くか。もうこの時間なら人も少ないだろうし」
壁にかかった時計を見ると、すでにお昼の時間はとしては遅い時刻を指していた。
「そうですね、では、みんなでお昼食べに行きましょう」
そうして一行は、学園の食堂へと向かった。
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