シエラを頼ったばっかりに
無事に生徒会室に戻ってきた一行は、疲れ切った表情を浮かべながら、倒れ込むようにして椅子に座った。
「しっかし、突然マーカスが現れた時はびっくりしたけど、ある意味、あそこで現れてシシィ達の意識がそれてくれて助かったな」
トーカスがふぅ、とため息をつきながら言う。
「ほんとに……どうやってあの場を切り抜けるか考えてたけど、いい案が全然思いつかなかったから、正直助かったわ」
頭をガシガシと掻きながらシエラが答える。
「しっかし、今回はシエラについてくのが当たりだったとは。俺の勘も鈍ったもんだぜ」
「は?」
トーカスの言葉に、シエラがギラりと目を光らせて睨みつけると、彼は慌てて翼を嘴の前で交差させて、何も言ってませんよ?という表情を浮かべながら、視線をそらした。
「それにしても、リオ先生も大変ですね。正直、カンニングしようとしてたところをコーカスに見られてたって言うのに、あんなに堂々と嘘つくなんて」
ため息交じりにシエラが言うと。リオは苦笑いを浮かべながら頭を振った。
「……学園内では身分は関係なく、とは言っていますが、完全にその意識をなくすことはやっぱり難しいですから」
侯爵家の子息であるノアと、子爵であるリオ、そして平民であるシエラ。
この三人が証言した内容に相違があった場合、ノアの言い分が採用されるのが普通ではあるだろう。
「エディ様が来てくださって、ほんとに助かりました。……まぁ、ドアを開けて中の様子を把握された瞬間、逃げようとされましたけどね」
「いやいや、そりゃあの状況をみたら誰だって逃げたくなるだろ」
確かに、逆の立場だったら、シエラも確実に逃げ出したな、と思い、これ以上は責めるのはやめてあげよう、と思い、そうですね、と小さく同意の言葉を発した。
「それにしても、学園長室から生徒会室までのほんの少しの距離を一人で歩かせただけで、なんでこんなトラブルに巻き込まれてるんだよ」
「いやいや、好きで巻き込まれたわけじゃないですし。そもそも、元はリオ先生が困ってたのを助けただけで」
ぎゃいぎゃいとシエラとエディが言い合っていると、
「いっそ、シエラを一人で行動させれば、マーカス暗殺の件とかも片付くんじゃねーの?うっかり暗殺者が準備してるとこに遭遇するとか、マーカスが暗殺されそうになってるところに出くわすとか」
トーカスがポン、と翼を叩いて言う。
「確かに!」
「確かに!じゃないですよ!何納得してるんですか!」
良いこと言うじゃないか、とトーカスの案にエディが頷くので、シエラはふざけるな、と激怒する。
「そもそも、自分でトラブルを見つけて足を突っ込んでるわけじゃないんですよ!そんな都合よく行くわけないでしょうが!それに、暗殺者とか、万が一にも遭遇しちゃったら私だって危ないじゃないですか!」
「いやいや、そこはほら、俺も父上もいるわけだし、心配ないだろ」
「そうだな、トーカスかコーカスがいれば、暗殺者を仕留めることくらい、朝飯前だろう?あ、できれば生け捕りにしてくれると俺としては助かるんだが」
「おう、任せとけ!」
「任せとけ、じゃないのよ!」
三人でぎゃぁぎゃぁと騒いでいる時だった。
「おい」
急にコーカスが大きな声を出してきたので、三人はピタッと会話を止める。
「この娘が固まっておるが、その話は今しても大丈夫な内容だったのか?」
「え?」
その言葉に、彼の方を向いたシエラとエディは、顔面蒼白になる。
「あああああ、あの、わわわ、私、な、何も、何も聞いてませんので!」
同じく顔から血の気が引いた状態のリオが顔を引きつらせながら、コーカスを頭に乗せたままフルフルと小刻みに顔を横に振っていた。
「……リオ先生」
「はははは、はい!」
エディはふぅと息をついてリオを見る。
「料理は得意ですか?」
「……え?」
突然なんだ?と不思議そうな表情を浮かべるリオ。
「えぇっと……まぁ、はい。別に上手というわけではないですが、人並みにはできるかと思いますが」
その言葉に、よし、とエディは頷く。
「では、今度の討伐訓練に、引率として参加をお願いします」
「はい!?」
突然の内容に、リオは目を丸くする。
「今度の討伐訓練の引率を誰にするか悩んでたんですが、先生が来てくだされば、後は実技の教師を何名かと養護の先生がいれば何とかなるので、よろしくお願いします。シエラも、リオ先生が来て食事の用意をしてくれれば助かるだろ?」
エディに言われて、シエラはそれはまぁ、と頷いた。
(確かに、討伐訓練中、最悪、干し肉とか携帯食料で何とかしのぐつもりだったから、ありがたいのはありがたいんだけど)
チラリとリオを見ると、今にも泣きだしそうな表情を浮かべている。
そんなリオを見て、シエラは流石にちょっと可哀想だよなぁ、と思ったのだが。
「…………よろしくお願いします」
何かあったときに現地で調合できる人間がいるのはかなり安心だし助かるのも事実だよな、とシエラは思い、心の中で手を合わせてゴメンナサイ、と謝りながら、リオに頭を下げた。
「そ、そんな……!」
シエラにまでお願いされてしまい、絶望の表情を浮かべるリオ。
どうにかして断りたい、と思っていたが、エディの方を見ると、にっこりと笑っているが、その笑顔の裏に、さっきの話を聞いちゃったんだから、諦めてね?という圧を感じた彼女は、それ以上の言葉を出すことができず、がっくりと肩を落として、小さく頷いたのだった。
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